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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー
第282話 学校見学へ行こう (2)
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「おはようございます。私立桜泉学園高等部へようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
早朝から夏の暑い日差し降り注ぐこの日、真新しい制服を身に纏い学び舎の正門に訪れたのは一人の男子生徒。しかし彼にはこの学園の男子生徒には見られないある特徴があった。
ここ私立桜泉学園高等部は名門中の名門、その生徒の質の高さは全国でも指折りである。その原動力の一つと言われるのが、学園のシステムである男子生徒のスカウト。
全国から選りすぐりのイケメン男子をスカウトし、育成する。女子生徒はその男子に少しでもお近付きになりたい一心で自らの研鑽に励む。”馬車馬に人参システム”と揶揄されるものの、これまで残してきた実績がすべての批判を一笑に付す。
”文句があるなら実力を示せ”
私立桜泉学園に脈々と流れる実力主義の精神である。
では今目の前にいる高等部制服を身に着けた青年はどうだろう。
すらりとしていてそれでいでがっしりとした体形、ぴったりと体に合った制服、髪もきちんと整っている。一見何も問題はなさそうだ、ただ・・・。
おはようございます。本日も朝から入道雲が湧きたつ真夏日和、皆さんの朝の目覚めはいかがでしたか?
寝る前に薄めたスポーツドリンクを一杯いただくだけでも随分違うそうですよ、ぜひお試しください。そんな夏のとある日、暑い日差しに晒されてやってきたのは私立桜泉学園高等部正門前、現在警備員のお姉さんにがっつり尋問を受けている真っ最中の男、どうも、のっぺり佐々木です。
いやだからですね、本日のご用件ってさっきから言ってるじゃないですか、新入学の説明と写真撮影だって。おかしいな~、連絡来てません?マネジメント部の吉川さんから。事前に連絡入れることになってるんですけど。
チョッと確認取ってくれませんかね?その隙に侵入するんじゃないかって?そんな事しませんから~。信用できない?年に何回かそうやって入ろうとする人間がいる?マジですか?仕方がないな~。
俺はスマホを取り出し、吉川さんに連絡を入れる。
”お掛けになりました電話番号は、現在電源が入っていないか、電波の届かない場所にいる為、繋がりません。”
吉川さん使えね~、本当残念な大人だよ、吉川さん。
もう本当にどうしようかね。途方に暮れていると校舎側からやや年季の入った警備員のお姉さまがやって来た。
「どうしたの、何か問題でもあったかしら。」
「あ、警備主任。こちらの学生さんが本日の新入生説明会に呼ばれたと言っている為、少しお話を聞いておりました。しっかり高等部の制服迄用意している悪質なものでして、警察に連絡したモノかどうか指示を仰ぎたく連絡させていただきました。」
えっ、俺警察呼ばれちゃうの?どうするかな~、もう帰っちゃおうかな~。
こちらをじっと見る警備主任。暫くして何か思い出したかの様に口を開いた。
「あなた、もしかしてのっぺり佐々木君?」
お、俺の事ご存じで?いかにも私がお茶の間の箸休め、のっぺり佐々木ですが。
「え、うそ、いやだ、ちょっと菊池、ちゃんと訪問予定者名簿に目を通したの?ここよここ、しっかり名前の記載があるじゃない。佐久間中学の佐々木君、貴方彼の事知らないの?鬼ごっこ同好会って聞いた事ない?深夜番組の”いい旅、湯め気分♨”観てなかったの?うっそ、本当に気が付かなかったの、彼超有名人よ?
ごめんなさい、マネジメント部の吉川からは話を聞いています。本日のご訪問ありがとうございます。こちらの不手際でご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。」
警備主任の突然の掌《てのひら》返しに呆然とする若手警備員。そうか~、若手にはまだまだ知れ渡ってなかったか~。ヨウツーベ動画でも木村君や吉村何かは目立つけど、俺って露出頻度の割に影薄かったのかもな~。(涙目)
今まで調子に乗っていたという事実に打ちのめされる佐々木君。若手芸人が街で声を掛けられてにこやかにサインに応じようとしたら街頭アンケートだったって逸話は、こう言う気分だったんだね。
「では校舎はこの道をまっすぐ行っていただければすぐですので。」
にこやかに手を振る警備主任さん。貴女が”湯め気分”のファンでいてくれて本当に助かった。放送再開はいつですかって聞かれたけど、ごめんね、ディレクターの植松さん中央都テレビ辞められたから。いずれ違う形で温泉に行きますんで、そちらをご期待ください。
道の両側に広がる木漏れ日の差す森。木々の合間から見える時代を感じさせる建物。
スマホを見ると集合時間にはまだ大分早い。
うん、気分転換は必要だよね、ちょっと寄り道していこうかな?
