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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー
第172話 拉致 (3)
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「タンッタンッタンッ、
はい、そこでアピールして。
自由にしてくれていいから、イメージ大事にしてちょうだい。
急遽決まった仕事にしてはしっかり出来てるわよ!
明日の本番までにもっとイメージ固めて来てちょうだい!」
う~ん、クリスさんの指摘難しい。
今回のテーマ"解放と出会い"。
冬の抑圧から解放され、春夏と一斉に花開く若者のエネルギー的なものをイメージしてみたんだけど、何かしっくり来ない。
クリスさん的には良いみたいなんだけど何かが引っ掛かってるんだよな~。
そうそう、クリスさんと言えば大崎先生に怒られずに済みました♪
あの二人、ずっとくっちゃべっていたみたい。
俺が戻った時も"どうした、トイレの場所が分からなかったのか?"だって。
どれだけ話が盛り上がってたんだか。
こっちはラッキーでしたが。
「あの、"Saki"様。先ほどから何かお悩みの様に見受けられますが、どうかなさいましたでしょうか。」
いえね、今回のテーマが"解放と出会い"って言うやつ何だけど、何かイメージがね。
「解放でございますか。ココは王宮と言う場所柄多くの想いが囚われているところ。
その想いが解放され、新たな世界へと旅立つのなら、新しい出会いがあるのなら。
それはどんなにか幸せな事なのでしょう。」
想いの解放…、囚われた人々…、女性が…、男性が…、社会に…、価値観に…。
俺は周囲を見渡す。
豪華な装飾、歴史を感じさせる調度品。
この国の象徴、その歴史の中にはどれ程の"想い"が込められているのだろう。
うし、何とかなりそう。
ノエルさんありがとう。
明日の本番もよろしくお願いしますね。
「お役に立ちましたなら幸いでございます。明日も宜しくお願いします。」
"パンパン"
気合い入った、いっちょやったりますか。
(side : クリスティア)
今回ばかりは焦ったわ~。
主要モデルの集団食中毒って、本当何やってくれてんのよ。
予備に待機してもらっていたモデルたちじゃ人数足りないじゃない、着まわしするのも時間が掛かるのよ!?しかも現役男性モデルは誰もがスケジュールかつかつだってのに。
そこで思い出したのが友人のモデル、大崎啓子の愛弟子の話。確か一時期大騒ぎになってた新人モデルよね。
費用は全部持つからと拝み倒して来てもらったんだけど。
パッと見は地味、とてもモデルとは見えない容姿。でも動きは良いわね、肌もきれいだし、これなら行けるんじゃないかしら。
「啓子、あの子、なかなか良いわね。ショーに対する捉え方が良いわ。
パッと見地味だけど、そんなものココのスタッフに掛かればどうとでもなるし。」
「あぁ、クリスあの子にメイクスタッフは要らないわ。彼、"魔女"の息子なの。」
魔女。この業界にいれば一度は聞くことになる伝説の人物。そのメイクは悪魔のテクニック、全てを自在に作り替える。
「これは警告よ。彼の控え室は彼だけにしといた方が良いわ。スタッフを潰したくないでしょ。
あとこの"Noir"の出番、最後の取りにしてくれない?その前が私でいいから。」
まぁ、彼は男性だし、それは構わないけど。
「なら決まり、ショーを成功させましょう。」
啓子の言葉は気になるけど本番は明日。私はできる限りの準備に奔走するのだった。
翌日の本番、会場は多くの観客と報道陣で賑わっていた。
げ、あそこの紳士と淑女、お忍びの国王夫妻じゃない!
今回は来られないはずじゃなかったの!?
"プロデューサー、本番始まります。"
あ~んもう、なるようになれだわ。
みんな、気を引き締めて行くわよ!
「「「はい!」」」
今の所は順調ね。
それにしても啓子はやはり違うわ、会場の視線を完全に掌握してるじゃない。流石世界の大崎、化け物ね。
次は問題の彼ね、先ずは"Persona"だったかしら。
"タンッタンッタンッタンッ"
えっ、何彼。
何で私が見られてるって感じるの?
