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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第164話 佐々木、引っ越しするってよ。 (3) (side:マザー佐々木)

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やっぱりいいわ~、広い家。
今までずっとアパート暮らしだったから気にもしなかったんだけど、天井が高いとこんなに開放感があるものなのね、こういう事って暮らしてみないと解らない事じゃないかしら。今までは大きな家なんてただ邪魔にしか思えなかったけど、実際暮らしてみるとなかなか快適ね。
今晩も五百ミリ缶、いっちゃおうかしら♪

この家を購入する事になったのは本当に偶然だった。
昨年息子の音楽著作料管理の為に作った音楽事務所、スタジオS&B。名ばかりの代表に収まった私は、その金額に驚かされた。
あいつこの短期間にどれだけ稼いでるのよ、私の年収の何倍稼ぐんだか。
これの税金管理なんて素人の私にどうにか出来る訳がない。
すぐに見切りをつけた私は金持ちの事は金持ちに聞けとばかりにママ友である高木康太君のお母さんに連絡、御主人に優秀な税理士を紹介してもらい、今後についてアドバイスを貰う事にした。

「佐々木さん、税金対策で音楽事務所を設立したのはとてもいいアイディアだと思います。ですがこのままではやはり莫大な税が加算されるのは必然、そこで名目だけでなく実際に事務所を作ってしまうのはいかがでしょうか?
先ほどからのお話ですと、息子さんは何かと問題を拡大させる傾向があるように見受けられます。お母さんがその受け皿をあらかじめ作っておいた方が、後から考えれば楽だったと言う事になりかねませんし。」

どうやらこちらの税理士先生は本当に優秀なようだ。息子のトラブル体質(自分から引き起こす)をよく理解している。
私は彼女のアドバイスに従い、レッスン室や収録設備の整った本格的な音楽事務所を設立、息子の稼ぎをそれに当て経費として減価償却していくことにした。

彼女の助言は見事に的中、楽曲提供どころかモデルの仕事、しかも世界一流のトップモデル?我が息子ながら本気で何者だこいつは?と思わされることばかりだった。

名目上でなった代表の仕事もそれなりにこなし、いつの間にか人も増え(息子が拾ってくる)、スタジオS&Bは気が付けば立派な芸能事務所の様になっていた。
息子が冗談で付けた”マザー佐々木”の名も、いつの間にか業界で知られるようになってしまった。"hiroshi"ブームの黒幕、陰の支配者、本当にやめて欲しい。
私は面白そうだと思ったことを適当にやってるだけなんだよな~。

増山たちとの仕事も基本小遣い稼ぎ、たまにいい飯食えればいいやってくらいの感覚なんだが、アイツら妙に私の事恐れるし。以前ムカつくことをねちねち言って来たから徹底的に追い込みかけたのまだ根に持ってるのかね~。あれくらい闇金業界じゃ常識なんだけど、案外普通の感覚を持った人間の集まりなのかね~。
世界に出たらこんなもんじゃ済まないんだけどな~。(遠い目)

この家の購入を決めたのは息子が旅行先で鈴の飾り物を貰ってから。
あれも増山経由での仕事だったっけ。古い宿には強いモノが住み着くって言うけど、相当なヤバさだったからな~、あれも。
まあ私の仕事は調査だったんだけどね。
前から思ってたんだけど、ウチの息子、その手のモノ一切分からないのね。
知覚できないんじゃなくって悪意が感じられない。
その時も私らには分らない様な何かを体験しながら一切気が付いていなかった様だし。
これは放置一択だわ、うん。
だってあの鈴、高名な神社の宝物殿に収められてる一品レベルの力を感じたし。
仲居をやってる宿の娘さんって一体だれよ、あそこに年頃の娘なんていないっての。
それに引き寄せられるようにやってきたこの物件のお話し、素直に従っておくのが吉ってものでしょう。

引っ越し自体は楽だったわ、楽々パックって言うの?片付けから再配置、ゴミの整理に至るまで全部お任せ。もともとアパート暮らしで物がないとはいえそれでも結構なゴミが出たから、本当に助かった。
息子は居ても邪魔だから前から増山にせっつかれていた祠の掃除を押し付けたけど、またなんかやって来たらしい。
最近変な気配もするし、悪い感じじゃないからいいけど妙なもの拾って来たんじゃないでしょうね。
痴女を拾ってきた前科もあるし、凄く心配なんだけど!
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