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本編
故郷だった場所
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サベージの王都へ着くとそこは様変わりした場所だった。
前は人もそれなりに多くいて、物乞いなども少なく一定の生活水準を満たしていた王都が見る影もない。
「こ、これは・・・」
馬車から、見える景色に絶句する。
王都は、見るからにスラム街と化していた。一部の場所は、前のような姿を残しているがそこは貴族街だ。一般の市民が住んでいる場所はスラム街の様な寂れた様相をしている。
前は、多くの店が立ち並び子供達が走り回っていた広場は店も閉めきられ、道端で疲れた様に座っている人がチラホラいるだけで見る影もない。レオンも眉間にシワを寄せ難しそうな面持ちだ。
しばらく貴族街に入って、元に戻った風景もどこか活気がなくどんよりとしている。
流れていく街の様子に驚きつつも着いた場所は、貴族が専用の宿だった。
「王族から呼ばれているのに城へは行かないのですか?」
「あぁ。何があるからわからないからな。」
「・・・分かりましたわ。」
レオンの言葉にコクリと頷いて宿に入る。
『何が?』とは流石に聞けなかった。今は、それぞれ睨み合っていて冷戦状態とはいえ争いの真っ只中なのだ。当たり前の警戒だった。
宿に入ると、サベージの人間は誰一人としていなかった。サベージの人間でこの中にいるのはルナリアだけだろう。サベージ育ちのステラもいるが彼女は獣人なのでどちらかというと生まれはドラニアで、立派なドラニアの国民である。
レオンに「何故、宿の者がいないのですか?」と聞けば、一番効率のいい警備がコレらしい。たしかに、身元調査する手間がはかどり、獣人を差別するサベージの人間を入れるよりかはいいのだろう。
部屋の一室で、荷を解く。皇帝と国王の面会と交渉は1日だけだが、ノクスを探すという目的がある為その分荷物も多くなった。持ち運びには空間の魔石があるので問題なかったが荷ほどきとなるとステラと手分けしても時間がかかる。
(街のあの様子。あれほどとは思わなかった。どうして、ああなるまで国王は放っておいたの?それに、あの状態でドラニアやハイングルに喧嘩を売るなんて愚策にもほどがあるわ。)
「お嬢様、手が止まっておりますよ。」
ステラの呼びかけにハッとする。どうやら、先ほどの光景を見て考え込んでしまったようだ。
しかし考えても、国王の意図が分からない。何故、あそこまで放ったのかルナリアは理解ができなかった。
荷ほどきがひと段落してステラは直ぐにノクスの手がかりを探しに行くと言って出て行った。ルナリア自身も一緒に行くと言ったが思ったよりもサベージの治安が悪いこともあり「ダメです。」と一刀両断された。
(・・・ここまで来て探せないなんて)
もどかしさが更に募る。それでも、その場から出ないのは護衛が常に待機しているのもあるが、たいした戦力にならないと理解しているからだった。
「ルナ?」
ノックと共にゆっくりと扉が開かれる。
前は人もそれなりに多くいて、物乞いなども少なく一定の生活水準を満たしていた王都が見る影もない。
「こ、これは・・・」
馬車から、見える景色に絶句する。
王都は、見るからにスラム街と化していた。一部の場所は、前のような姿を残しているがそこは貴族街だ。一般の市民が住んでいる場所はスラム街の様な寂れた様相をしている。
前は、多くの店が立ち並び子供達が走り回っていた広場は店も閉めきられ、道端で疲れた様に座っている人がチラホラいるだけで見る影もない。レオンも眉間にシワを寄せ難しそうな面持ちだ。
しばらく貴族街に入って、元に戻った風景もどこか活気がなくどんよりとしている。
流れていく街の様子に驚きつつも着いた場所は、貴族が専用の宿だった。
「王族から呼ばれているのに城へは行かないのですか?」
「あぁ。何があるからわからないからな。」
「・・・分かりましたわ。」
レオンの言葉にコクリと頷いて宿に入る。
『何が?』とは流石に聞けなかった。今は、それぞれ睨み合っていて冷戦状態とはいえ争いの真っ只中なのだ。当たり前の警戒だった。
宿に入ると、サベージの人間は誰一人としていなかった。サベージの人間でこの中にいるのはルナリアだけだろう。サベージ育ちのステラもいるが彼女は獣人なのでどちらかというと生まれはドラニアで、立派なドラニアの国民である。
レオンに「何故、宿の者がいないのですか?」と聞けば、一番効率のいい警備がコレらしい。たしかに、身元調査する手間がはかどり、獣人を差別するサベージの人間を入れるよりかはいいのだろう。
部屋の一室で、荷を解く。皇帝と国王の面会と交渉は1日だけだが、ノクスを探すという目的がある為その分荷物も多くなった。持ち運びには空間の魔石があるので問題なかったが荷ほどきとなるとステラと手分けしても時間がかかる。
(街のあの様子。あれほどとは思わなかった。どうして、ああなるまで国王は放っておいたの?それに、あの状態でドラニアやハイングルに喧嘩を売るなんて愚策にもほどがあるわ。)
「お嬢様、手が止まっておりますよ。」
ステラの呼びかけにハッとする。どうやら、先ほどの光景を見て考え込んでしまったようだ。
しかし考えても、国王の意図が分からない。何故、あそこまで放ったのかルナリアは理解ができなかった。
荷ほどきがひと段落してステラは直ぐにノクスの手がかりを探しに行くと言って出て行った。ルナリア自身も一緒に行くと言ったが思ったよりもサベージの治安が悪いこともあり「ダメです。」と一刀両断された。
(・・・ここまで来て探せないなんて)
もどかしさが更に募る。それでも、その場から出ないのは護衛が常に待機しているのもあるが、たいした戦力にならないと理解しているからだった。
「ルナ?」
ノックと共にゆっくりと扉が開かれる。
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