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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー
第139話 中央都に行って来ました。 (3)
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「あの~、本当に警察に行かなくてもよろしいのでしょうか?今からでも出頭した方がいいのではないかと…。」
「良いの良いの、気にしない気にしない。まずは今日一日付き合ってくれればいいから~。」
え~、先ほどの痴女ですが、連れて来ちゃいました。
いやね、身分証明の為にって名刺もらったんですよ。
"西京芸能事務所 マネジメント部 ジャイアント担当 町田雪子"
どこかで見た事のある単語がズラリ。
北川さんの後輩じゃん、世間狭すぎでしょ。
放置って訳にも行かなくなりましてね、はい。
お、到着した様です。
「あの、佐々木さん。ここは…。」
「「「お帰りなさいませ。旦那様、お嬢様方!」」」
俺たちは町田さんを見ながら、誇らしげに答えた。
「「本日の我々の目的地、執事喫茶です。」」
落ち着いた雰囲気のクラシカルな店内。壁掛けの間接照明が柔らかく辺りを照らし、ゆったりとした音楽が心を穏やかにしてくれる。
「旦那様、本日のお飲み物はいかがいたしましょう。」
「あぁ、外出をして少々疲れが出た様だ。何か気分が落ち着くモノを頼む。」
「でしたら良い茶葉が入っておりますので、そちらをお持ちいたしましょう。」
「うむ、選定は任せた。宜しく頼む。」
「畏まりました、旦那様。」
「「「・・・・・・」」」
どしたの皆?皆も何か頼まないの?
「ちょっと佐々木、何今の!?めちゃくちゃ手慣れてるじゃない!
しかもスマート、常連と言われても誰も疑わないわよ!」
えっ、執事喫茶ってこう言うものなんじゃないの?俺何か勘違いしてたとか?
「佐々木君バッチリ決まってたわよ。さっきの執事さん、超ノリノリだったもん。」
ほう、喜んで頂けたと。それは何より。
執事喫茶のお姉様方、超イイの。異世界モノ小説に出てきた男装の令嬢のそれ。おじさんマインド大興奮。
コレはもう、思い切りロープレして楽しまないと失礼でしょ♪
町田さん、どうよ。こんな所来たこと無いでしょ?
「はい、私、今まで仕事仕事でろくに周りが見えていなかった様です。」
執事さんたちの目、生き生きしてない?自分の中の理想を体現してるからだと思うけど、今のただ男ってだけで威張り散らしている奴らより、よっぽど素敵に見えない?
まぁ、コレからはどんどん違った形の男性が出て来ると思うけど、女性側が変わって行けば、自然淘汰的に男性も変わると思うよ。
「・・・・・・」
何か考え込んじゃったか。
自分の人生、しっかり考えるのがイイと思うよ。
アニ研三人衆、自分から来たがっていただけあって満喫してるな~。
さっきから執事さんたちと写真取り巻くってるじゃん。
おまけ組と絵実ちゃんも、執事さんに耳元で囁かれてキャーキャー言ってるし。
「なんですの、コレのどこが執事ですの!わたくしをバカにしていますの?」
はぁ~、何なんだよ、人が楽しんでいるって言うのに無粋な奴は。
大体貴女たち女性じゃない、女性なら女性らしくメイドでもやってらしたら?男性が一人もいなくて執事?笑い話にもならなくてよ。」
しかも馬鹿かよ、なんだよあのエセお嬢様。この店のコンセプト全く理解していないくせに、全否定してんじゃねぇよ。
俺は左手を軽く上げ、先ほどの執事さんに合図を送る。
「申し訳ありません、旦那様。お部屋が少々騒がしくなっておりまして…。」
「構わない、小鳥が紛れ込んだだけだろう。このような部屋の中では小鳥も寂しかろう。野に放つ手伝いを頼めるか?」
「!?何なりとお申し付け下さいませ、旦那様。」
