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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第119話 ビックジョーの恋 (3)

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”はぁ~、いくらなんでも無理でしょう。”

目の前でジュウジュウ音を立てている豚玉もんじゃを眺めながら一人考える。
”俺に恋愛事は管轄外だー!!”

校長室での話は最近校内で蔓延している”俺様系わがまま男子”の浮つき加減についてだった。
またなんかやらかしたのかと内心ビクビクしていた俺としては、良かったのか悪かったのか。
正直言おう、”知らんがな!”
別にビックジョーどもがどうなろうと俺関係ないじゃん、とっとと告白なりなんなりして振られればいいじゃん!
って思ったんですよ、最初はね。
ところが状況はそんなに単純なものじゃなくってですね…。
結構あるんですって、俺様のストーカー問題。
うわ~、やっぱダメダメだ~、あいつ等。
今まで蝶よ花よとよいしょされてきた俺様系わがまま男子の自己中メンタルの中には、自分が否定されることに対する免疫が皆無。結果発生する付き纏いや粘着行為。
ストーカー犯罪者の出来上がり。
しかも悪い事に男少女多のこの世界、嫉妬する女性は居てもかばったり助けてくれる女性は皆無と言うね、勘弁してくださいっての。
こうした事件、俺が知らなかっただけで全国で多発しているらしい。
しかも女性泣き寝入りのケースが多いんだと。
いろんな意味で終わってるぞ、この世界。

”はぁ~”
加藤校長には迷惑ばかりかけてるから断るわけにもいかないし、かといって恋愛成就キューピットなんて俺に出来る訳がない。
ほんとどうしろってんだよ。

”ベシッ”
った~い、いきなり誰だよ人の頭引っ叩くのはって、げ、美魔女!

「アンタが辛気臭い顔してため息ばかりついてるからだろうが、営業妨害ならとっとと叩き出すよ!ホレ、もんじゃが焦げちまうだろうが。食べ物を粗末にするなんてこの罰当たりが、そんなんじゃ旨いものも旨くなくなるってんだよ。」

あ、すんません。つい考え事しすぎてぼーっとしていました。
本当にこの美魔女はかっこいいよな~。
”俺様系わがまま男子”だろうが何だろうがけっちょんけちょんだもんな…。

「おばちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど、いい?」

「なんだい急に。お、少しは元気が出たみたいだね。いい顔になった悪い顔してるじゃないかい。(ニヤリ)」


(side:女子生徒)

「ねえねえ、三保聞いた?放課後の緊急集会。
こんどは伝説の女傑、駄菓子屋のおばちゃんが講師なんですって。
あの人この街じゃ知らない人がいないって言うほどの有名人じゃない。
旦那さんは超イケオジ、男性四人に女性四人計八人の子持ちで孫たくさん。
しかも一夫一妻を貫いているって、どんだけすごいのよ。前回の西城講師の講演会も凄かったけど、今度の講演会も期待大じゃない?
何と言っても生ける伝説なんだし。
しかもお題が”旦那を従えるテクニック”ってありえないでしょ。
やっぱり伝説、言う事が違うわ~。」

「うん聞いた、もうこれって話聞けるってだけでひと財産?本当一生ものよね。
私この中学に入れて本当によかった。私立の受験に失敗したときは落ち込んだけど、あそこに行ってたら絶対体験出来なかっただろうしね♪」

「本当にそう、加藤校長先生には感謝しかないわ。」

放課後の体育館。
満員の館内。
女子生徒たち狩人たちは期待と興奮を胸に今か今かとその時を待っている。

”本日はお忙しい所、当講演会にお越しいただきましてありがとうございます。
講演に先立ち、一本のミニフィルムをご覧いただきたいと思います。その後お待ちかね、伝説の女傑の登場です。
皆さま、この一時ひとときを心行くまでお楽しみください。”

体育館の遮光カーテンが閉められ、照明が消える。
プロジェクターに映し出されるのは何気ない日常。
朝の通学風景。

談笑し、ふざけ合う男子生徒。
手に持つバスケットボールが零れ、道に転がる。

足元に転がったボールを拾う一人の女子生徒。

ムッと表情を歪める男子生徒。

目が合うと、ニッコリと柔らかい笑みを浮かべボールを渡す彼女。

「はいこれ、気を付けてね。」

そのまま立ち去ろうとする彼女。

「あ、あの、俺鈴木って言うんだけど、良かったら放課後バスケ部の練習見に来てよ。」

「う~ん、ごめん。今日は用があるから…。明日なら行けるけど、それでいい?」

「あ、あぁ。待ってるよ。」

「うん、分かった。それじゃ、また明日ね♪」

「あぁ、また明日。」

去って行く彼女。

”焦って名前聞き忘れた~”
”馬鹿お前、超早口になってたぞ。”
”あっはははははっ”
”う、うるせ~!”

