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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第72話 進撃のひろし様 (2) (side:高木康太)

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「ねえ、ひろし君は休みの日とかどうしてるの?私は今週のお休みにね…」
「ひろし君、私クッキー焼いて来たんだけど、一つどうかな?私お料理が…」
「あの、ひろし様?わたくしと写真を一枚お願いしたいのですがよろしいかしら?それとよろしければ今度の日曜日、わたくしのお屋敷で…」
「何よあんた抜け駆けしようとしてんじゃないわよ、ひろし君、私と一緒よね…」

うゎ、やはり間近で見ると迫力が違う。
これがひろし君現象、改めて見るとそのすさまじさが分かる。
小学校一年生の時に親友の所に避難してきた男子が親友に泣きながら感謝していたけど、分かる気がする。懐かしい。
このクラスの男子生徒はと言うと、かなり困惑してるな。
彼らは今まで注目される側だったから、傍から眺めるという経験は初めてなのかもしれない。

あ、信者が介入した。
小学校の時の告白イベントの覇者、三好久美子さん。「ひろし君を見守る会」の発起人にして「ひろし君公認♡ I Love 私のひろし様」って情報発信サイトの管理人。
彼女の上手い所は自分が会長の座につかなかったところ。この街の誰もが認め尊敬できる人物にその座を譲った点だよな。
まさか僕もそこに駄菓子屋のおばちゃんを座らせるとは思わなかった。
彼女なら誰も文句言えない、実績が違う。しかも人物的に安全。(性的に)
三好久美子さん、侮れない。

これからの生活で”ひろし様”を制御するには、彼女は外せないキーパーソン。
ここは僕も仕掛けるとしますか。

僕は立ち上がると、姿勢を意識しつつ軽く笑みを浮かべ、ひろし君の席へと近づいた。
「おはようひろし君、三好さんもおはよう。
二人も無事Aクラスに成ったんだね、僕も”同じ桜町小出身者”として誇らしいよ。」

よし、二人に”同郷の出身”と言う意識を植え付けられた。

「僕も同じ小学校だったから知ってるんだけど、ひろし君ってすべての女性が心惹かれる程の魅力の持ち主じゃない?
今はまだ朝のHR前だからそうでもないけど、これが昼休みになったら上級生もやってくるだろうし、この程度じゃすまないと思うんだよね。」

ゆっくり周りを見渡し肩をすくめる。

「そこで提案なんだけど、二人は特別ラウンジって知ってる?」

ここで二人は初めて興味を持ったようで、こちらの目を見た。
ここが勝負どころか。

「この学校には特別ラウンジって言う生徒が使えるサロンのような場所があるんだって。そこは申請して許可が下りれば大勢の人間でも使えるところらしいよ。
食事も出来るし、飲み物も用意されている。
新入生の二人が知らないのも無理は無いよ、この場所の事が知らされるのは最初の中間考査の前だから。女子生徒により頑張ってもらうための起爆剤にするつもりらしいよ。」

女子生徒がココの許可を取るのが大変。成績上位に入らないと下りないらしい。
男子が使うにもA・Bクラス限定だそうだ。
僕はゆっくりとジャケットの内ポケットから一枚のカードを取り出す。

「これがそのラウンジの許可証。
ひろし君がいつでも使えるようにひろし君名義にしておいたよ。
本当は新入生が使えるようになるのは来月なんだけど、ひろし君なら特別にって。
それでこのカードなんだけど管理者が必要なんだって。
勝手かもしれないけど同じ桜町小学校のよしみで三好さんにさせて貰ったんだ。
本当にごめんね。
でもお願いできないかな?」

突然の話にびっくりしている様だけど、ひろし君ニヤケ顔が隠せてないよ。
彼って特別扱い好きだからね。
三好さんも”強引に引き受けさせられた”って形だから周りからの妬みも買わ無いだろうしね。

「じゃあこれ、三好さんお願いね。良かったら今日の昼休みにでも見に行ってきたら?僕は写真でしか知らないけどすごく綺麗だったし、気に入ると思うよ。」

三好さんにカードを渡して僕の仕事は終了。
あとは昼休みを待つばかり。

(昼休み)

伽藍とした教室。
よし、計画通り。教室入り口に”ひろし君はラウンジの見学に行っています。”って張り紙張っておいたから上級生はみんなそちらに向かってるし完璧。廊下の女子もまばらだし、これで静かな休み時間が過ごせるぞ。
ま、副作用として男子生徒がおたおたしているけど、知った事ではありません♪
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