俺は校舎までの道から逸れ、森の建物に向かうのでした。
早朝から夏の暑い日差し降り注ぐこの日、真新しい制服を身に纏い学び舎の正門に訪れたのは一人の男子生徒。しかし彼にはこの学園の男子生徒には見られないある特徴があった。
ここ私立桜泉学園高等部は名門中の名門、その生徒の質の高さは全国でも指折りである。その原動力の一つと言われるのが、学園のシステムである男子生徒のスカウト。
全国から選りすぐりのイケメン男子をスカウトし、育成する。女子生徒はその男子に少しでもお近付きになりたい一心で自らの研鑽に励む。”馬車馬に人参システム”と揶揄されるものの、これまで残してきた実績がすべての批判を一笑に付す。
”文句があるなら実力を示せ”
私立桜泉学園に脈々と流れる実力主義の精神である。
では今目の前にいる高等部制服を身に着けた青年はどうだろう。
すらりとしていてそれでいでがっしりとした体形、ぴったりと体に合った制服、髪もきちんと整っている。一見何も問題はなさそうだ、ただ・・・。
おはようございます。本日も朝から入道雲が湧きたつ真夏日和、皆さんの朝の目覚めはいかがでしたか?
寝る前に薄めたスポーツドリンクを一杯いただくだけでも随分違うそうですよ、ぜひお試しください。そんな夏のとある日、暑い日差しに晒されてやってきたのは私立桜泉学園高等部正門前、現在警備員のお姉さんにがっつり尋問を受けている真っ最中の男、どうも、のっぺり佐々木です。
いやだからですね、本日のご用件ってさっきから言ってるじゃないですか、新入学の説明と写真撮影だって。おかしいな~、連絡来てません?マネジメント部の吉川さんから。事前に連絡入れることになってるんですけど。
チョッと確認取ってくれませんかね?その隙に侵入するんじゃないかって?そんな事しませんから~。信用できない?年に何回かそうやって入ろうとする人間がいる?マジですか?仕方がないな~。
俺はスマホを取り出し、吉川さんに連絡を入れる。
”お掛けになりました電話番号は、現在電源が入っていないか、電波の届かない場所にいる為、繋がりません。”
吉川さん使えね~、本当残念な大人だよ、吉川さん。
もう本当にどうしようかね。途方に暮れていると校舎側からやや年季の入った警備員のお姉さまがやって来た。
「どうしたの、何か問題でもあったかしら。」
「あ、警備主任。こちらの学生さんが本日の新入生説明会に呼ばれたと言っている為、少しお話を聞いておりました。しっかり高等部の制服迄用意している悪質なものでして、警察に連絡したモノかどうか指示を仰ぎたく連絡させていただきました。」
えっ、俺警察呼ばれちゃうの?どうするかな~、もう帰っちゃおうかな~。
こちらをじっと見る警備主任。暫くして何か思い出したかの様に口を開いた。
「あなた、もしかしてのっぺり佐々木君?」
お、俺の事ご存じで?いかにも私がお茶の間の箸休め、のっぺり佐々木ですが。
「え、うそ、いやだ、ちょっと菊池、ちゃんと訪問予定者名簿に目を通したの?ここよここ、しっかり名前の記載があるじゃない。佐久間中学の佐々木君、貴方彼の事知らないの?鬼ごっこ同好会って聞いた事ない?深夜番組の”いい旅、湯め気分♨”観てなかったの?うっそ、本当に気が付かなかったの、彼超有名人よ?
ごめんなさい、マネジメント部の吉川からは話を聞いています。本日のご訪問ありがとうございます。こちらの不手際でご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。」
警備主任の突然の掌《てのひら》返しに呆然とする若手警備員。そうか~、若手にはまだまだ知れ渡ってなかったか~。ヨウツーベ動画でも木村君や吉村何かは目立つけど、俺って露出頻度の割に影薄かったのかもな~。(涙目)
今まで調子に乗っていたという事実に打ちのめされる佐々木君。若手芸人が街で声を掛けられてにこやかにサインに応じようとしたら街頭アンケートだったって逸話は、こう言う気分だったんだね。
「では校舎はこの道をまっすぐ行っていただければすぐですので。」
にこやかに手を振る警備主任さん。貴女が”湯め気分”のファンでいてくれて本当に助かった。放送再開はいつですかって聞かれたけど、ごめんね、ディレクターの植松さん中央都テレビ辞められたから。いずれ違う形で温泉に行きますんで、そちらをご期待ください。
道の両側に広がる木漏れ日の差す森。木々の合間から見える時代を感じさせる建物。
スマホを見ると集合時間にはまだ大分早い。
うん、気分転換は必要だよね、ちょっと寄り道していこうかな?
俺は校舎までの道から逸れ、森の建物に向かうのでした。
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