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第一章 男女比世界へようこそ
第16話 俺様の名は“木村英雄”だ (2) (side:木村英雄)
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入院初日は散々だった。
固いベットに合わない枕、病院食はなんであんなに不味いんだ。
しかし、ナースに文句を言おうも、なぜか口が開かない。
悪態をつこうとすると小刻みに手が震え、動悸が荒くなる。
俺は本格的に病気になってしまったんだろうか?
翌日、昨日の鈴木医師がまた診察にやってきた。
鈴木医師のゆったりとした話し方を聞いているとなぜか心が安らぐ。
意味が解らない。
「木村さん~。昨日はよく眠れましたか~♪
今日はちょっとしたゲームをします~。
簡単な質問をしますから、それに答えてくださいね~。」
「では質問です~。あなたのお名前は何ですか?
フルネームでお答えください~。」
俺の名前?本当に簡単な質問だ。
「俺の名前は”木村英雄”だ。」
「では年齢はいくつですか~?」
「11歳」
「ご家族を教えてください~。」
「母と姉が二人いる。母の名は木村紗枝、姉は上が陽子、下が月子だ。」
「学年は何年生ですか~?」
「小学6年生だ。」
「はい結構です。今日は午後から面会が許可されましたんで、ご家族がいらっしゃると思いますよ~。かなり心配されていましたから、元気なお顔を見せてあげてくださいね~。」
まあ、仕方がない。あいつらは俺がいないと、どうしようもないからな。
「これで診察はおしまいです~。何かありましたら、ナースに声をかけてくださいね~。」
なんだ、もう終わりか。
鈴木医師の去る姿に一抹の寂しさを感じたが、やることもないのでひと眠りするのだった。
(side:鈴木恵子)
”木村英雄”君の午前の診察は何事もなく終える事が出来た。
男性の診察というものはいつも緊張する。細心の注意を払っていても、ちょっとした仕草や言動、態度いかんによってヒステリーを起こすからだ。
今回の患者”木村英雄”君も、典型的な俺様系わがまま男子だった。
男性の少ない世の中で、複数の女性から蝶よ花よと育てられ、何をやっても全肯定。そんな環境にあればわがまま放題になるのは当たり前だ。
目を覚ました当初の木村君は、そんな”俺様系わがまま男子”全開であった。
そんな木村君に変化があったのは、問診で病院に運ばれる前後の事を質問した時だった。
急に顔色が悪くなり、身体の震え、激しい息遣い、心的ストレスによる過呼吸症状に陥ったのだ。
あの時は本当に焦った。
呼吸を落ち着かせ、リラックスさせるのが精一杯であった。
それこそ赤子や幼子に話しかけるようにして。
その甲斐もあってか、木村君の状態は安定したものになっていった。
この症状は女性に性的暴行を受けたものとも違う。どちらかというと暴力犯罪を受けた女性が発症するPTSD(心的外傷後ストレス障害)に似ている。
私は担当ナースの西城さんに目配せをして役割分担を決めた。
所謂"優しい先生、従順ナース"と言う奴だ。女性に極度の不信感をいだく、引き籠り男性のリハビリ等に使われる手法だが、精神に損傷が診られる今回の様な事例には有効だろう。
記憶の欠損等、確認しなければならない事象は有るが、細心の注意を持って、治療に取り組もう。
固いベットに合わない枕、病院食はなんであんなに不味いんだ。
しかし、ナースに文句を言おうも、なぜか口が開かない。
悪態をつこうとすると小刻みに手が震え、動悸が荒くなる。
俺は本格的に病気になってしまったんだろうか?
翌日、昨日の鈴木医師がまた診察にやってきた。
鈴木医師のゆったりとした話し方を聞いているとなぜか心が安らぐ。
意味が解らない。
「木村さん~。昨日はよく眠れましたか~♪
今日はちょっとしたゲームをします~。
簡単な質問をしますから、それに答えてくださいね~。」
「では質問です~。あなたのお名前は何ですか?
フルネームでお答えください~。」
俺の名前?本当に簡単な質問だ。
「俺の名前は”木村英雄”だ。」
「では年齢はいくつですか~?」
「11歳」
「ご家族を教えてください~。」
「母と姉が二人いる。母の名は木村紗枝、姉は上が陽子、下が月子だ。」
「学年は何年生ですか~?」
「小学6年生だ。」
「はい結構です。今日は午後から面会が許可されましたんで、ご家族がいらっしゃると思いますよ~。かなり心配されていましたから、元気なお顔を見せてあげてくださいね~。」
まあ、仕方がない。あいつらは俺がいないと、どうしようもないからな。
「これで診察はおしまいです~。何かありましたら、ナースに声をかけてくださいね~。」
なんだ、もう終わりか。
鈴木医師の去る姿に一抹の寂しさを感じたが、やることもないのでひと眠りするのだった。
(side:鈴木恵子)
”木村英雄”君の午前の診察は何事もなく終える事が出来た。
男性の診察というものはいつも緊張する。細心の注意を払っていても、ちょっとした仕草や言動、態度いかんによってヒステリーを起こすからだ。
今回の患者”木村英雄”君も、典型的な俺様系わがまま男子だった。
男性の少ない世の中で、複数の女性から蝶よ花よと育てられ、何をやっても全肯定。そんな環境にあればわがまま放題になるのは当たり前だ。
目を覚ました当初の木村君は、そんな”俺様系わがまま男子”全開であった。
そんな木村君に変化があったのは、問診で病院に運ばれる前後の事を質問した時だった。
急に顔色が悪くなり、身体の震え、激しい息遣い、心的ストレスによる過呼吸症状に陥ったのだ。
あの時は本当に焦った。
呼吸を落ち着かせ、リラックスさせるのが精一杯であった。
それこそ赤子や幼子に話しかけるようにして。
その甲斐もあってか、木村君の状態は安定したものになっていった。
この症状は女性に性的暴行を受けたものとも違う。どちらかというと暴力犯罪を受けた女性が発症するPTSD(心的外傷後ストレス障害)に似ている。
私は担当ナースの西城さんに目配せをして役割分担を決めた。
所謂"優しい先生、従順ナース"と言う奴だ。女性に極度の不信感をいだく、引き籠り男性のリハビリ等に使われる手法だが、精神に損傷が診られる今回の様な事例には有効だろう。
記憶の欠損等、確認しなければならない事象は有るが、細心の注意を持って、治療に取り組もう。
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