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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第196話 今度は海ですか・・・ (8)

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あはははは、マジそんなバカ殿って本当に実在したの?
麻呂が天下を掴むのじゃ~とか言って馬が怖いって、阿保なの、馬鹿なの?
ブフォ、もうやめてお腹痛い、そのモノマネヤメテ~、あはははは。

お猿さんに導かれやって来た山の広場。ここってお猿さんたちの集会場だったようです。
次々と運ばれる果物や野菜。魚をはじめとした魚介類。
目の前には山と積んだ薪、おもむろに取り出したるは何処から拾って来たのか、使い捨てライター。
それを杉の枯れ枝に近づけて”シュッ”
燃え広がる炎、宴会の始まりです。

”ウキウキキッ“
いやそれは人間がおかしいって、約束たがえたのそのお殿様じゃん。なんでこっちが責められなくちゃならんのよ、意味解らん。

”ウキウキキッキキッ”
へ~、やるじゃん。それでこのお墓を守るためにこの地に落ち着いたんだ。凄いドラマチック、いよ、色男。

”ウキキ~ッ”
何謙遜してるんだよ、照れるなよ~。

さっきから何言ってるのかって?お話ししてるんですが?
猿の言葉が分かるのか?分かる訳無いじゃないですか、”考えるな、感じろ!”ですよ。さっきお猿さんから貰ったこの飲み物を飲んでからなんとなく分かる気がするんですよね~。それになんかフワフワしてとても気分がいい、旨いですよねこれ。

ブフォ、だからそのモノマネは止めてって。
”キキッキ~ッ、キキッ。”(キリッ)
あはははは、腹痛い腹痛い、死んじゃう死んじゃう。

しかしまぁ、昔のこととは言えそりゃ報われないっての。
うっし、気分を一新するためにおっちゃん一発芸やっちゃいます。
ちょっと待ってて~。

ごそごそとリュックを漁る俺。あったあった、持って来ておいて良かったわ~。
パチリと開いてふんふんふ~ん、よし完璧。
”パチンッ”

瞬間、空気が変わった

集う者たちの喧騒が
森のざわめきが
打ち付ける波の音も
人々の出すあらゆる音も

島から一切の音が消えた

”カツンッ、カツンッ、カツンッ、カツンッ”

どこからか響く靴の

”虐げられし者よ”

身体の芯へと響く低くそれでいて美しい声音こわね

”騙され踏みにじられし者どもよ
その想い我が受け止めよう
苦しむことはない
嘆くこともない
今そなた等の声は我に届いたのだから
道は開かれた
次なる世界がお前たちを待っている
逝くがよい新たなる世界へ

汝らを縛る全てをここに解放しよう
我が名は”Noir”、汝らを開放するものなり”

突き上げられた右腕、その先には天空に現れた巨大な六枚の翼
上空より舞い落ちる黒き羽根フェザー

”ぽわっ、ぽわっ”
地面から現れた幾千の光の玉が
ゆっくりと空へ上っていく

”ありがとうNoir。この猿田彦、其方そなたのお陰で再びこの姿を取り戻す事が出来た。礼を言う。”
古い戦装束を着た壮年の男性が、こちらを見詰め話し掛ける。

「礼などいらん、お前には待っている者がいるのだろう。呼んでいるぞ。」

八重の衣をまとった美しい女性が、こちらに深々と頭を下げていた。

”猿田彦様、お会いしとうございました。”
“千代姫様。あなた様をお守り出来なかったこの猿田彦を、お許しいただけるのですか。”
頭かぶりを振る女性、その目に涙を溜め猿田彦を見詰める。

”違うのです、猿田彦様。すべては父の謀略、貴方様は何も悪くない。許しを請うべきは私の方なのです。”
”千代姫様”
”猿田彦様”

「いつまでここにいるつもりだ。見てみろ、お前の仲間が呼んでるではないか。」

”お屋形様~、姫様~”
上空から掛かる声、そのすべてが明るく希望に満ちている。

”千代姫様、往きましょう、皆が待っている。Noir、これを受け取って欲しい。今宵の宴席はことのほか楽しかったぞ、さらばだ。”

上空へと昇る二筋の光、そこに群がるように多くの光が集まり幻想的な光景を作り出す。

”パリーーーーーン”

何かが割れたような音か上空に響く。
光群はなおも高度を上げ、ゆっくりとその姿を消していった。

”クイクイッ“
残されたのは多くの猿とモデルのメイクをした一人の男。

「飲むぞ~、喰うぞ~!」
”キキキーーーーーッ“

うたげの夜は終わらない。


(side:??)

