222 / 525
第二章 中二病には罹りません ー中学校ー
第220話 いい旅、湯め気分♨ (4)
しおりを挟む
「着いたぞ~、湯の華温泉郷!」
両腕を高らかと上げ、全身で喜びを表現する男、新米タレントのっぺり佐々木です。
いや~、楽しかったわ電車の旅。通路向かいのおばちゃんグループからの怒涛のレディーストークに木村君メロメロ?フラフラ?あれもこれもとめちゃくちゃ餌付けされてたな~。
のっぺり佐々木、おこぼれいただいてホクホクです。現地に着く前に袋一杯のおやつって、これどうすりゃいいのさ。取り敢えず駅のコインロッカーに収納、季節が晩秋でよかったわ、本当に。
「木村君木村君、これから温泉街に行くんだけどさ、温泉って言ったら温泉饅頭だよね?」
「そうだな、俺も温泉饅頭は大好きだ。」
「でもさ、どうせだったら地元で評判のお店に行きたいじゃん?っと言う訳で聞き込み調査開始です。
そこのお姉さんちょっといいですか~?」
走り出す俺、一度こんなのやってみたかったんだよね~♪
(side:植松咲子)
「はい、どうもこんばんわ。今夜から始まりました”いい旅、湯め気分”。
現地コーディネーターの”のっぺり佐々木”です。」
佐々木君、いい味出してますね~、本当に中学生なんでしょうか?
私、植松咲子は今、佐々木君木村君と共に温泉の旅のロケに来ております。
元々現場一筋できた自分ですが、自らカメラを構えてロケに来るなんて何時ぶりでしょう?
第二回逃走王決定戦本選、あれは本当に素晴らしい番組に仕上がりました。制作スタッフも本当によくやってくれました、今思っても感謝の言葉しか浮かびません。
編成局長の横やりを力技でねじ伏せ、何とか放送に漕ぎ着けた時の達成感は、これまでの人生で一番と言ってもいいものでした。
結果的に深夜の低予算番組に飛ばされましたが、これは自らの意志を貫いた結果。
他のスタッフを巻き混むことなく事を収められたのは、僥倖と言っていいでしょうね~。
全てをやり切った感はありますんで、今は今の境遇を楽しむ事といたしましょう。
低予算だからと言って手を抜くなんてのはテレビマンとしてあり得ませんし、今一番知名度があって左遷された自分の話でも聞いてくれそうな人物、私は迷うことなくスタジオS&Bにアポイントメントを取るのでした。
代表のマザー佐々木はとても大らかに対応してくれました。
予算が少ない事、深夜時間帯の番組であることを話し、それでも”Saki”の出演をお願いできないかと誠心誠意話をしました。
「そうさね~、”Saki”がウチの息子だってのは植松さんも知っているだろう?”Saki”の仕事に関しては基本息子に一任しているんだ。
植松さんが本気で番組をやりたいってんなら直接息子に話すといい。何かうまい事考えてくれると思うよ。」
”Saki”の出演料に関しては事前に調べていました。彼はこの国ではあまり知られていませんが、ユーロッパで物凄い評価を受けた新人モデル、その出演料は今回のような低予算番組では決して出せるようなものではありません。
直接の面会を許された私は早速彼のもとを訪ね、事情を説明し何とか出演できないか交渉を行いました。
「モデル”Saki”の出演は流石にこの予算でお引き受けする事は出来ません。下手な前例はお互いを不幸にするだけですからね。」
彼の言い分は至極真っ当な物でした。とても中学生とは思えない立派な態度に、私は自分の甘えた考えが恥ずかしくなる思いでした。
「ただ・・・」
彼のその後の提案はとても意外な物でした。「モデル”Saki”は出演できないが、無名の新人タレント”のっぺり佐々木”でしたら構いませんよ。」
屁理屈のようなその言い分に、思わず苦笑いをしてしまったほど。
知名度のあるモデル”Saki”ではなく無名の新人タレント”のっぺり佐々木”の起用。いくら深夜番組だからと言ってそれでいいのか?
しかし意外なほどあっさり返事が口から零れました。テレビマンの感が告げるんです、ここは乗っておくべきだと。
「スタッフさ~ん、美味しい温泉饅頭の情報ゲットです!早速向かいますよ~。
木村君、案内お願い。」
”スパーン”
「お前が先導するんじゃないのか!」
小気味よいトーク、切れのある突込み、とても初めての旅番組とは思えない流れるような展開。こんなのベテラン芸人でも中々出来ません。
私の感は間違ってはいなかった、内から溢れる笑いが止まらない!
これは面白い番組になるのですよ~♪
両腕を高らかと上げ、全身で喜びを表現する男、新米タレントのっぺり佐々木です。
いや~、楽しかったわ電車の旅。通路向かいのおばちゃんグループからの怒涛のレディーストークに木村君メロメロ?フラフラ?あれもこれもとめちゃくちゃ餌付けされてたな~。
のっぺり佐々木、おこぼれいただいてホクホクです。現地に着く前に袋一杯のおやつって、これどうすりゃいいのさ。取り敢えず駅のコインロッカーに収納、季節が晩秋でよかったわ、本当に。
「木村君木村君、これから温泉街に行くんだけどさ、温泉って言ったら温泉饅頭だよね?」
「そうだな、俺も温泉饅頭は大好きだ。」
「でもさ、どうせだったら地元で評判のお店に行きたいじゃん?っと言う訳で聞き込み調査開始です。
そこのお姉さんちょっといいですか~?」
走り出す俺、一度こんなのやってみたかったんだよね~♪
(side:植松咲子)
「はい、どうもこんばんわ。今夜から始まりました”いい旅、湯め気分”。
現地コーディネーターの”のっぺり佐々木”です。」
佐々木君、いい味出してますね~、本当に中学生なんでしょうか?
私、植松咲子は今、佐々木君木村君と共に温泉の旅のロケに来ております。
元々現場一筋できた自分ですが、自らカメラを構えてロケに来るなんて何時ぶりでしょう?
第二回逃走王決定戦本選、あれは本当に素晴らしい番組に仕上がりました。制作スタッフも本当によくやってくれました、今思っても感謝の言葉しか浮かびません。
編成局長の横やりを力技でねじ伏せ、何とか放送に漕ぎ着けた時の達成感は、これまでの人生で一番と言ってもいいものでした。
結果的に深夜の低予算番組に飛ばされましたが、これは自らの意志を貫いた結果。
他のスタッフを巻き混むことなく事を収められたのは、僥倖と言っていいでしょうね~。
全てをやり切った感はありますんで、今は今の境遇を楽しむ事といたしましょう。
低予算だからと言って手を抜くなんてのはテレビマンとしてあり得ませんし、今一番知名度があって左遷された自分の話でも聞いてくれそうな人物、私は迷うことなくスタジオS&Bにアポイントメントを取るのでした。
代表のマザー佐々木はとても大らかに対応してくれました。
予算が少ない事、深夜時間帯の番組であることを話し、それでも”Saki”の出演をお願いできないかと誠心誠意話をしました。
「そうさね~、”Saki”がウチの息子だってのは植松さんも知っているだろう?”Saki”の仕事に関しては基本息子に一任しているんだ。
植松さんが本気で番組をやりたいってんなら直接息子に話すといい。何かうまい事考えてくれると思うよ。」
”Saki”の出演料に関しては事前に調べていました。彼はこの国ではあまり知られていませんが、ユーロッパで物凄い評価を受けた新人モデル、その出演料は今回のような低予算番組では決して出せるようなものではありません。
直接の面会を許された私は早速彼のもとを訪ね、事情を説明し何とか出演できないか交渉を行いました。
「モデル”Saki”の出演は流石にこの予算でお引き受けする事は出来ません。下手な前例はお互いを不幸にするだけですからね。」
彼の言い分は至極真っ当な物でした。とても中学生とは思えない立派な態度に、私は自分の甘えた考えが恥ずかしくなる思いでした。
「ただ・・・」
彼のその後の提案はとても意外な物でした。「モデル”Saki”は出演できないが、無名の新人タレント”のっぺり佐々木”でしたら構いませんよ。」
屁理屈のようなその言い分に、思わず苦笑いをしてしまったほど。
知名度のあるモデル”Saki”ではなく無名の新人タレント”のっぺり佐々木”の起用。いくら深夜番組だからと言ってそれでいいのか?
しかし意外なほどあっさり返事が口から零れました。テレビマンの感が告げるんです、ここは乗っておくべきだと。
「スタッフさ~ん、美味しい温泉饅頭の情報ゲットです!早速向かいますよ~。
木村君、案内お願い。」
”スパーン”
「お前が先導するんじゃないのか!」
小気味よいトーク、切れのある突込み、とても初めての旅番組とは思えない流れるような展開。こんなのベテラン芸人でも中々出来ません。
私の感は間違ってはいなかった、内から溢れる笑いが止まらない!
これは面白い番組になるのですよ~♪
1
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる