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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第105話 陰の王の憂鬱 (side:高木康太)

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「”SASAKI&Bamboo”に新曲の要請?何寝ぼけた事言ってるんですか!
今でさえ頑張って、テレビ出演や雑誌の取材を断っている状況なんですよ?
これ以上世間に話題を振って、断り切れるとでも?
謎のアーティストって事にしておけばいいんですよ、ネットの作り手さんや歌い手さんと同じカテゴリーですって言って突っぱねてください。
"hiroshi"の本格的な活動は高等部に入ってからにしてくださいよ。
心身共に成長し切ってない今、こんな所で潰してしまっていいんですか?
それとも学園としてはそれが狙いですか?
だったらこの事を”ファンクラブ”にリークしますが?
ファンクラブ及び”サロン”の方は文化祭の”hiroshi on Stage"で話を付けてあるんですから、余計な事はしないでください。
あとhiroshi関連の事案はこちらに流さないでくれます?
これに関しては完全に契約外の事なんで。
吉川さんが板挟みで辛いのは分かりますが、それとこれとは別ですから。
学園内のひろし様騒動はしっかり押さえられているんですから、それで良しとしておいてください。
鬼龍院校長には”あまり欲を掻かない方がいいですよ”とお伝えください。」

乱暴にスマホを切ると、椅子の背もたれに身体を預けた。
ふぅ~、まったくやってられない。
何で僕が”hiroshi"の事まで面倒を見ないといけないんだ。大体"SASAKI"の楽曲が欲しいなら、連絡先知っているんだから直接頼めばいいじゃないか。
まあ、頼んで断られたってのが落ちだとは思うけど。
彼って快楽主義的な所があるから、面白そうって思わないとなかなか動かないんだよね。それでいて人情家だから渋々やってくれたりするけど。
今回みたいに二匹目のどじょうをみたいな話は、面倒くさがって絶対やらない。

学園内の”hiroshi"様騒動は、一応の落ち着きを見せている。ここまで来るのがもうね。
「君と二人で」の音楽配信サイトでの発表。学園中の騒動を抑える為に行われたこの措置は、正しく効果を発揮した。
"サロン"会員へのプレリリース配信もあり、中等部内の騒ぎはすぐに鎮静化した。
数日をおいて外部協力生及び保護者会を対象とした先行配信、さらに数日を置いて一般配信とした。
人より早く手に入れられる特別感は購買意欲を刺激し、"hiroshi"初の音楽配信はまずまずの売上を上げた。
続くファーストシングルは配信の効果もあり、順調な滑りだしを見せた…かに見えた。
僕の反対を押しきっての新曲依頼。
大人たちは"親友"を舐めすぎた。
今回の騒動の大元である「君と二人で」を作ったのは誰か。
ミュージックビデオを作成したのは。
鬼ごっこ同好会を主管しヨウツーベで一躍有名にしたのは。
新曲「Summer Beach」は女性の内に眠る願望を爆発させた。更に「君と二人で」の相乗効果は凄まじく、全く無名の新人アーティストであるにも関わらず、シングルCD売上歴代一位を叩き出した。
音楽配信ダウンロード数は三週間連続一位を樹立。
超大型新人"hiroshi"と楽曲提供者"SASAKI&Bamboo"。
マスコミ各社、各芸能事務所、レコードレーベルからも執拗な問い合わせがあったが、関係者全員に箝口令を引き一切の情報提供を禁止した。


「如月さん、皇副生徒会長馬鹿様の方はどうなってるか分かる?」

「はい、皇副生徒会長と一連の男子生徒たちは、現在我が君が手配された皇グループ関連会社の広告依頼の為、ポスター撮影に行かれています。」

今一つの懸念材料、男子生徒の動向。
僕はマネジメント部の吉川さんを通じ、中等部所属男子生徒全ての詳細な情報を提供させた。
"マネジメント部はあらゆる協力を約束します"、その誓いを実行させた形だ。
分析してみると、大まかに三つのタイプに分けることが出来た。
尾崎秀悟生徒会長を中心とした唯我独尊タイプ。読んで字のごとく、己の道を突き進む彼らは基本放置で構わないだろう。
皇一副生徒会長を中心とした駄々っ子タイプ。コイツらは駄目だ。一つに纏めておく必要がある。
その他分類に含まれないタイプ。
彼らには今後接触を持つ必要があるかも知れない。

まずは皇一副生徒会長一派の対策だ。
プロフィールによれば、彼は我が国有数の企業グループ皇財閥の御曹司。
そこで僕は父の付き添いとして皇グループのパーティーに出席、彼のご両親に接触を試みた。

「始めまして。私は私立桜泉学園中等部に所属しております、高木康太と申します。生徒会副会長であらせられる皇一先輩には常日頃大変勉強させていただいております。近頃のはじめ先輩の活躍は、一後輩として大変誇りに思っております。
しかしながら、一先輩は将来背負うべき皇グループ関連の案件はまだされていないとか、これは大変勿体無い。
先輩も年頃の青年です。直接的に言われれば反発し、心にもない反抗をするやもしれません。
そこでまずは、グループ関連企業の案件から手を着けて頂くと言うのはいかがでしょう。
一先輩御一人ではなく、彼を慕う御仲間と一緒にと学園を通じ依頼すれば、自然な形で皇グループの顔となって行かれるのではないでしょうか。」
マネジメント部の調査によれば、皇一の両親は大変自尊心が高く、かつ彼を溺愛しているとか。
効果は覿面てきめん、その場で直ぐに関連企業のイメージキャラクターとして採用が決定。私立桜泉学園へ、"皇一と愉快な仲間たち"への依頼が行われた。
後ろにいた父さんが引きった顔をしていたけど、僕の親友はこんなもんじや無いからね?

「うん分かった。何か変わったことが有ったら教えてくれる?」

「Yes,my lord」

如月さんは相変わらず如月さんだわ。
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