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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第271話 修学旅行は雅な香り (7)

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「おはよう、みっちゃんにくみちゃん、後みんなもおはよう。今日で修学旅行も終わりだけど、楽しい思い出を作ろうね。じゃあ行こうか。」

「「「うん、西山君。今日もよろしくね♪」」」

「「「・・・・」」」

「なぁ、佐々木。西山の奴、昨日からどうしちゃったんだ?めちゃくちゃイケメンムーヴかましてるんだけど。」
鈴木君おはよう。西山君のあれは一時的な熱病みたいなもんだと思うよ。多分後で思い出して床を転げ回るんじゃない?温かく見守るのが友情ってもんだよ、うん。

「そうか、それでお前はさっきから何をスマホで撮影してるんだ?」
いや、貴重な西山君の姿を記録に残そうかと。みっちゃんくみちゃん辺りが欲しがるんで高画質モードで撮影して直ぐにクラウドに上げてます。
後で編集して二人にプレゼントだね、喜ぶと思うよ。

「お、おう。西山の事も考えて編集してやれよ、また引き籠りになったらかわいそうだからな。」
了解、その辺は十分考慮する~。

"何か凄い心配、強く生きろ、西山。"
信頼感ゼロの佐々木君なのでありました。


「はい皆さん、ここが有名な清見水寺です。"清見水の舞台"って言葉を聞いた事無いかしら?国営放送でもたまに撮されたりするから知ってる人も多いと思うけど、浮かれ気分で舞台の欄干に上ったりしない様に。年に何人か落ちる事故が、実際に起きてますから。
特に佐々木君。冗談抜きで止めて下さいね。」
は、はい。佐藤先生目がマジです。おふざけ抜きの注意って事ですね。了解しました。(敬礼)

おぉ、ここがあの清見水の舞台。何か大きなベランダ?バルコニー?
駄目だ、俺の感性が死んでる。昨日の男娼喫茶で全て使い果たしたみたいだ。

絵実~、写真撮ってあげるからそこに立って~。みんなも入った入った~。
はい、チー「お前らそっちはどうだ、みつかったか?」
「いえ、人が多く完全に見失ったかと。」
「くそ、後少しだったのに。だから始めから誘引香を使えば良かったんだ、俺が言った事の方がどう考えても効率的だろうが。」
「しかし御屋形様から使用を禁止されている上、前回の使用も知られてしまってはどう仕様もないかと。」
「大体式神などただの道具に過ぎないだろうが、何故にそこまで気を使う!
俺にはさっぱり分からんぞ。」
「いえ、若様。
式神は術師の大事なパートナー、信頼関係を築かねば手痛いしっぺ返しを食らうは必定。ぜひご再考をお願い致します。」
「うるさい、俺のやり方に一々口を出すな!お前は今より俺の使いを外す、後は本邸の指示を仰げ。」
「そ、そんな、若様!」
「皆のもの、行くぞ。」
「「「はい!」」」
去って行くかつての主人、蔑みの目を向けるかつての仲間たち。
一人残された私は、舞台に膝を付き呆然とするのでした、まる。って何これ?
俺たちが楽しく記念撮影しようとしてたのに、目の前に割り込んで来ての突然の寸劇。
観光客向けのハプニングショーなの?それともどっきり?テレビカメラどこ?
え~っと、気を取り直して写真撮ろうか♪

「「「あの人放置でいいの?」」」
イヤイヤイヤ、無理でしょ、寸劇女優に絡めと?ハードル高過ぎですって。
って言うかあんたも動けよ。ここ観光地だから、人が一杯集まるから、さっきから凄い邪魔だから。

「あ、す、スミマセン。直ぐに何処かに消えますので・・・。」
「「「・・・・」」」

え~、分かりましたよ行きますよ。
で、お姉さんはどうしたんですか?

「いえ、その、少々動物の捜索をしてまして。黒い鳥なんですが。」
あ~、それっさっきからこっちを見て馬鹿にした様な顔をしてるあれ?

俺は舞台の欄干に掴まり"クェクェ"と笑っている鳥を指差す。
目を見開き口をポカーンと開ける女性。

おいお前、この人がお前の事を探してるらしいんだけど、どうする?
"クァクァ"

対等条件で途中解約アリなら契約してもいいと、なるほど。
で、お姉さんはどうしたいんですか?

「あ、いえ、私は、その、異存は無いです。」

だそうだけど?
"クァクァクェ"
俺が見届け人をやるの?仕方がないな~。お姉さん名前は?

「は、はい。橘一花いちかです。」

俺は目を瞑り、両の手を大きく開く。

"パンッ"

打ち鳴らされた柏手
目を開き歩み出す男

"カツンッ、カツンッ、カツンッ"

黒き鳥に近づき、優しく両手で抱き寄せる

"カツンッ、カツンッ、カツンッ"

「橘一花、汝はこの者との契約を望むか?」

低く、胸に響くその声音

「は、はい。」

彼の御方は優しげに胸にいだく黒鳥に語り掛ける

「そのほうはこの者との契約を望むか?」

"クァクァクェ"

「ここに契約は成立した。互いを思いやる良き関係が続かん事を願って。」
"リーーーーーーン"


喧騒が戻る。舞台は終わった。

ほい、橘一花さん。大事にしてあげなよ。生き物は最後まで面倒を見るのが飼い主の務めだからね。
みんなお待たせ~。
先生の所に行くよ~。

橘一花は去って行く青年の背中をいつまでも見詰めるのであった、その両の手に黒き鳥新たなパートナーを抱き締めて。
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