上 下
16 / 525
第一章 男女比世界へようこそ

第16話 俺様の名は“木村英雄”だ (2) (side:木村英雄)

しおりを挟む
入院初日は散々だった。
固いベットに合わない枕、病院食はなんであんなに不味いんだ。
しかし、ナースに文句を言おうも、なぜか口が開かない。
悪態をつこうとすると小刻みに手が震え、動悸が荒くなる。
俺は本格的に病気になってしまったんだろうか?

翌日、昨日の鈴木医師がまた診察にやってきた。
鈴木医師のゆったりとした話し方を聞いているとなぜか心が安らぐ。
意味が解らない。

「木村さん~。昨日はよく眠れましたか~♪
今日はちょっとしたゲームをします~。
簡単な質問をしますから、それに答えてくださいね~。」
「では質問です~。あなたのお名前は何ですか?
フルネームでお答えください~。」

俺の名前?本当に簡単な質問だ。
「俺の名前は”木村英雄”だ。」

「では年齢はいくつですか~?」
「11歳」

「ご家族を教えてください~。」
「母と姉が二人いる。母の名は木村紗枝、姉は上が陽子、下が月子だ。」

「学年は何年生ですか~?」
「小学6年生だ。」

「はい結構です。今日は午後から面会が許可されましたんで、ご家族がいらっしゃると思いますよ~。かなり心配されていましたから、元気なお顔を見せてあげてくださいね~。」
まあ、仕方がない。あいつらは俺がいないと、どうしようもないからな。

「これで診察はおしまいです~。何かありましたら、ナースに声をかけてくださいね~。」
なんだ、もう終わりか。
鈴木医師の去る姿に一抹の寂しさを感じたが、やることもないのでひと眠りするのだった。


(side:鈴木恵子)

”木村英雄”君の午前の診察は何事もなく終える事が出来た。
男性の診察というものはいつも緊張する。細心の注意を払っていても、ちょっとした仕草や言動、態度いかんによってヒステリーを起こすからだ。
今回の患者”木村英雄”君も、典型的な俺様系わがまま男子だった。
男性の少ない世の中で、複数の女性から蝶よ花よと育てられ、何をやっても全肯定。そんな環境にあればわがまま放題になるのは当たり前だ。
目を覚ました当初の木村君は、そんな”俺様系わがまま男子”全開であった。
そんな木村君に変化があったのは、問診で病院に運ばれる前後の事を質問した時だった。
急に顔色が悪くなり、身体の震え、激しい息遣い、心的ストレスによる過呼吸症状に陥ったのだ。
あの時は本当に焦った。
呼吸を落ち着かせ、リラックスさせるのが精一杯であった。
それこそ赤子や幼子に話しかけるようにして。

その甲斐もあってか、木村君の状態は安定したものになっていった。
この症状は女性に性的暴行を受けたものとも違う。どちらかというと暴力犯罪を受けた女性が発症するPTSD(心的外傷後ストレス障害)に似ている。
私は担当ナースの西城さんに目配せをして役割分担を決めた。
所謂"優しい先生、従順ナース"と言う奴だ。女性に極度の不信感をいだく、引き籠り男性のリハビリ等に使われる手法だが、精神に損傷が診られる今回の様な事例には有効だろう。

記憶の欠損等、確認しなければならない事象は有るが、細心の注意を持って、治療に取り組もう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

男女比:1:450のおかしな世界で陽キャになることを夢見る

卯ノ花
恋愛
妙なことから男女比がおかしな世界に転生した主人公が、元いた世界でやりたかったことをやるお話。 〔お知らせ〕 ※この作品は、毎日更新です。 ※1 〜 3話まで初回投稿。次回から7時10分から更新 ※お気に入り登録してくれたら励みになりますのでよろしくお願いします。 ただいま作成中

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

処理中です...