「子忘れ島からの報告はまだ届かないのですか?」
教主は思い通りにならない現状に、苛立ちを覚えていた。

”申し訳ありません。電話、無線、念話等あらゆる手段での通信が途絶えております。
また周辺支部とも連絡が着きません。
島の公共施設への通信は確認出来ており、島および周辺地域が崩壊しているとは考えられません。”

「ではどうなっていると言うのです、調査隊の派遣は行っているのでしょうね。」

”それが、全ての部隊との連絡が一切取れません。また各主要支部及び末端支部に至るまで同様に返答がありません。”

「では他に交流がある組織に連絡しなさい、この業界は持ちつ持たれつでしょうが!」

”それが、霊能及び異能組織で今回の件に係わりのある所は全てが音信不通、警察政治家においても同様です。”

「一体何が起きていると言うのです、誰か説明しなさい!」
テーブルのワイングラスを床に叩き付け怒りを顕わにする教主。
その顔は普段見る事の出来ない酷く歪んだものであった。

「なんだ、そんな顔も出来るんだ。」

突然のプレッシャーがその場にいたものの動きを止めた。部屋の暗がりから現れたのは釣り人の格好をした一人の女性。しかし纏う雰囲気は呼吸すらままならないほどの圧倒的高位存在のソレであった。

「なぁ、この悪戯を仕掛けたのってあんただろ。やった事には落とし前を付けないとな。あたしを相手にしたんだ、それくらい覚悟していたって事だよな?」

手に持つ五寸釘をぶらぶら振りながら語り掛ける女性、それは今回の作戦で使われた呪具。ではこの者は・・・。

「あぁ、名乗ってなかったな。はじめまして”海姫”だ。」

海姫、漁業を司る神の一柱、特殊多重結界のエネルギーとして利用するために厳重な封印を施したはず。

「すこ~しばかり留守にしてたら厄介なことしやがって、お陰でこんなに弱っちまったじゃないか。本当に人間は強欲だね~。」

どうしたらいい、どうしたら退しりぞけられる。ここには御奉霊山の加護が幾重にも掛かっているはず、なぜこんなにも容易く侵入できる!

「私がここにいるのが不思議かい?答えは簡単、あんたらに授けられていた御奉霊山の加護、全部取り上げられちまってるよ?
アンタらも馬鹿だね~。あの少年、大神のお気に入りだってのに。めちゃくちゃ怒って乗り込んで来ようとしてたんだよ?
あたしが止めなきゃこの国終わってたんだからね。」

一気に青ざめる一同、この国が終わる?なぜ、どうして?

「先を越されてしまったみたいですね。」

ふいに掛けられる別の声。メイド服を着たナニカ…怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い、なんなんだあれは、恐怖が服を纏っているとしか思えないナニカ。

「おや?あんた、もしかして少年の関係者?」

「お初にお目に掛かります。”Saki”様のメイドをしております、ノエルと申します。そちらの方々にも分かり易く申せば、別名”ユーロッパの悪夢”で通るかと。」

”ユーロッパの悪夢”、ユーロッパ最恐の特級怪異、ユーロッパ王宮ベッキンガム宮殿に厳重封印されているはずじゃ・・・

「あぁ、それじゃ今回あたしが回る前にいろんな所を潰して回ってたのってあんたかい。」

「はい、他にも鈴の御方、黒丸様がお暴れに。こちらも分かり易く言えば"明翠亭"、"鎮魂の祠"で通じるかと。」

「あはははは、なんだいそれ。この国よく滅びなかったね。どれもヤバい連中ばかりじゃないか。」

「主様がそれをお望みでないので。ん?これは…。」

天井からユラユラと舞い落ちる黒い羽根
何枚も何枚も
まるで降り頻る雪の様に

"パリーーーーーン"

あ゛ーーーーー!!
力が、私の力が、抜ける、抜けていく、私の、私の・・・・。

「あらら、何かシワシワのちっちゃい婆さんになっちまった。ブツブツ何か言ってるけど、完全に壊れちまってるね。って言うかここの連中、全員婆さんかい?幾らなんでも盛り過ぎだろうが、反動で息するのがやっとじゃないか。」

「どうやら主様が何か行った様にございますね。では、私はここで失礼させて頂きます。」

優雅にカーテシーを決めるメイドは、そのまま闇の中に溶けて行った。

「それじゃ、あたしも帰るかな。さようなら、お婆ちゃん。」

後に残されたのは、妄執に心を奪われたかつての支配者達だけであった。
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