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第一章 男女比世界へようこそ
第53話 女達の闘い
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始まったな、私立中学校受験。
ん?誤魔化すな?
英雄お姉さんはどうした?
あ~、まぁ、何って言うか…。
出掛けたりしたよ、「上野原国立博物館 "埴輪からみる古代の生活展"」。
一緒に行った木村君が意外とテンション高かったな~。
"ご主人様、流石の博識でございます。"って西城さんご満悦。
月子さん(そう言わないと超不機嫌)がやたら詳しくて軽く引いたけど。
「君はあれ」って言われても、嬉しく無いから。
それにクリスマスプレゼントが埴輪のぬいぐるみ(サボテン見たいな奴)って。俺、あんなに口開けてポカーンとして無いからね!
西城さん、なぜ吹き出したし。
"ツボって無理"ってどう言うこと?
此の件には余り触れないで置いて、割りとダメージ大きいので。
其よりも受験ですよ!
桜泉学園の試験ってまだ先だよね?
お試し受験?
本命の前に場慣らし的に受けると。実力試しにかなり良い所も受けてると。なるほどなるほど、それなら良い感じに本番を迎えられるんじゃない?
試験は水物だから、準備にし過ぎって事もないでしょ。
なんやかんや言っても、頑張ってる姿をずっと見てきたからね~。
六年生の男子、集めてくれる?
ちょっと校長先生の所に行こうか?
(side: 木村菜々子)
「そう言う事でしたら分かりました。
各クラスの先生方とひろし君には、私の方からお願いしておきましょう。」
「「「校長先生、よろしくお願いします。」」」
「それにしても、…」
私は先ほど"六年生男子一同"から提出された「受験対策と激励会の提案書」に目を向けた。
教師生活も早30年少々。これまで沢山の生徒を見てきました。中には目を引く生徒も何人か見られました。
ですが、そんな教師人生の中でも、此の六年間は格別の輝きを放っています。
これまでの教育現場では、"如何に男子生徒を守るのか"が重要視されて来ました。女子生徒をどう指導するのか、暴走を起こさない為には何が必要か。これは未だに試行錯誤が繰り返される、現代教育最大の問題です。
しかしながら、我が校では六年前より、他校には見られない状況が多々見受けられる様になりました。
「ひろし君現象」
この一連の事態は、その中心人物である男子生徒"ひろし君"の名を取り、その様に呼ばれる様になりました。
これは県教育委員会の報告書の中で、正式名として使われています。
「彼は全てを魅了する」
これが誰の言葉だったか。
その姿が、その仕草が、その声音が。
全女子生徒、全保護者、全教職員。
彼は文字通り、全ての"女"を魅了しました。
私は戦慄しました。
"我が校が崩壊する"
しかし、事態は想像の斜め上を行きました。
彼は彼に群がる全ての女性を、その才覚で完全に制御してみせたのです。
わずか六才の子どもが、昨日まで幼稚園に通っていた幼子が。女子生徒だけでも600名以上の人間を、意図も容易く支配して見せたのです。
"皇帝"
私の中の何かが、音を立てて崩れて行くのが分かりました。
其からは全てが変わりました。
女子生徒の執拗な干渉から解放された男子生徒たちは、その自由を謳歌するかの様に、校庭に飛び出し力の限り走り回りました。その光景に触発され、これまで自分の殻に閉じ籠っていた生徒たちもまた、彼らと共に走り始めました。
男子生徒たちが心から笑い、遊び、共に学び合う。これまで多くの教育者が追い求めた理想が、彼が入学した僅か三ヶ月の内に、現実のモノになっていたのでした。
此の理想郷を決して壊させはしない。
その為にはあらゆる事をしよう。それが私の使命になりました。
その後もひろし君を巡る騒動は、大なり小なり発生し続けました。私はその都度奔走し、事態の終息に務めました。
その甲斐もあり、我が校は他に類を見ない、「奇跡の学校」と呼ばれるまでになりました。
一人の生徒とそれを陰ながら支える教職員の起こした"軌跡"。
今の今まで、私はその事を疑ってはいませんでした。
先ほどの彼等を見るまでは…
我が校の代名詞とも言える"鬼ごっこ"を始め、牽引してきたのは誰か…
男子生徒たちの集団登校を指導し、地域ボランティアによる見守り運動を提案したのは…
「ひろし君性教育事件」を最小限の被害に納めたのは…
「ワンパン事件」の被害者を受け入れ、彼の回復に尽力したのは…
そして今、私立中学校入学試験を迎える女子生徒たちに最大のエールを送ろうとしているのは…
ひろし君は理想でした。希望でした。光でした。
その輝きに、眩しさに
かつて友人が言っていました
「確かにひろし君は規格外だ。
その光で全ての女性を照すだろう。
だけど、その陰で奔走する奴がいる。
あんたも何時か気が付く時が来るかもしれないよ。」
その時は遠回しに慰めてくれているものと思っていました。
「私は今まで何を見ていたのでしょう。」
今思えば、私が仕事に疲れ潰れそうだった時、最初に手を差し伸べてくれたのも"彼"でしたね。
「これは大変な仕事に成りましたね。」
先ほどの提案書に目を通し、以降の指示を考えるのでした。
ん?誤魔化すな?
