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こんにちは、転生勇者様
第15話 転生勇者、村の事を知る
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「お父さん、お母さんがご飯だって。」
「おう、ありがとうな。」
作業の手を止め、息子の声に顔をあげる父トーマス。汚れた手を手拭いで拭き取り、作業台から重い腰を上げる。
「今日のおかずはね、僕が仕留めたホーンラビットの香草焼きなんだよ。お母さんが初めての狩りのお祝いだって。」
そう言い誇らしげに話す息子に思わず笑みがこぼれる。
「ボビー先生には迷惑は掛けなかったか?」
いくら指導者が引率に付くとはいえ初めての森での狩り、付き添いの大人は大変であっただろうと聞いてみれば、よくぞ聞いて下さいましたと言わんばかりに瞳を輝かせるジェイク。
「ボビー師匠は凄いんだよ、大量のホーンラビット相手でもズバーンのババババーンでね、それでねそれでね。」
興奮し話しが収まらない息子ジェイクの様子に、“ボビー先生、お疲れ様でした。”と感謝の念を送る父トーマスなのでありました。
「そう、三人でホーンラビットを倒したの。初めての狩りでホーンラビットを相手に逃げ出すどころか怪我ひとつしないで倒すなんて、やっぱりウチのジェイクちゃんは天才よ~♪ジェイクちゃん大好き❤️」
ジェイクを抱きしめ頬擦りをする母マリア、そんな妻に俺もスリスリしたいと両手をわきわきさせる父トーマス。どっちもどっちの親バカである。
「それでね、ボビー師匠から今度からお父さんに貰った宝物を使って良いって許可が出たんだ。お父さん、僕大事に使うね♪」
そう言い嬉しそうに笑う息子の声に顔をほころばせる父トーマス。
「あの木刀はな、お父さんのお父さんがそのまたお父さんに子供の頃貰った大事な品なんだよ。お前にとっては曾祖父にあたる人かな、お父さんも会ったことはなかったからどんな人かは知らないけど、父曰く有名な高ランク冒険者だったらしい。ただその分女性癖も悪くてな、父はそんな大勢の女性に生ませた子供の一人だったとか。だが流石高ランク冒険者、父が成人を迎える十五歳までしっかり仕送りはしてくれていたらしい。あの木刀はそんな曾祖父が送って寄越したものらしい。嘘か本当かは知らないけどな。」
どこか昔を懐かしむ父トーマスに、“あれってやっぱり伝説の武器なんじゃ!?”と不治の病が鎌首をもたげる少年ジェイク、そんな二人を“男の人って何時まで経っても子供よね~”と微笑ましそうに見守る母マリアなのでした。
「そうだ、お前も魔物狩りデビューをしたからにはこの村周辺の魔物のことを知らないといけないな。」
「それなら知ってるよ、村の中ではスライムとビッグワーム、たまにビッグクローって言う鳥の魔物、森の中だとボアとビッグボア、それとホーンラビット、領都までの街道沿いだとグラスウルフの草原にオークの森でしょ?ボビー師匠の所で教わった。」
「そうか、よく勉強してるな。」
息子の柔らかい髪をくしゃくしゃっと撫で目を細める父トーマス、ジェイクはそんな父に嬉しそうにはにかむのだった。
「この辺は辺境ではあるが比較的安全と言われている地域でな、ただ主要街道からはかなり外れているのとこれと言った産業もない為発展とは程遠いがな。森をずっと進んだ山の裾野辺りまでいけば危険な魔物も出ると聞くが、わざわざそこまで行く物好きもいないから本当かどうかは分からないな。お父さんが行ったことのあるのは森の奥の老木のある辺りまでかな、あそこは回りが開けているから休むのにはいいところだったぞ。ま、何にも無い村ではあるかな。」
父トーマス曰く、この村は村長の家の三代前の先祖が切り開いた開拓村であったとのこと。今の様に定期的に行商が来る様になったのは現在の村長が婿に来てかららしい。村長はああ見えて優秀なんだぞ?と言う父に人は見た目によらないとでっぷり腹の村長の姿を思い出すジェイク君なのでありました。
「ジェイク君、随分楽しそうだね。」
ボビー師匠の訓練場で愛剣(木刀)を布でフキフキしながらその美しさにうっとりしていると、幼馴染みのジミー君が話し掛けてきた。お、ジミー君、君もこの宝剣のよさが分かりますか?良かったら握って見ます?中々素晴らしい握り心地ですのよ?
