赤獅子皇帝の花嫁

桃源郷

文字の大きさ
上 下
60 / 72
本編

ルナリアの過去 4

しおりを挟む
11歳になったころ、ルナリアは未だにロイのところに通っていた。ある程度、商会の運営方法は理解したが、腑に落ちない事があった。ロイの仕事環境だ。ロイに聞けば仕方ないとどこか諦めたようで自分と重ねてしまって何も言う事が出来なかった。

その日の帰り道、空には綺麗な星が散っていた。トボトボとした足取りで一人、外套を被り町娘の格好で歩いていれば近くでガシャンととても大きな音がした。
何かと近づいて見たら、男の子を抱えた少女が酷い傷で横たわっていた。驚いたことに彼らは人族ではなく獣人だった。

(このままでは、まずいわ。どこか、安全なところに連れていかないと。)

しかし、安全なところと言っても思いつかない。気を失っている彼らに外套を被らせ隠す。しばらく、その場で考えていると思いついた事があった。

「屋敷の離れは大丈夫かしら?」

公爵家の離れは元々、母が暮らしていた場所だった。あそこは、母が患ってから誰も近寄らずに今もある。庭の奥にあるあの場所はルナリアの唯一の隠れ場所にもなっていた。
あそこならと思い二人を連れて行く。軽量の魔法と浮遊の魔法を重ねがけしたら二人でもなんとかルナリアの手で運べた。元々、彼らはやせ細っていて軽かったが。

ーーーー
ーー


拾った子はすぐに回復して一ヶ月ほどで変幻できるようになった。彼らに名前を聞けば番号が返ってきた為名前は分からなかった。これでは、不便だとルナリアが名前をつけた。
男の子はその夜のような髪の色からノクス、女の子は星のような色の瞳からステラと名付けた。二人はとても感激したように膝を降り顔を伏せ「ありがとうございます!!」と言ってくれた。何気なく付けた名前だったが、そんなに感激されるとは思わず狼狽えてしまった。
その後、女の子方はルナリアの侍女になった。男の子は屋敷に置くと言った際に公爵が憤慨した。理由は「シーラの側に何処の馬の骨ともわからない者を置けない!!」という事らしい。仕方ないので、ロイの所で知り合った奥さんのヘレナに預けた。時たま会いに言っている。ヘレナの娘は男の子と同い年で仲良くやっていて安心した。

この頃から、ルナリアは殴られるのを拒絶するようになった。なぜなら、ステラがいたからだ。主人であるルナリアが殴られるのを良しとすればステラも殴られて当たり状況になる。ルナリアが殴られるのならまだいいが自分のせいでステラが殴られるのは嫌だったのだ。

ステラは、侍女になって数ヶ月で仕事をマスターした。私の状況知ったステラは、夜に出て狩をして朝食事を作ってくれるようになった。
もっぱら生物や冷たい物を食べていたために温かく、美味しい食事という物を久しぶりに食べた。
この時ばかりは、不覚にもホロリと涙がこぼれてしまった。

(こんなに、美味しい料理はいつぶりかしら・・・)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

処理中です...