足先の動き、指先の表情、揺れる衣装、その全てから目が離せない。
長く厳しい冬を乗り越え、春の息吹きと共に命の迸りを魅せる草花の様に、新たな出会いを予感させるそんな装い。
私の思い描いていたイメージのさらに先を行く魅せるランウェイ。
"Persona"、いえ"Saki"。
凄いモデルが現れたわ。
これは啓子の警告を聞いていて良かったわ、会場が完全に彼に支配されてるじゃない。
いよいよラストね。
先ほどの啓子のランウェイで会場は最高潮の盛り上がりよ。
さぁ、魅せてちょうだい、貴方の最高のランウェイを!
空気が変わった
音楽はその役割を忘れ
先ほどまでの喧騒が認識出来ない
世界から一切の音が消えた
"カツンッ、カツンッ"
そんな中、唯一響く靴の音
"カツンッ、カツンッ"
囚われし者達よ
縛られし者達よ
"カツンッ、カツンッ"
優雅に
それでいて力強いその歩み
全ての柵から
魂を解放せんと
ただ真っ直ぐに進む姿に
"カツンッ、カツンッ"
言葉を超えて
国を超えて
歴史を超えて
"カツンッ、カツンッ"
今ここに宣言しよう
全ての想いの解放を
そして新たなる世界への旅立ちを
"タンッ、ワサッ"
天高く突き上げられた右腕
その指先は希望に向かい伸ばされているのか
"ブワッサッ"
突如広がる巨大な六枚の漆黒の翼
会場を埋め尽くす黒き羽根
天井より降り注ぐ祝福の光
全ての人々が滂沱の涙にくれるなか
彼は優しく微笑むと
ゆっくりと背を向ける
"カツンッ、カツンッ"
"カツンッ、カツンッ"
その靴の音は
私たちの心を優しく包み込む様に
耳の奥にいつまでも響くのであった
はい、そこでアピールして。
自由にしてくれていいから、イメージ大事にしてちょうだい。
急遽決まった仕事にしてはしっかり出来てるわよ!
明日の本番までにもっとイメージ固めて来てちょうだい!」
う~ん、クリスさんの指摘難しい。
今回のテーマ"解放と出会い"。
冬の抑圧から解放され、春夏と一斉に花開く若者のエネルギー的なものをイメージしてみたんだけど、何かしっくり来ない。
クリスさん的には良いみたいなんだけど何かが引っ掛かってるんだよな~。
そうそう、クリスさんと言えば大崎先生に怒られずに済みました♪
あの二人、ずっとくっちゃべっていたみたい。
俺が戻った時も"どうした、トイレの場所が分からなかったのか?"だって。
どれだけ話が盛り上がってたんだか。
こっちはラッキーでしたが。
「あの、"Saki"様。先ほどから何かお悩みの様に見受けられますが、どうかなさいましたでしょうか。」
いえね、今回のテーマが"解放と出会い"って言うやつ何だけど、何かイメージがね。
「解放でございますか。ココは王宮と言う場所柄多くの想いが囚われているところ。
その想いが解放され、新たな世界へと旅立つのなら、新しい出会いがあるのなら。
それはどんなにか幸せな事なのでしょう。」
想いの解放…、囚われた人々…、女性が…、男性が…、社会に…、価値観に…。
俺は周囲を見渡す。
豪華な装飾、歴史を感じさせる調度品。
この国の象徴、その歴史の中にはどれ程の"想い"が込められているのだろう。
うし、何とかなりそう。
ノエルさんありがとう。
明日の本番もよろしくお願いしますね。
「お役に立ちましたなら幸いでございます。明日も宜しくお願いします。」
"パンパン"
気合い入った、いっちょやったりますか。
(side : クリスティア)
今回ばかりは焦ったわ~。
主要モデルの集団食中毒って、本当何やってくれてんのよ。