俺は執事さんと共に席を立つとバックヤードへと向かうのであった。
(Side : 執事A)
「「「お帰りなさいませ。旦那様、お嬢様方!」」」
今日は珍しく旦那様のお帰りです。旦那様方は余りこちらのコンセプトをご理解頂け無い事が多く、当屋敷の者としては大変気を遣う御方たちでもあるのですが。
こちらの旦那様は大変ご事情に精通しておられるご様子。まだお若くていらっしゃるのに、大変御仕えしがいのある御方の様です。
残念ながら当屋敷のコンセプトをご理解頂け無いお嬢様がお帰りになられた様です。
旦那様がお呼びの様です。どうやらご不快に成られたご様子、どうしたものか。
旦那様が執事室に来られて仕舞われました。
「お姉さん、今から起きる事は内緒だからね♪」
そうおっしゃると、大胆にも予備の執事服に着替えられてしまいました。
「化粧道具借りますね。」
この世に魔法は存在するようです。
私は何を見ているのでしょう。
"コツッコツッコツッコツッ"
「失礼致します、お嬢様。
使用人の身でありながら、お嬢様を不快にさせてしまった事。執事長として、心よりお詫び申し上げます。」
ロマンスグレーの髪にモノクルを掛けた、渋い大人の色気漂う執事長は、下げた頭をゆっくりと上げると、お嬢様に優雅に微笑み掛けたのでした。
「えっ、あっ、やっ、その、うっうん、そうね、まあ問題ないわ。私もそこまで怒って居たわけではないし。」
「そうでございましたか、それは私も胸を撫で下ろす思いでございます。
誰か、お嬢様は喉かお渇きのご様子。何か温めの紅茶をお持ちしなさい。」
「「「はい、畏まりました、執事長。」」」
私たちは一斉に動き出しました。
「はははっ、左様でございましたか。それはお嬢様もお人が悪い。ですがわたくし、一人の執事としてお嬢様の深い思い遣りに感銘致しました。」
執事長の指示の元温めの紅茶を用意し届けると、屋敷内は先ほどとは打って代わった和やかなものとなっておりました。
「所でお嬢様は"hiroshi"と言うアーティストをご存知でしょうか?何やら話題となっているようですが。」
そう言うとポケットからスマホとイヤホンを取り出し、お嬢様に差し出します。訝しげにイヤホンを付けたお嬢様は漸くしたのち目を見開いて執事長をご覧になられました。
「こちらはその者のライブ映像になります。」
今度はスマホを食い入る様に見つめるお嬢様。
「そうそう、その者がこんどCDアルバムを出すとか。こちらに先行予約チケットがあるのですが、お嬢様は御入り用になられますでしょうか?」
懐から一枚のチケットを取り出す執事長。何度も頭を上下するお嬢様。
「こちらのチケット、有効期限があるとか。お早めにお近くのショップで使われた方がよろしいかと。
お嬢様がお出掛けになられます。お見送りを。」
「「「いってらっしゃいませ、お嬢様。」」」
「旦那様方、お嬢様方におかれましては、ごゆるりと御寛ぎ頂きますよう。」
執事長は優雅に一礼をすると、執事室へと戻られました。
「「「いってらっしゃいませ。旦那様、お嬢様方!」」」
旦那様はその後お嬢様方と談笑された後、また旅立たれました。
のっぺりとしたお顔の余り特徴の乏しい旦那様。私たち執事を愛してくださりありがとうございました。
ですが一言だけ。
"Hiroshi"のCDアルバム先行予約チケットは、わたくしが欲しゅうございました。(T T)
(side : 町田雪子)
何か強烈な人でした。
私が仕事に疲れ、つい魔が差して犯してしまった犯罪行為をさらっと受け流し、女の魔境"執事喫茶"に連れて行ったと思ったら、いつの間にか執事長になってたり、執事の方々を生き生きしていると評したり。
これまでの人生で一度も出会った事の無い"男性"でした。
渡された一枚の名刺。
そこにはかつての上司であり尊敬する先輩、北川良子の名前。
"多分知り合いなんじゃないかな、一度相談してみたら?新たな道が見つかるかも知れないよ?"