英雄お姉さんはどうした?
あ~、まぁ、何って言うか…。
出掛けたりしたよ、「上野原国立博物館 "埴輪からみる古代の生活展"」。
一緒に行った木村君が意外とテンション高かったな~。
"ご主人様、流石の博識でございます。"って西城さんご満悦。
月子さん(そう言わないと超不機嫌)がやたら詳しくて軽く引いたけど。
「君はあれ」って言われても、嬉しく無いから。
それにクリスマスプレゼントが埴輪のぬいぐるみ(サボテン見たいな奴)って。俺、あんなに口開けてポカーンとして無いからね!
西城さん、なぜ吹き出したし。
"ツボって無理"ってどう言うこと?
此の件には余り触れないで置いて、割りとダメージ大きいので。
其よりも受験ですよ!
桜泉学園の試験ってまだ先だよね?
お試し受験?
本命の前に場慣らし的に受けると。実力試しにかなり良い所も受けてると。なるほどなるほど、それなら良い感じに本番を迎えられるんじゃない?
試験は水物だから、準備にし過ぎって事もないでしょ。
なんやかんや言っても、頑張ってる姿をずっと見てきたからね~。
六年生の男子、集めてくれる?
ちょっと校長先生の所に行こうか?
(side: 木村菜々子)
「そう言う事でしたら分かりました。
各クラスの先生方とひろし君には、私の方からお願いしておきましょう。」
「「「校長先生、よろしくお願いします。」」」
「それにしても、…」
私は先ほど"六年生男子一同"から提出された「受験対策と激励会の提案書」に目を向けた。
教師生活も早30年少々。これまで沢山の生徒を見てきました。中には目を引く生徒も何人か見られました。
ですが、そんな教師人生の中でも、此の六年間は格別の輝きを放っています。
これまでの教育現場では、"如何に男子生徒を守るのか"が重要視されて来ました。女子生徒をどう指導するのか、暴走を起こさない為には何が必要か。これは未だに試行錯誤が繰り返される、現代教育最大の問題です。
しかしながら、我が校では六年前より、他校には見られない状況が多々見受けられる様になりました。
「ひろし君現象」
この一連の事態は、その中心人物である男子生徒"ひろし君"の名を取り、その様に呼ばれる様になりました。
これは県教育委員会の報告書の中で、正式名として使われています。
「彼は全てを魅了する」
これが誰の言葉だったか。
その姿が、その仕草が、その声音が。
全女子生徒、全保護者、全教職員。
彼は文字通り、全ての"女"を魅了しました。
私は戦慄しました。
"我が校が崩壊する"
しかし、事態は想像の斜め上を行きました。
彼は彼に群がる全ての女性を、その才覚で完全に制御してみせたのです。
わずか六才の子どもが、昨日まで幼稚園に通っていた幼子が。女子生徒だけでも600名以上の人間を、意図も容易く支配して見せたのです。
"皇帝"
私の中の何かが、音を立てて崩れて行くのが分かりました。
其からは全てが変わりました。
女子生徒の執拗な干渉から解放された男子生徒たちは、その自由を謳歌するかの様に、校庭に飛び出し力の限り走り回りました。その光景に触発され、これまで自分の殻に閉じ籠っていた生徒たちもまた、彼らと共に走り始めました。
男子生徒たちが心から笑い、遊び、共に学び合う。これまで多くの教育者が追い求めた理想が、彼が入学した僅か三ヶ月の内に、現実のモノになっていたのでした。
此の理想郷を決して壊させはしない。
その為にはあらゆる事をしよう。それが私の使命になりました。
その後もひろし君を巡る騒動は、大なり小なり発生し続けました。私はその都度奔走し、事態の終息に務めました。
その甲斐もあり、我が校は他に類を見ない、「奇跡の学校」と呼ばれるまでになりました。
一人の生徒とそれを陰ながら支える教職員の起こした"軌跡"。
今の今まで、私はその事を疑ってはいませんでした。
先ほどの彼等を見るまでは…
我が校の代名詞とも言える"鬼ごっこ"を始め、牽引してきたのは誰か…
男子生徒たちの集団登校を指導し、地域ボランティアによる見守り運動を提案したのは…
「ひろし君性教育事件」を最小限の被害に納めたのは…
「ワンパン事件」の被害者を受け入れ、彼の回復に尽力したのは…
そして今、私立中学校入学試験を迎える女子生徒たちに最大のエールを送ろうとしているのは…
ひろし君は理想でした。希望でした。光でした。
その輝きに、眩しさに
かつて友人が言っていました
「確かにひろし君は規格外だ。
その光で全ての女性を照すだろう。
だけど、その陰で奔走する奴がいる。
あんたも何時か気が付く時が来るかもしれないよ。」
その時は遠回しに慰めてくれているものと思っていました。
「私は今まで何を見ていたのでしょう。」
今思えば、私が仕事に疲れ潰れそうだった時、最初に手を差し伸べてくれたのも"彼"でしたね。
「これは大変な仕事に成りましたね。」
先ほどの提案書に目を通し、以降の指示を考えるのでした。
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