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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第275話 夏の合宿は女の戦場

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"眩しい季節はすぐ過ぎて~
恋する私はただ一人~
あなたの笑顔を追い掛けた
幼いあの日の子どもたち~♪"

カーラジオから聞こえる軽快なBGM。
楽しげに笑う部員たち男子女子
車内に広がるソワソワとした雰囲気。
今年もやって来ました、夏合宿。

体育祭はどうしたのかって?やったよ体育祭。鬼ごっこ同好会無双と思うじゃん?ところがどっこい、他の部活どころか佐久間中学生徒全体がめちゃくちゃ地力付けてるの、凄い迫力だったよ。
特に棒倒し、駄目だあれは。危険なんてもんじゃないわ、死人が出るわありゃ。激しい生徒同士のぶつかり合い、アメフトの選手ですか君たちは。プロテクターもないんだから、タックルで人間をボーリングのピンみたいに吹っ飛ばしたら駄目でしょうが。
まぁ、そこでも我らが鬼ごっこ同好会、目立ちまくってましたけどね。林の奴、一騎駆けして相手のポールにしがみついたと思ったら先端迄よじ登っちゃうし。
お前らは前世の香港映画か何かか?ワイヤーアクションでもしてるのか?って感じでした。
俺は何をしてたのか?保健係りですがなにか?
私と木村君、戦力が有り過ぎの為裏方(強制)でした。(涙目)
一躍ヒーローに成っている西山君が妬ましい。(嫉妬)
そんなこんなな体育祭でしたが、楽しく過ごさせて頂きました。


「「「よろしくお願いします。」」」

「佐久間中学校鬼ごっこ同好会・映像研究会の皆様、ようこそ御出で下さいました。"海の宿 潮風亭"、女将を務めさせていただいております、磯野かおりと申します。
長旅でお疲れでしょう、お部屋までご案内致します、ごゆっくりおくつろぎ下さい。」

「「「お世話になります。」」」

宿泊部屋に通され窓を開ける。
入り込む涼しい風と遠くから聞こえる波の音に、今年も帰って来たなと言う気持ちになる。
結局中学三年間、ずっと合宿場所はここになっちまったな~。

「まぁ、鬼ごっこ同好会にとって足腰の鍛練は必須だからな。ここの環境は下半身強化に最適な上に温泉による身体のケア、他にこれ以上の場所を探すのも難しいのではないか?」
確かにそうだね~。でもなんと言ってもここは、
「「食事が旨い」」
いや~、いい宿に出会えた事に乾杯だ。
木村君はこの後どうする?

「あぁ、俺は早速露天風呂に行って来る事にする。ここの露天風呂は俺にとっても思い出深い場所だからな、しっかり堪能させて貰うさ。」
木村君はぶれないね~。
じゃあ、俺は散歩にでも行って来るよ。みんなにはそう伝えておいてくれる?

「了解した、遅くならない様にしろよ。」
OK、それじゃまた後で。

俺は持参のお掃除セットをリュックに詰めて、一人宿を後にし「佐々木君どこ行くの?」あ、絵実。ちょっと散歩がてら挨拶回りにね。

「私も一緒して良いかな?」
ん?別に構わないけど、特に面白い事も無いよ?

「じゃ、早く行こう?」
お、おう。
何か道連れが出来たけど、まずは近場のお堂からかな。俺たちはのんびり目的地のお堂に向かうのでした。

お、全然綺麗じゃん。
以前はどことなく薄汚れた雰囲気のあった林のお堂は、周りの余計な灌木も取り除かれ、すっかり居心地の良い場所に変わっていた。
これも地元住人の信仰の賜物、俺は持参のお菓子をお供えし、感謝の祈りを捧げるのだった。

「今年も合宿にやって参りました。どうか見守りのほどよろしくお願いします。」
絵実と共に合宿の安全を祈願する。

"コーーーーーーン"
"ブワッ"

吹き抜ける突風、もはやお約束である。
さ、絵実、次に行くよ~。
「う、うん。ねぇ佐々木君、今のって一体・・・。」
ん?あぁ、何か祠とかお堂でお祈りすると良くあるんだよね、突風。
ま、あまり気にしなくても良いんじゃない?
次は岩場の祠ね~。

ねぇ、絵実ちゃん。ここってこんなに立派だったっけ?
「ううん、正直言ってもっとおんぼろだった様な。」

目の前の祠は以前より二回りほど大きなモノに改築されており、周辺も綺麗に整備されていた。
この一年で何があったし?
「あぁ、それは以前ここの祠に悪戯した連中がいてね、余りに悪質だったんでとっちめて弁償させたのさ。
今じゃ地元の信仰も回復して、定期的に清掃活動を行ってるからね、綺麗に使ってるって訳さ。」

あら海姫さん、お久し振りです。流石さすらいのアングラー、情報通でいらっしゃる。
「まぁ、この一件は私も一枚噛んでいるからね。最近は漁も順調だって言うんで、今年からは豊漁夏祭りを開く運びになってるよ。」
へ~、そりゃいいや、楽しみですね。
去年振りの海姫さんとの会話に花を咲かせていると、絵実が心配そうな顔をしてこちらの裾を引っ張って来た。

「ね、ねぇ、佐々木君?」
「おや、あんたはあの時のお嬢さんだね。」
”ヒッ”と驚きの声を上げる絵実、どうした、船虫でもいたか?

「お、そのキーホルダー、使ってくれているみたいだね。あの祠の神様は豊漁の神様でね、その派生で海の安全、旅の安全、無事の帰港、家族円満、縁結びって様々なご利益があるのさ。
そのキーホルダー、大事にするといいよ。
(小声で)あの少年は色んな変なもんを惹き付ける。悪いものじゃないがビックリする事も多いだろうさ。でもあんたがしっかりしてれば必ず隣に帰って来てくれる。大丈夫、自信を持って頑張りな♪」
何故かニヨニヨ笑う海姫さん。顔を赤くして俯く絵実。
うん、女性の会話には首を突っ込まない、おいちゃん前世で散々勉強した。

「それじゃ私はもう行くよ。少年、またいずれどこかで。」

「はい、海姫さんもお元気で。またいずれどこかの海で。」
さすらいのアングラーは颯爽と帰って行った。やっぱり格好いい。鍔広キャップにサングラス、収納豊富な釣り用ジャケット。前世の幼少期に憧れた釣りキチアニメに出て来た魚〇さんの様。

祠にもお供えをして両手を合わす。
「この度は合宿為この海でお世話になります。なにとぞ見守りのほどよろしくお願いいたします。」
絵実と共に合宿の安全を祈願。
”ブワッ”
やっぱり突風。絵実ちゃんごめん、もうこういうもんだと思って。
探求も大事だけどあるがままを受け入れる事も、上手に人生を生きる為には大事だと思います。
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