218 / 525
第二章 中二病には罹りません ー中学校ー
第216話 第二回逃走王決定戦・本選 (2)
しおりを挟む
”ビーーーーーーーーーーーッ”
「「タイムア~~~~~~ップ、終了で~~~す!」」
”ドサッ、バタバタ、グシャ”
「「酸素だ、早く酸素もってこー-い!!」」
「救護班急げ!表彰式?お前ら馬鹿か、この状況で出来る訳無いだろうが!
そんなもん後だ後、今は全力で救護に当たれ!!」
死屍累々、まさにその言葉がふさわしい。
それは意地か、プライドか、己の持てる力をすべて出し切り、それでも足りないとばかりに魂までをも糧にして戦った戦士たち。
ある者は過呼吸で痙攣し、ある者は白目をむいて倒れているそんな光景。
だけど彼らは知っている。
ここは地獄なんかではない、己の全てを掛ける事の出来る楽園なんだと。
「あはははは、僕生まれて初めてだよ、全力を出してなお届かない事があるだなんて。膝が震えて立てないや、この世界舐めてたのかもしれない。」
美しくも麗しい一人の青年の呟きは、喧騒に紛れ誰の耳にも届かない。
第二回逃走王決定戦本選
一般参加選手八十名、ゲスト参加者二十名。
残り三十分時点での生き残り
一般参加選手二十名、ゲスト参加者六名。
最終生き残り
一般参加選手一名、ゲスト参加者ゼロ名。
逃走王称号獲得者
スタジオS&B所属ファッションモデル、”Saki”。
「Sakiさん、大丈夫ですか?気をしっかり持ってください。酸素スプレーを当ててますんで、ゆっくり吸って吐いてを繰り返して。私たちは他に回りますので、何本か置いて行きますから自由に使ってください。
おいそっち担架早く、白目向いてるぞ、気を付けて搬送しろ。」
マジキツイ、返事が一切出来ない、指動かすのがやっと、さっきから震えが止まらない。
オリンピック選手の本気、ヤバいなんてもんじゃないって、前回の本選で三名も残したのが相当頭に来てたんじゃない?鬼だぞアレ。
アハハハハ、でもめっちゃくちゃ楽しかった。俺もう何も残ってねえや、死ぬのか俺?でも満足だわ、笑って逝ける。
ありがとうございました!
"グシャ"
「おい、誰か担架持って来て!
Sakiさんが白目剥いて気絶した!
救急搬送は今いっぱいで無理だから、とりあえず救護室に運んでくれ!」
ラスト三十分の惨劇、後にそう語られるテレビ史上稀に見る攻防。
出場選手も、鬼も、性別など関係なくただプライドを掛けて、己の出せる全てを出し尽くして戦いを繰り広げた。
結果、全ての選手と鬼が試合終了と共に倒れ込むという大惨事に発展してしまったのである。
彼の"hiroshi"様も例外ではなく、いつもの笑顔は力をなくし、酸素スプレー缶を口に当ててへたり込んでいたと言う。
佐久間中学鬼ごっこ同好会の面々は出場した全員が緊急入院。
逃走王の称号を獲得したSakiであったが、あまりの体調の悪さに表彰式は後日行うと言う事となった。
ここに男たちの熱い大会が幕を閉じた。
(side:植松咲子)
「はい編集室です。編成局長、はい、どう言ったご用件でしょうか?植松ディレクターですか?少々お待ちください。」
私は無言でスマホを指さす。電話口の彼女も無言で頷き返す。
「お待たせいたしました、編成局長。只今植松は電話対応中でして、はい、はい、後ほど局長室にですね?はい、はい、ではその様にお伝えしておきます。はい、お疲れ様でした。」
私は彼女とサムズアップを交わし合った。
現在ここは異常な熱気に包まれた鉄火場、あの嵐の様な第二回逃走王決定戦収録からずっとである。
私たちは目撃した、男たちの熱き戦いを。
私たちは見てしまった、あの燃え滾る目を。
知ってしまった、感じてしまった、ならばもう止まれない、止められない。
あの感動と興奮を最高の形で映像に残す、これは使命!
ここで奮い立たない奴は女じゃない!
編成局長の言いたいことは聞かなくても分かる、どうせ大手の芸能事務所やらのタレントを中心とした編集をしろって言うんだろ?
ぶっ殺すぞてめぇ。
あの時あの現場にいながら何も感じれない感性の死んだ奴がテレビマンやってんじゃねぇ!
「良いですか皆さん、あの戦いを無駄にすることは許されませんですよ!
特に本選終了前の三十分、あそこはフルタイムで行きます。本当は各カメラの映像を全部見せたい所ですがそうは行きません、このカット割りは映像の成否を分ける最重要作業です、心して取り組んでください。
彼らが命を懸けたんです、私たちも命懸けで答えるですよ!!」
「「「はい!!」」」
全員目の下に深い隈を作り、エナジードリンクの空き缶に囲まれながらそれでも必死に作業する。すべては彼らに報いるために。
壁際の大型モニターには一枚の映像が映し出されている。
それは試合終了と同時に崩れ落ちようとする残存者の姿。
だが彼はそれでも最後の力を振り絞り、右の拳を突き上げる。
”俺はここにいる!”
彼の魂の叫びは、見る者の心を熱く震わせる。
その者の名は”逃走王 Saki”
人々よ、心に刻め、彼こそが頂点だ。
「「タイムア~~~~~~ップ、終了で~~~す!」」
”ドサッ、バタバタ、グシャ”
「「酸素だ、早く酸素もってこー-い!!」」
「救護班急げ!表彰式?お前ら馬鹿か、この状況で出来る訳無いだろうが!