ジミー君が引き攣った顔をして“ウチのお兄ちゃんみたいだよ?”とか仰ってますが、あの素晴らしいケビンお兄ちゃんの様だと評すると言う事は褒め言葉なんでしょう。
次のホーンラビット戦ではこの宝剣が火を吹くぜ!木刀を掲げ不敵に嗤う俺に何故か慈愛の籠った眼差しを向ける幼馴染み達なのでありました。
「皆集まっとるな、これより訓練を開始する。ジェイクは今日より自身の木刀の使用を許可する。しっかり励むように。」
「はい、ボビー師匠。次のホーンラビット戦ではこの宝剣で敵を殲滅して見せます。」
興奮し鼻の穴を膨らますジェイク。対して“なんの事?”と言った顔のボビー師匠。
「あぁ、ジェイクよ、ホーンラビットを相手にするのにその木刀は使えんぞ?と言うかグラスウルフくらいまでであれば、近寄ることも出来んからな?お主が散々“宝剣”と呼んでおったからてっきり知っておると思ったが、どうやら知らなかったようじゃな。
お主の持つその木刀、素材はおそらくマッドトレントの物であろう。マッドトレント“は人食い”の異名を持つ厄介な魔物じゃが人を集める罠として魔物の嫌う匂いを発しておるらしい。森に忽然と現れる安全地帯、近寄って油断した所でと言ったところかの。それは素材となっても変わらん、マッドトレントは魔物避けのアイテムとして貴族の馬車やお守りとして広く使われておるとの事だったか。ただしかなり高価な品での、その木刀も買うとなったら庶民では手が出ん。大体マッドトレント自体希少ではあるからの。高ランク冒険者の伝なりかなりの幸運が必要じゃて。」
「えっと、それはつまり。」
「この村での身の安全は保証されたようなもんじゃ、大事にしなさい。」
そう言いにこやかに笑うボビー師匠、目の前には膝を付きガックリうなだれる弟子とそれを慰める兄弟弟子達の姿があるのでした。
―――――――――――――
“シャクシャクシャクシャク”
木漏れ日の差し込む山深い森、この地で繁殖する雑食の魔物ホーンラビットは、日中は若草を食み夜は仲間達と一塊となって夜を明かす生態を持つ。基本的に集団行動を取る魔物であり、個よりも全体を優先することで種族として生き残って来た。その行動本能は遥かに格上のブラックウルフすら退けると言われている。
本当、見た目だけは可愛いんだけどね~、下手に手を出そうものなら血の洗礼は免れないって言うね、クワバラクワバラ。
俺はそんな恐ろしい生物“森の悪魔”が食事している林をすり抜けてこの森の更に先を目指し移動していた。えっ、お前は襲われないのか?フッフッフッ、この俺の存在感の無さを嘗めないで頂きたい。常日頃から足音を消し、村の中ではアホな村長の息子から逃げ続けること幾星霜、今では村長宅でご相談をしていても気付かれないって言うね。“ヘンリーの所のケビン?あぁ、そんな奴もいたっけな。”ってレベルの認識を実現致しました。
イヤイヤイヤ、お前村で目立ち捲ってるじゃんって思うでしょ?あの馬鹿人の事を見下して支配者面してるから村人の事把握出来てないでやんの。なんであの出来る村長の息子があんなんなのかね、村長の奥さんが原因だってのは確定的なんだけど、奥さん勇者病が再発して冒険に出掛けちゃったからな~。自分の村を婿に押し付けて自分は冒険者って、やっぱ<真性>って無茶苦茶。年に一度~二度帰って来るらしいんだけど、俺あんまり知らないんだよね。
ま、俺の目標は命大事に。魔物の群れが真横をスルーする路傍の石、元冒険者のお爺さんから暗殺者のスキルでも持ってるのかって疑われたレベル迄には成りましたとも。全ては幼少の頃からの努力の賜物なんだけどね。
お、着いた着いた。本日の目的地、”森の御神木”。この大樹の何が凄いかって動くんですよこいつ。ザ・ファンタジー、残念ながら顔や口はないんですけどね。回りに魔物の骨が落ちてる辺り、どうやってか補食してはいるみたいなんですが。
でも基本的に襲って来ない、なんかよく分からない奴です。俺がこいつを見つけたのは七歳の頃、それから気配殺しの訓練がてら時々見に来ているんですけどね、この辺娯楽も無いですし、動く木って見ていて飽きませんし。
それで二年ほど前から質の良い肥料の処分をですね~。いや、例の大福の餌、ポーションワームのミニプール。あれの使用済み残土の処分地が・・・。最初のポーションワームの処分の際、その残土を畑に混ぜ混んだ所お野菜達があり得ない成育を見せまして。あの処分は大変だったよな~、殆ど大福が食べてくれたからなんとか成ったけど、あいつの消化器官どうなってるんだろう?で、その二の舞を起こす訳にもいかずさりとてその辺に撒くわけにもいかない危険物。(即草むら案件)
悩んだ末にたどり着いたのがこの御神木。こいつ、動くだけあってあれほどのブツを撒いても変化無し。回りの土地も草むらに成ってない辺り全部吸収していると思われ。最近じゃ俺が近付くと枝葉をワサワサ動かす様になったもんな~。本当に異世界って不思議が一杯。
お~い、御神木様~、今日も肥料を持ってきたぞ~。そう言い背負子に積んだ麻袋からブツを取り出し周辺の地面にばら蒔きます。暫くするとグニョグニョ地面が蠢いて土地がたがやかされた様な状態に。オジギソウとかハエトリグサとか動く植物ってのはあるけど、ここまで顕著に動く奴なんてまず見れないもんな、これを見れただけでも来た甲斐があります。俺がその光景に満足して帰ろうとすると、“ドサッ”
ん?なんか太い枝が落ちてきたんだけど?しかも折れたって感じの切り口じゃないし、どちらかと言えば切り離した?蜥蜴の尻尾切りみたいな感じ?もしかしてこれって肥料のお礼とか?
“ワサワサワサ”
俺の問い掛けに揺れて答える御神木様。ありがたく持って帰ってってデカイわ、背負子じゃ持ち運べんわ。俺は魔力を纏わせた片手斧(木札資金で買いました。)でこの太い枝を幾つかに分割、御神木様の根元に積み上げ運び易そうな一塊を持ち帰る事に。
そんじゃまた来月辺りに来るからそれ預かっておいてね。そう御神木様に声を掛け太い枝(分割済み)を担いで戻る俺氏。御神木様はワサワサと枝葉を揺すりながらそんな俺を見送ってくれるのでした。
「おう、ありがとうな。」
作業の手を止め、息子の声に顔をあげる父トーマス。汚れた手を手拭いで拭き取り、作業台から重い腰を上げる。
「今日のおかずはね、僕が仕留めたホーンラビットの香草焼きなんだよ。お母さんが初めての狩りのお祝いだって。」
そう言い誇らしげに話す息子に思わず笑みがこぼれる。
「ボビー先生には迷惑は掛けなかったか?」
いくら指導者が引率に付くとはいえ初めての森での狩り、付き添いの大人は大変であっただろうと聞いてみれば、よくぞ聞いて下さいましたと言わんばかりに瞳を輝かせるジェイク。
「ボビー師匠は凄いんだよ、大量のホーンラビット相手でもズバーンのババババーンでね、それでねそれでね。」
興奮し話しが収まらない息子ジェイクの様子に、“ボビー先生、お疲れ様でした。”と感謝の念を送る父トーマスなのでありました。
「そう、三人でホーンラビットを倒したの。初めての狩りでホーンラビットを相手に逃げ出すどころか怪我ひとつしないで倒すなんて、やっぱりウチのジェイクちゃんは天才よ~♪ジェイクちゃん大好き❤️」
ジェイクを抱きしめ頬擦りをする母マリア、そんな妻に俺もスリスリしたいと両手をわきわきさせる父トーマス。どっちもどっちの親バカである。
「それでね、ボビー師匠から今度からお父さんに貰った宝物を使って良いって許可が出たんだ。お父さん、僕大事に使うね♪」
そう言い嬉しそうに笑う息子の声に顔をほころばせる父トーマス。
「あの木刀はな、お父さんのお父さんがそのまたお父さんに子供の頃貰った大事な品なんだよ。お前にとっては曾祖父にあたる人かな、お父さんも会ったことはなかったからどんな人かは知らないけど、父曰く有名な高ランク冒険者だったらしい。ただその分女性癖も悪くてな、父はそんな大勢の女性に生ませた子供の一人だったとか。だが流石高ランク冒険者、父が成人を迎える十五歳までしっかり仕送りはしてくれていたらしい。あの木刀はそんな曾祖父が送って寄越したものらしい。嘘か本当かは知らないけどな。」