彼の言葉は私に深く残りました。
「もしもし、北川先輩ですか?お久しぶりです、町田雪子です。」
「良いの良いの、気にしない気にしない。まずは今日一日付き合ってくれればいいから~。」
え~、先ほどの痴女ですが、連れて来ちゃいました。
いやね、身分証明の為にって名刺もらったんですよ。
"西京芸能事務所 マネジメント部 ジャイアント担当 町田雪子"
どこかで見た事のある単語がズラリ。
北川さんの後輩じゃん、世間狭すぎでしょ。
放置って訳にも行かなくなりましてね、はい。
お、到着した様です。
「あの、佐々木さん。ここは…。」
「「「お帰りなさいませ。旦那様、お嬢様方!」」」
俺たちは町田さんを見ながら、誇らしげに答えた。
「「本日の我々の目的地、執事喫茶です。」」
落ち着いた雰囲気のクラシカルな店内。壁掛けの間接照明が柔らかく辺りを照らし、ゆったりとした音楽が心を穏やかにしてくれる。
「旦那様、本日のお飲み物はいかがいたしましょう。」
「あぁ、外出をして少々疲れが出た様だ。何か気分が落ち着くモノを頼む。」
「でしたら良い茶葉が入っておりますので、そちらをお持ちいたしましょう。」
「うむ、選定は任せた。宜しく頼む。」
「畏まりました、旦那様。」
「「「・・・・・・」」」
どしたの皆?皆も何か頼まないの?
「ちょっと佐々木、何今の!?めちゃくちゃ手慣れてるじゃない!
しかもスマート、常連と言われても誰も疑わないわよ!」
えっ、執事喫茶ってこう言うものなんじゃないの?俺何か勘違いしてたとか?
「佐々木君バッチリ決まってたわよ。さっきの執事さん、超ノリノリだったもん。」
ほう、喜んで頂けたと。それは何より。
執事喫茶のお姉様方、超イイの。異世界モノ小説に出てきた男装の令嬢のそれ。おじさんマインド大興奮。
コレはもう、思い切りロープレして楽しまないと失礼でしょ♪
町田さん、どうよ。こんな所来たこと無いでしょ?
「はい、私、今まで仕事仕事でろくに周りが見えていなかった様です。」
執事さんたちの目、生き生きしてない?自分の中の理想を体現してるからだと思うけど、今のただ男ってだけで威張り散らしている奴らより、よっぽど素敵に見えない?
まぁ、コレからはどんどん違った形の男性が出て来ると思うけど、女性側が変わって行けば、自然淘汰的に男性も変わると思うよ。
「・・・・・・」
何か考え込んじゃったか。
自分の人生、しっかり考えるのがイイと思うよ。
アニ研三人衆、自分から来たがっていただけあって満喫してるな~。
さっきから執事さんたちと写真取り巻くってるじゃん。
おまけ組と絵実ちゃんも、執事さんに耳元で囁かれてキャーキャー言ってるし。
「なんですの、コレのどこが執事ですの!わたくしをバカにしていますの?」
はぁ~、何なんだよ、人が楽しんでいるって言うのに無粋な奴は。
大体貴女たち女性じゃない、女性なら女性らしくメイドでもやってらしたら?男性が一人もいなくて執事?笑い話にもならなくてよ。」
しかも馬鹿かよ、なんだよあのエセお嬢様。この店のコンセプト全く理解していないくせに、全否定してんじゃねぇよ。
俺は左手を軽く上げ、先ほどの執事さんに合図を送る。
「申し訳ありません、旦那様。お部屋が少々騒がしくなっておりまして…。」
「構わない、小鳥が紛れ込んだだけだろう。このような部屋の中では小鳥も寂しかろう。野に放つ手伝いを頼めるか?」
「!?何なりとお申し付け下さいませ、旦那様。」
俺は執事さんと共に席を立つとバックヤードへと向かうのであった。
(Side : 執事A)
「「「お帰りなさいませ。旦那様、お嬢様方!」」」
今日は珍しく旦那様のお帰りです。旦那様方は余りこちらのコンセプトをご理解頂け無い事が多く、当屋敷の者としては大変気を遣う御方たちでもあるのですが。