そんなもん後だ後、今は全力で救護に当たれ!!」
死屍累々、まさにその言葉がふさわしい。
それは意地か、プライドか、己の持てる力をすべて出し切り、それでも足りないとばかりに魂までをも糧にして戦った戦士たち。
ある者は過呼吸で痙攣し、ある者は白目をむいて倒れているそんな光景。
だけど彼らは知っている。
ここは地獄なんかではない、己の全てを掛ける事の出来る楽園なんだと。
「あはははは、僕生まれて初めてだよ、全力を出してなお届かない事があるだなんて。膝が震えて立てないや、この世界舐めてたのかもしれない。」
美しくも麗しい一人の青年の呟きは、喧騒に紛れ誰の耳にも届かない。
第二回逃走王決定戦本選
一般参加選手八十名、ゲスト参加者二十名。
残り三十分時点での生き残り
一般参加選手二十名、ゲスト参加者六名。
最終生き残り
一般参加選手一名、ゲスト参加者ゼロ名。
逃走王称号獲得者
スタジオS&B所属ファッションモデル、”Saki”。
「Sakiさん、大丈夫ですか?気をしっかり持ってください。酸素スプレーを当ててますんで、ゆっくり吸って吐いてを繰り返して。私たちは他に回りますので、何本か置いて行きますから自由に使ってください。
おいそっち担架早く、白目向いてるぞ、気を付けて搬送しろ。」
マジキツイ、返事が一切出来ない、指動かすのがやっと、さっきから震えが止まらない。
オリンピック選手の本気、ヤバいなんてもんじゃないって、前回の本選で三名も残したのが相当頭に来てたんじゃない?鬼だぞアレ。
アハハハハ、でもめっちゃくちゃ楽しかった。俺もう何も残ってねえや、死ぬのか俺?でも満足だわ、笑って逝ける。
ありがとうございました!
"グシャ"
「おい、誰か担架持って来て!
Sakiさんが白目剥いて気絶した!
救急搬送は今いっぱいで無理だから、とりあえず救護室に運んでくれ!」
ラスト三十分の惨劇、後にそう語られるテレビ史上稀に見る攻防。
出場選手も、鬼も、性別など関係なくただプライドを掛けて、己の出せる全てを出し尽くして戦いを繰り広げた。
結果、全ての選手と鬼が試合終了と共に倒れ込むという大惨事に発展してしまったのである。
彼の"hiroshi"様も例外ではなく、いつもの笑顔は力をなくし、酸素スプレー缶を口に当ててへたり込んでいたと言う。
佐久間中学鬼ごっこ同好会の面々は出場した全員が緊急入院。
逃走王の称号を獲得したSakiであったが、あまりの体調の悪さに表彰式は後日行うと言う事となった。
ここに男たちの熱い大会が幕を閉じた。
(side:植松咲子)
「はい編集室です。編成局長、はい、どう言ったご用件でしょうか?植松ディレクターですか?少々お待ちください。」
私は無言でスマホを指さす。電話口の彼女も無言で頷き返す。
「お待たせいたしました、編成局長。只今植松は電話対応中でして、はい、はい、後ほど局長室にですね?はい、はい、ではその様にお伝えしておきます。はい、お疲れ様でした。」
私は彼女とサムズアップを交わし合った。
現在ここは異常な熱気に包まれた鉄火場、あの嵐の様な第二回逃走王決定戦収録からずっとである。
私たちは目撃した、男たちの熱き戦いを。
私たちは見てしまった、あの燃え滾る目を。
知ってしまった、感じてしまった、ならばもう止まれない、止められない。
あの感動と興奮を最高の形で映像に残す、これは使命!
ここで奮い立たない奴は女じゃない!
編成局長の言いたいことは聞かなくても分かる、どうせ大手の芸能事務所やらのタレントを中心とした編集をしろって言うんだろ?
ぶっ殺すぞてめぇ。
あの時あの現場にいながら何も感じれない感性の死んだ奴がテレビマンやってんじゃねぇ!
「良いですか皆さん、あの戦いを無駄にすることは許されませんですよ!
特に本選終了前の三十分、あそこはフルタイムで行きます。本当は各カメラの映像を全部見せたい所ですがそうは行きません、このカット割りは映像の成否を分ける最重要作業です、心して取り組んでください。
彼らが命を懸けたんです、私たちも命懸けで答えるですよ!!」
「「「はい!!」」」
全員目の下に深い隈を作り、エナジードリンクの空き缶に囲まれながらそれでも必死に作業する。すべては彼らに報いるために。
壁際の大型モニターには一枚の映像が映し出されている。
それは試合終了と同時に崩れ落ちようとする残存者の姿。
だが彼はそれでも最後の力を振り絞り、右の拳を突き上げる。
”俺はここにいる!”
彼の魂の叫びは、見る者の心を熱く震わせる。
その者の名は”逃走王 Saki”
人々よ、心に刻め、彼こそが頂点だ。
1
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
男女比:1:450のおかしな世界で陽キャになることを夢見る
卯ノ花
恋愛
妙なことから男女比がおかしな世界に転生した主人公が、元いた世界でやりたかったことをやるお話。
〔お知らせ〕
※この作品は、毎日更新です。
※1 〜 3話まで初回投稿。次回から7時10分から更新
※お気に入り登録してくれたら励みになりますのでよろしくお願いします。
ただいま作成中
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる