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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第163話 佐々木、引っ越しするってよ。 (2)

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「康太君よく来てくれたね、如月さんもいらっしゃい。入って入って。」

「お邪魔します、結構広いじゃない。これ、ウチの母さんから。引っ越し祝いにどうかと思ったんだけど手作りのフルーツタルト。親友、母さんのスイーツが好きって言ってたから。」

「マジで、本気で嬉しいんだけど。マイマザーも大好きなんだよね、康太ママの手作りスイーツ。良くお礼を言っといて~♪」

「しかし、本当に引っ越ししたんだね。そうならそうと言っといてくれればいいのに、水臭くないか。」

いや~、俺も知らなかったんだよね。
こないだ祠の掃除を頼まれてさ~、ほら以前話したじゃん、滝行。
そこのさらに進んだ奥にある祠の話、したことあったよね?
本当、めちゃくちゃ山奥、どこの山岳信仰ってレベル。
そこの祠のお掃除に行かされましてね。同行してくれた滝行のおっちゃん、増山さんって言うんだけど、その増山さんと一緒に草刈りやら枝払いやら祠の掃除やらをしてきた訳ですよ。
そんでクタクタで帰ってきたら知らないお家に連れて行かれて、マミーとご対面。
増山さんの家までお迎えご苦労様ですって言ったら、”ここがアンタの家だよ、引っ越したから。”ですよ。
マミー相変わらずマミーでした。

「うん、理解できないけど話は聞こえた。理解しようとしちゃダメって事は分かった、あるがままを受け入れろって事でOK?」

おぉ、流石康太君頭の出来が違う。俺がその境地に達するのにどれほど時間がかかったか、師匠、一生付いて行きます。
それでこの家なんだけど、やたら広いのよ。スタジオS&Bの事務所から近いって言うんで購入したって言ってたけど、こんなに部屋数あってどうするのって感じ。
以前は複数の奥さんと暮らしていた男性の持ち物だったらしいんだけど、この街じゃん?奥さんに逃げられて持て余した男性が、売りに出したんだってさ。
普通のご家庭じゃこれほどの家はいらないし、かといって新たに家庭を築いた男性はそんないわく付きの家なんか欲しがらないからね。
かなり安く買えたって、マザーほくそ笑んでいました。
そんで不動産屋さんから聞いたんだけど、ウチの市ってこういった物件が四~五年前から増えてるんだってさ。
これってどう思う?
ヒントは"hiroshi"様。

「「・・・・ヤバくない?」」

ですよね~、いや本当、どうにかしないとこの国大混乱よ?
今のところその兆候は見られないけど、時間の問題でしょ?彼って影響力強すぎるから。
まぁ、こんな所で俺たちみたいなガキんちょが心配しても仕方がないんだけどね。
それより見てよ、芝生の庭だよ芝生の庭。ちょっとしたセレブって感じしない?

「ねえ親友、この家犬飼ってる?」

ん?飼ってないけど。でも犬か、イイよねワンワン♪
マイマザーに進言しておこうかな、”犬飼ってもいいですか”って。


(side:増山)

「姐さん、今お電話よろしいでしょうか。」

「”あぁ、増山か。いいぞ、こないだの事だろう。”」

はぁ~、本当にどうしたものか。姐さんの所の息子さんと一緒に霊廟の掃除に行ったのは良いがあんなことになるとは。
あの場所は代々うちらの組織が監視していた最重要スポット。年に一度優れた術師が鎮魂の儀を行って何とか鎮めていた危険地帯。
それがすっかり浄化されちまってるなんて誰が信じるってんだよ。
実際その場にいた俺ですら信じられないってのに。
これで坊主がけた外れた才能の持ち主ってんならまだ辻褄が合うってもんだけど、俺から見ても才能は甘く見積もって”並み”。一般人に毛の生えた程度。
どう説明しろと?
意味解らねえ。
体力と言うか生命力なら野生動物並みじゃないかって思う時があるけど、それくらいの奴ならゴロゴロいるし、姐さんも”こいつにそっちの才能はからっきしだね”って言ってたし。姐さんの”けん”は一級品だからな~。
俺たちも、いつも助けられてるし。

「”息子の事で変に悩んでるんじゃないだろうね~、あれは悩むだけ無駄だからね。”」

「姐さん、それってのは一体どう言う事なんでしょうか?」

「”あいつのあれは体質さ、妙なのに好かれちまうんだ。そのくせ悪意のあるものは近寄っても来ない。近寄れないんじゃなく、接点が出来ないのさ。
意味解らないだろ?私も解らない。
そういうものだと思って放置しとくのが得策さね。”」

それってうちらの仕事をさせたら優秀な手駒になるんじゃ、
「”アンタ、今うちの息子を利用しようとか考えなかったかい?言っておくけどアイツには手を出さない方が良いよ。何時かのあたしの比じゃない被害を覚悟するってんなら止めはしないけどね。”」

”姐さんの被害”、以前姐さんを強引に引き込もうとして組織が半壊したあの大惨事、あれの比じゃないだと!

「”アンタも見たんだろ、御奉霊山、明翠亭、鎮魂の祠。そのすべての怪異が牙をむいたら。無事で済むのかね~。”」

一気に血の気が引いた。言われたすべてが特級案件。組織でもごく一部の者にしか開示されない極秘事項。
泡立つ肌、小刻みに震える身体。
鼓膜の奥には、姐さんの言葉がいつまでも響くのであった。
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