こちらの旦那様は大変ご事情に精通しておられるご様子。まだお若くていらっしゃるのに、大変御仕えしがいのある御方の様です。
残念ながら当屋敷のコンセプトをご理解頂け無いお嬢様がお帰りになられた様です。
旦那様がお呼びの様です。どうやらご不快に成られたご様子、どうしたものか。
旦那様が執事室に来られて仕舞われました。
「お姉さん、今から起きる事は内緒だからね♪」
そうおっしゃると、大胆にも予備の執事服に着替えられてしまいました。
「化粧道具借りますね。」
この世に魔法は存在するようです。
私は何を見ているのでしょう。
"コツッコツッコツッコツッ"
「失礼致します、お嬢様。
使用人の身でありながら、お嬢様を不快にさせてしまった事。執事長として、心よりお詫び申し上げます。」
ロマンスグレーの髪にモノクルを掛けた、渋い大人の色気漂う執事長は、下げた頭をゆっくりと上げると、お嬢様に優雅に微笑み掛けたのでした。
「えっ、あっ、やっ、その、うっうん、そうね、まあ問題ないわ。私もそこまで怒って居たわけではないし。」
「そうでございましたか、それは私も胸を撫で下ろす思いでございます。
誰か、お嬢様は喉かお渇きのご様子。何か温めの紅茶をお持ちしなさい。」
「「「はい、畏まりました、執事長。」」」
私たちは一斉に動き出しました。
「はははっ、左様でございましたか。それはお嬢様もお人が悪い。ですがわたくし、一人の執事としてお嬢様の深い思い遣りに感銘致しました。」
執事長の指示の元温めの紅茶を用意し届けると、屋敷内は先ほどとは打って代わった和やかなものとなっておりました。
「所でお嬢様は"hiroshi"と言うアーティストをご存知でしょうか?何やら話題となっているようですが。」
そう言うとポケットからスマホとイヤホンを取り出し、お嬢様に差し出します。訝しげにイヤホンを付けたお嬢様は漸くしたのち目を見開いて執事長をご覧になられました。
「こちらはその者のライブ映像になります。」
今度はスマホを食い入る様に見つめるお嬢様。
「そうそう、その者がこんどCDアルバムを出すとか。こちらに先行予約チケットがあるのですが、お嬢様は御入り用になられますでしょうか?」
懐から一枚のチケットを取り出す執事長。何度も頭を上下するお嬢様。
「こちらのチケット、有効期限があるとか。お早めにお近くのショップで使われた方がよろしいかと。
お嬢様がお出掛けになられます。お見送りを。」
「「「いってらっしゃいませ、お嬢様。」」」
「旦那様方、お嬢様方におかれましては、ごゆるりと御寛ぎ頂きますよう。」
執事長は優雅に一礼をすると、執事室へと戻られました。
「「「いってらっしゃいませ。旦那様、お嬢様方!」」」
旦那様はその後お嬢様方と談笑された後、また旅立たれました。
のっぺりとしたお顔の余り特徴の乏しい旦那様。私たち執事を愛してくださりありがとうございました。
ですが一言だけ。
"Hiroshi"のCDアルバム先行予約チケットは、わたくしが欲しゅうございました。(T T)
(side : 町田雪子)
何か強烈な人でした。
私が仕事に疲れ、つい魔が差して犯してしまった犯罪行為をさらっと受け流し、女の魔境"執事喫茶"に連れて行ったと思ったら、いつの間にか執事長になってたり、執事の方々を生き生きしていると評したり。
これまでの人生で一度も出会った事の無い"男性"でした。
渡された一枚の名刺。
そこにはかつての上司であり尊敬する先輩、北川良子の名前。
"多分知り合いなんじゃないかな、一度相談してみたら?新たな道が見つかるかも知れないよ?"
彼の言葉は私に深く残りました。
「もしもし、北川先輩ですか?お久しぶりです、町田雪子です。」
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