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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第186話 夏だ、合宿だ、走れ走れ! (4) (side : 野口絵実)

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「さて、次は俺たちの番かな。」

薄暗く光る水面みなも
聴こえるは打ち寄せる波の音
満天の星空のもと夜の砂浜に佇む男女二人

「さ、行こうか。」

振り向く彼
差し出された右手

「うん。」

頷き握り返す左手

「バカ、こういう時の握り方はこうだろ?」

いたずらな笑みを浮かべる彼
絡め合う指と指

頬を朱に染めながら歩き出す若者たち
二人の青春は終わらない


「みっちゃん、シャンプー取って~。」
「くみちゃんパース。」
「ナイスパス、サンクス。」

「二人ともお風呂場で遊ばないの!」

「「は~い、ごめんなさ~い。」」

夏の合宿も残すところあと二日、最終日は帰るだけだから実質一日、今年も楽しかったな~。

”ジャバ~”

「マネージャーチーム何のんびりしてるの?ゴールデンタイムはいつまでも待ってはくれないのよ?」

「「あ、三峯先輩、お疲れ様です。」」

うゎ~、三峯先輩もいいスタイル。映研の部長は代々スタイルが良くないと成れないのかしら。

「先輩、凄くスタイル良いんですけど、何かコツってあるんですか?」

「えっ、私?これと言ってだけど、姿勢にだけは気を付けてるわね。編集作業とか気が付くと前のめりになりがちだし、普段から背筋を伸ばすようにしているくらいかしら?
それよりもくみちゃんの方がおっぱい大きいじゃないの、何を食べればそんなに育つのよ?」

「「そうですよ、くみちゃん先輩教えてくださいよ!!」」

「わ、私は特にその、母も大きいし、遺伝?」

「「っく、授かりし者ブルジョワめ!」」

「はいはい、騒がない。ウチの一年バカチャレンジしてバカやって西城講師看守長がお怒りなのよ?露天風呂桃源郷が待ってるんだから静か慎重にしなさいね。」

「「は~い。」」

”ガラガラ”
”ポチャン”

「「「ふ~~~~~。」」」

露天風呂最高、なんで大きなお風呂ってだけなのにこんなにリラックスするんだろう。思わず息が漏れるわ~。

「ねえねえ絵実ちゃん、その後佐々木君とはどうなってるのよ?」
”ブフッ”

みっちゃん行き成り何をぶち込んでくるの!?

「やっぱり合宿って言ったら恋バナじゃない?私とくみちゃんは周囲公認だけど、絵実ちゃんは現在攻略中?なんでしょ。進行状況が気になるじゃない!」

「「えっ、先輩方、もしかして彼氏持ちですか?そこの所詳しく!」」

「あれ、一年生は知らなかったんだっけ?この合宿に参加している二年三年女子は半分くらい彼氏持ちだよ。
いない子も絵実みたいに攻略中?かなりの確率でゲット出来るんじゃない。」

「「なんですって~!!どういう事ですかそれって!」」

「あ~、気付いてなかったか。ウチの佐々木部長、なぜかそういう方面強いのよ。積極的に協力してくれることは無いんだけど、全体を上手い事コントロールするのよね~。
あなた達も西城講師の講習受けたでしょ、あれでかなり男子のハードルが下がってるはずよ?
おそらく明日最大のチャンスがやって来るから、焦らないで待ってなさい。
結構怖いけどその見返りは大きいから。」

”ゴクン”
「「了解しました先輩!!」」

”やっほ~、”英雄っちに西山君。ついに西山君も露天風呂デビュー?”

静まり返る喧噪
男子の初露天風呂初体験

”う、うん。せっかく温泉に来たんだし、木村君がぜひ入った方がいいって言うから。”
”うむ、露天風呂は最高だぞ。西山もその解放感を味わうといい。”

男子が三人、開放感!?
一気に増える壁耳女子。コワインデスケド。

”なぁ、佐々木。今年もやるのか、肝試し。”
”当然、あれはやらないと駄目でしょう。合宿の締めは肝試しですから♪”
”林のお堂、あれだけは止めろ。本気で止めろ。”
”え~、どうして~。近いし迷う事も無いし、安全だよ?”
”佐々木君本当にヤメテ、僕去年めちゃくちゃ怖かったんだから。”
”う、西山君まで。そこまで言うなら諦めます。ワンワンに会えると思ったのに、ぐすん。”

周りにはほっと肩を落とすものが数名、皆去年の肝試し経験者。
私は目を瞑っていたから分らないんだけど、いったい何があったんだろう?

”所で二人とも進路って決めた?こないだ高校の説明会があったじゃん?”
”僕はまだはっきりとは。木村君はどうなの?”
”あぁ、俺は私立桜泉学園高等部に行こうと思っている。”
”え~、あそこに行くの?どうしてまた。”
”うむ、将来的に大学進学に有利な事もあるが、各企業とのコネも大きい。ウチの親が会社をやってるのは知ってるだろう?その関係でパーティーに出席する事もあるのだが、その際の受けもあそこの出身と言うだけでかなり違う様でな。”
”あ~、木村君の所はそうかも。俺はどうしようかな~、モデルの件もあるし、私立しかないんだけど。三年の夏までじっくり考えてみるかな~”

そうか、高校に入ったらもう一緒にいれなくなるかも知れないんだ。
なんだろう、急に胸が締め付けられるような。

先ほどまでの楽しさが嘘の様に、絵実は言い様のない寂しさを感じるのであった。
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