どこか昔を懐かしむ父トーマスに、“あれってやっぱり伝説の武器なんじゃ!?”と不治の病が鎌首をもたげる少年ジェイク、そんな二人を“男の人って何時まで経っても子供よね~”と微笑ましそうに見守る母マリアなのでした。
「そうだ、お前も魔物狩りデビューをしたからにはこの村周辺の魔物のことを知らないといけないな。」
「それなら知ってるよ、村の中ではスライムとビッグワーム、たまにビッグクローって言う鳥の魔物、森の中だとボアとビッグボア、それとホーンラビット、領都までの街道沿いだとグラスウルフの草原にオークの森でしょ?ボビー師匠の所で教わった。」
「そうか、よく勉強してるな。」
息子の柔らかい髪をくしゃくしゃっと撫で目を細める父トーマス、ジェイクはそんな父に嬉しそうにはにかむのだった。
「この辺は辺境ではあるが比較的安全と言われている地域でな、ただ主要街道からはかなり外れているのとこれと言った産業もない為発展とは程遠いがな。森をずっと進んだ山の裾野辺りまでいけば危険な魔物も出ると聞くが、わざわざそこまで行く物好きもいないから本当かどうかは分からないな。お父さんが行ったことのあるのは森の奥の老木のある辺りまでかな、あそこは回りが開けているから休むのにはいいところだったぞ。ま、何にも無い村ではあるかな。」
父トーマス曰く、この村は村長の家の三代前の先祖が切り開いた開拓村であったとのこと。今の様に定期的に行商が来る様になったのは現在の村長が婿に来てかららしい。村長はああ見えて優秀なんだぞ?と言う父に人は見た目によらないとでっぷり腹の村長の姿を思い出すジェイク君なのでありました。
「ジェイク君、随分楽しそうだね。」
ボビー師匠の訓練場で愛剣(木刀)を布でフキフキしながらその美しさにうっとりしていると、幼馴染みのジミー君が話し掛けてきた。お、ジミー君、君もこの宝剣のよさが分かりますか?良かったら握って見ます?中々素晴らしい握り心地ですのよ?
ジミー君が引き攣った顔をして“ウチのお兄ちゃんみたいだよ?”とか仰ってますが、あの素晴らしいケビンお兄ちゃんの様だと評すると言う事は褒め言葉なんでしょう。
次のホーンラビット戦ではこの宝剣が火を吹くぜ!木刀を掲げ不敵に嗤う俺に何故か慈愛の籠った眼差しを向ける幼馴染み達なのでありました。
「皆集まっとるな、これより訓練を開始する。ジェイクは今日より自身の木刀の使用を許可する。しっかり励むように。」
「はい、ボビー師匠。次のホーンラビット戦ではこの宝剣で敵を殲滅して見せます。」
興奮し鼻の穴を膨らますジェイク。対して“なんの事?”と言った顔のボビー師匠。
「あぁ、ジェイクよ、ホーンラビットを相手にするのにその木刀は使えんぞ?と言うかグラスウルフくらいまでであれば、近寄ることも出来んからな?お主が散々“宝剣”と呼んでおったからてっきり知っておると思ったが、どうやら知らなかったようじゃな。
お主の持つその木刀、素材はおそらくマッドトレントの物であろう。マッドトレント“は人食い”の異名を持つ厄介な魔物じゃが人を集める罠として魔物の嫌う匂いを発しておるらしい。森に忽然と現れる安全地帯、近寄って油断した所でと言ったところかの。それは素材となっても変わらん、マッドトレントは魔物避けのアイテムとして貴族の馬車やお守りとして広く使われておるとの事だったか。ただしかなり高価な品での、その木刀も買うとなったら庶民では手が出ん。大体マッドトレント自体希少ではあるからの。高ランク冒険者の伝なりかなりの幸運が必要じゃて。」
「えっと、それはつまり。」
「この村での身の安全は保証されたようなもんじゃ、大事にしなさい。」
そう言いにこやかに笑うボビー師匠、目の前には膝を付きガックリうなだれる弟子とそれを慰める兄弟弟子達の姿があるのでした。
―――――――――――――
“シャクシャクシャクシャク”
木漏れ日の差し込む山深い森、この地で繁殖する雑食の魔物ホーンラビットは、日中は若草を食み夜は仲間達と一塊となって夜を明かす生態を持つ。基本的に集団行動を取る魔物であり、個よりも全体を優先することで種族として生き残って来た。その行動本能は遥かに格上のブラックウルフすら退けると言われている。