予備に待機してもらっていたモデルたちじゃ人数足りないじゃない、着まわしするのも時間が掛かるのよ!?しかも現役男性モデルは誰もがスケジュールかつかつだってのに。
そこで思い出したのが友人のモデル、大崎啓子の愛弟子の話。確か一時期大騒ぎになってた新人モデルよね。
費用は全部持つからと拝み倒して来てもらったんだけど。
パッと見は地味、とてもモデルとは見えない容姿。でも動きは良いわね、肌もきれいだし、これなら行けるんじゃないかしら。
「啓子、あの子、なかなか良いわね。ショーに対する捉え方が良いわ。
パッと見地味だけど、そんなものココのスタッフに掛かればどうとでもなるし。」
「あぁ、クリスあの子にメイクスタッフは要らないわ。彼、"魔女"の息子なの。」
魔女。この業界にいれば一度は聞くことになる伝説の人物。そのメイクは悪魔のテクニック、全てを自在に作り替える。
「これは警告よ。彼の控え室は彼だけにしといた方が良いわ。スタッフを潰したくないでしょ。
あとこの"Noir"の出番、最後の取りにしてくれない?その前が私でいいから。」
まぁ、彼は男性だし、それは構わないけど。
「なら決まり、ショーを成功させましょう。」
啓子の言葉は気になるけど本番は明日。私はできる限りの準備に奔走するのだった。
翌日の本番、会場は多くの観客と報道陣で賑わっていた。
げ、あそこの紳士と淑女、お忍びの国王夫妻じゃない!
今回は来られないはずじゃなかったの!?
"プロデューサー、本番始まります。"
あ~んもう、なるようになれだわ。
みんな、気を引き締めて行くわよ!
「「「はい!」」」
今の所は順調ね。
それにしても啓子はやはり違うわ、会場の視線を完全に掌握してるじゃない。流石世界の大崎、化け物ね。
次は問題の彼ね、先ずは"Persona"だったかしら。
"タンッタンッタンッタンッ"
えっ、何彼。
何で私が見られてるって感じるの?
足先の動き、指先の表情、揺れる衣装、その全てから目が離せない。
長く厳しい冬を乗り越え、春の息吹きと共に命の迸りを魅せる草花の様に、新たな出会いを予感させるそんな装い。
私の思い描いていたイメージのさらに先を行く魅せるランウェイ。
"Persona"、いえ"Saki"。
凄いモデルが現れたわ。
これは啓子の警告を聞いていて良かったわ、会場が完全に彼に支配されてるじゃない。
いよいよラストね。
先ほどの啓子のランウェイで会場は最高潮の盛り上がりよ。
さぁ、魅せてちょうだい、貴方の最高のランウェイを!
空気が変わった
音楽はその役割を忘れ
先ほどまでの喧騒が認識出来ない
世界から一切の音が消えた
"カツンッ、カツンッ"
そんな中、唯一響く靴の音
"カツンッ、カツンッ"
囚われし者達よ
縛られし者達よ
"カツンッ、カツンッ"
優雅に
それでいて力強いその歩み
全ての柵から
魂を解放せんと
ただ真っ直ぐに進む姿に
"カツンッ、カツンッ"
言葉を超えて
国を超えて
歴史を超えて
"カツンッ、カツンッ"
今ここに宣言しよう
全ての想いの解放を
そして新たなる世界への旅立ちを
"タンッ、ワサッ"
天高く突き上げられた右腕
その指先は希望に向かい伸ばされているのか
"ブワッサッ"
突如広がる巨大な六枚の漆黒の翼
会場を埋め尽くす黒き羽根
天井より降り注ぐ祝福の光
全ての人々が滂沱の涙にくれるなか
彼は優しく微笑むと
ゆっくりと背を向ける
"カツンッ、カツンッ"
"カツンッ、カツンッ"
その靴の音は
私たちの心を優しく包み込む様に
耳の奥にいつまでも響くのであった
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