場面は変わって体育館。
バスケ部の練習を見つめ声援を送る大勢の女の子たち。

「練習見に来てくれたんだ、どうだった俺の活躍?」

「うん、約束だしね。かっこいいと思ったよ。スポーツに真剣に取り組んでるんだなって。いいんじゃない、そういうの。」

「そ、そうか?
あの、良かったらこれからも練習見に来ないか?あと名前聞きたいんだけど。」

「あ、言って無かったね。私、井上由香。よろしくね♪」

場面は変わり、私服で出掛ける二人。
ペットショップに出掛けたり、公園でソフトクリームを食べたり。

場面は教室。
机に肘をつき、浮かない顔の由香。

「由香、どうしたのよ、浮かない顔して。最近彼氏が出来たって喜んでたじゃない。なんか彼氏と上手く行って無いとか?
親友の私に話してみなさいよ。」

「あ、春子、なんかごめんね。
うん、彼氏が出来たことは嬉しいよ、別に喧嘩をしたとかそう言う事は無いんだけど。ただこのままでいいのかなって。
春子も知ってる通り鈴木君って所謂”俺様系わがまま男子”って奴でしょう?
今は付き合い始めでそうでもないけど、それでもやっぱり”俺が俺が”ってね。これでお互いに”慣れ”が出てきたりしたら、わがままな所に振り回されるんじゃないかって不安がね。そういう話ってよく聞くじゃない?」

「あぁ、そう言う事ね。それじゃ、これは親友からのアドバイス、心して聞きなさい。あのね…。」

場面は変わって家の玄関の光景。
ドアが開き、スーツを着た女性が現れる。

「ただいま~。遅くなっちゃってごめんね~。」

「おかえり、夕飯作っておいたぞ。疲れただろう、早く着替えてこい。今日は由香の好きなビーフシチューだ、冷めないうちに食べるぞ。」

「鈴木君、いつもありがとうね。助かってます。」

「ふん、真由美を呼んできてくれ。一緒に食べるぞ。洗い物は一度に済ませたいからな。」

「はいはい。真由美~、ごはんよ~。早くいらっしゃ~い。」
”は~い。”

食卓での風景。
家族の団欒だんらん

「ねえ、お母さん。ウチのお父さんって、何でこんなにいろいろ家事を手伝ってくれるの?
他所のお父さんがいる子に聞いたんだけど、絶対あり得ないって驚かれたんだけど。」

夫を見つめる由香。
”彼が変わったのも親友のアドバイスを貰ってから。今があるのも春子のお陰ね。”

家族の団欒は続いていく。

”皆さんいかがだったでしょうか。お楽しみいただけましたか?なにこの作り話、こんな事有る訳ないじゃない。そうお思いになったのでは?
それでは登場していただきましょう。一夫一妻を貫いた女傑、そしてこのお話しの親友、春子のモデルとなった生ける伝説、桜木春子さんです。”

「よう、尻の青いガキんちょども。いっちょ前に色気づいて大変みたいじゃないかい。
さっきのドラマを見てどう思った?ありえないと思ったかい?
まあ普通そうだろうさ。でもね、あれ本当の話だから。あそこに出てた由香のモデル、実在する私の友人。
そんであの話で友人にうさん臭い話を吹き込んだのが私。
さあ、どうする?男どもに声を掛けられ、浮かれポンチで後から泣きを見るか。上手いことてのひらで転がして、イイ感じの家庭を築くか。
あとはアンタら次第だよ~?

おやおや、さっきと違ってみんないい顔悪い顔してるね~。
それじゃあ、始めようかね。”男どもを尻に敷くテクニック”の話をさ!」(ニヤリ)

女生徒たち狩人ども講習会熱い夜が始まった。
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