本当、見た目だけは可愛いんだけどね~、下手に手を出そうものなら血の洗礼は免れないって言うね、クワバラクワバラ。
俺はそんな恐ろしい生物“森の悪魔”が食事している林をすり抜けてこの森の更に先を目指し移動していた。えっ、お前は襲われないのか?フッフッフッ、この俺の存在感の無さを嘗めないで頂きたい。常日頃から足音を消し、村の中ではアホな村長の息子から逃げ続けること幾星霜、今では村長宅でご相談をしていても気付かれないって言うね。“ヘンリーの所のケビン?あぁ、そんな奴もいたっけな。”ってレベルの認識を実現致しました。
イヤイヤイヤ、お前村で目立ち捲ってるじゃんって思うでしょ?あの馬鹿人の事を見下して支配者面してるから村人の事把握出来てないでやんの。なんであの出来る村長の息子があんなんなのかね、村長の奥さんが原因だってのは確定的なんだけど、奥さん勇者病が再発して冒険に出掛けちゃったからな~。自分の村を婿に押し付けて自分は冒険者って、やっぱ<真性>って無茶苦茶。年に一度~二度帰って来るらしいんだけど、俺あんまり知らないんだよね。
ま、俺の目標は命大事に。魔物の群れが真横をスルーする路傍の石、元冒険者のお爺さんから暗殺者のスキルでも持ってるのかって疑われたレベル迄には成りましたとも。全ては幼少の頃からの努力の賜物なんだけどね。
お、着いた着いた。本日の目的地、”森の御神木”。この大樹の何が凄いかって動くんですよこいつ。ザ・ファンタジー、残念ながら顔や口はないんですけどね。回りに魔物の骨が落ちてる辺り、どうやってか補食してはいるみたいなんですが。
でも基本的に襲って来ない、なんかよく分からない奴です。俺がこいつを見つけたのは七歳の頃、それから気配殺しの訓練がてら時々見に来ているんですけどね、この辺娯楽も無いですし、動く木って見ていて飽きませんし。
それで二年ほど前から質の良い肥料の処分をですね~。いや、例の大福の餌、ポーションワームのミニプール。あれの使用済み残土の処分地が・・・。最初のポーションワームの処分の際、その残土を畑に混ぜ混んだ所お野菜達があり得ない成育を見せまして。あの処分は大変だったよな~、殆ど大福が食べてくれたからなんとか成ったけど、あいつの消化器官どうなってるんだろう?で、その二の舞を起こす訳にもいかずさりとてその辺に撒くわけにもいかない危険物。(即草むら案件)
悩んだ末にたどり着いたのがこの御神木。こいつ、動くだけあってあれほどのブツを撒いても変化無し。回りの土地も草むらに成ってない辺り全部吸収していると思われ。最近じゃ俺が近付くと枝葉をワサワサ動かす様になったもんな~。本当に異世界って不思議が一杯。
お~い、御神木様~、今日も肥料を持ってきたぞ~。そう言い背負子に積んだ麻袋からブツを取り出し周辺の地面にばら蒔きます。暫くするとグニョグニョ地面が蠢いて土地がたがやかされた様な状態に。オジギソウとかハエトリグサとか動く植物ってのはあるけど、ここまで顕著に動く奴なんてまず見れないもんな、これを見れただけでも来た甲斐があります。俺がその光景に満足して帰ろうとすると、“ドサッ”
ん?なんか太い枝が落ちてきたんだけど?しかも折れたって感じの切り口じゃないし、どちらかと言えば切り離した?蜥蜴の尻尾切りみたいな感じ?もしかしてこれって肥料のお礼とか?
“ワサワサワサ”
俺の問い掛けに揺れて答える御神木様。ありがたく持って帰ってってデカイわ、背負子じゃ持ち運べんわ。俺は魔力を纏わせた片手斧(木札資金で買いました。)でこの太い枝を幾つかに分割、御神木様の根元に積み上げ運び易そうな一塊を持ち帰る事に。
そんじゃまた来月辺りに来るからそれ預かっておいてね。そう御神木様に声を掛け太い枝(分割済み)を担いで戻る俺氏。御神木様はワサワサと枝葉を揺すりながらそんな俺を見送ってくれるのでした。
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