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本編
夜会が始まる。 2
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上を見上げれば、レオンが威嚇する様に周りを見渡していた。
「・・お主、本当にレオンか?あの朴念仁がこの様になるとは」
「貴方に似たのでは?バージル。」
「ふふ、あの兄上が・・わ、笑いが止まらない。」
(上皇夫妻。まさか、会えるなんて)
きっと、ヴィオラ様に似ているのが上皇后のレイラ様でレオン様を少し歳を重ねた感じにした風貌の男性が上皇であるバージル様なのだろう。彼らは、この国ではとても有名だ。二人の恋物語は小説になっていてそれを読んでいたから二人の事は知っていたのだ。
レイラがふぅと息を吐き、呆れた様にこちらに語りかける。
「レオン、その様子ですと貴方が誘ってはないのでしょう?貴方から誘いなさい。紳士たる者、男の方から誘いなさい。いいわね?」
「・・はい。分かっています。」
「では、少し時間を稼いであげるわ。しっかり、話しなさいよ二人で。行くわよ、貴方達。」
夫と娘を連れてレイラは出て行った。途中、押し殺せなかった笑い声と「もっと、からかいたい!」という声が聞こえていたがズルズルと引きずられて行った。
唖然として、彼らが出て行った扉を見ていれば、腕の中から解放された。
クルッと方向を変えられ、レオンと向かい合わせになる。
「・・・久しぶりだな。元気か?」
「はい。・・貴方様が、まさか皇帝陛下だなんて」
「怒ったか?」
「いえ、驚きすぎてその・・」
今考えると、色々要素があった。
タラサでの皇帝が視察の初日に出会った事、皇帝が視察から帰る日に帝都へ帰ると言ったことやヴィオラの纏う色と似ていた事。
「すまない。言い訳になるが、その、貴方に畏まって欲しく無かった。私の立場が分かれば畏るだろう?」
それは、そうだろう。憧れの、商人の聖地を作った人で現皇帝だ。
「いえ、いいんです。どこの誰かもわからない人間においそれと立場を明かさないのは分かっていますから。」
少し、苦笑していう。レオンは眉間にしわを寄せ黙っていた。
「皇帝陛下にお会い出来たら、聞こうと思っていたのですけれどよろしいですか?」
「なんだ。」
「私で良いのですか?共にいてはいけないのではありませんか?不釣合いでは?」
皇帝がレオンでは無いにしても聞くつもりだった。突然、現れた人間が夜会で共に出席するなど皇女であるヴィオラに頼まれたとはいえ憚られる。
「そ、そんな事は無い!ルナリア嬢、貴方ほど美しい人はいない。貴方は綺麗で凛々しくて美しい。どうか、私と共にいてくれ、側に。」
レオンは、ルナリアの頬に手を当て言い募る。
焦った様に出てくる言葉はどれも熱がこもっている様な気がして照れてしまう。きっと、ルナリアの頬は赤くなっているのだろう。
(なんだか、告白の様で照れるわね。夜会の参加許可を直々にもらおうと思ったのだけれど)
「ありがとうございます。陛下、これで気兼ねなく夜会に参加できますわ。少し、夜会に出ていいか不安でしたの。」
「・・・・・・・・」
そう言えば、ルナリアの頬に触れたままレオンは再び固まっていた。
「・・お主、本当にレオンか?あの朴念仁がこの様になるとは」
「貴方に似たのでは?バージル。」
「ふふ、あの兄上が・・わ、笑いが止まらない。」
(上皇夫妻。まさか、会えるなんて)
きっと、ヴィオラ様に似ているのが上皇后のレイラ様でレオン様を少し歳を重ねた感じにした風貌の男性が上皇であるバージル様なのだろう。彼らは、この国ではとても有名だ。二人の恋物語は小説になっていてそれを読んでいたから二人の事は知っていたのだ。
レイラがふぅと息を吐き、呆れた様にこちらに語りかける。
「レオン、その様子ですと貴方が誘ってはないのでしょう?貴方から誘いなさい。紳士たる者、男の方から誘いなさい。いいわね?」
「・・はい。分かっています。」
「では、少し時間を稼いであげるわ。しっかり、話しなさいよ二人で。行くわよ、貴方達。」
夫と娘を連れてレイラは出て行った。途中、押し殺せなかった笑い声と「もっと、からかいたい!」という声が聞こえていたがズルズルと引きずられて行った。
唖然として、彼らが出て行った扉を見ていれば、腕の中から解放された。
クルッと方向を変えられ、レオンと向かい合わせになる。
「・・・久しぶりだな。元気か?」
「はい。・・貴方様が、まさか皇帝陛下だなんて」
「怒ったか?」
「いえ、驚きすぎてその・・」
今考えると、色々要素があった。
タラサでの皇帝が視察の初日に出会った事、皇帝が視察から帰る日に帝都へ帰ると言ったことやヴィオラの纏う色と似ていた事。
「すまない。言い訳になるが、その、貴方に畏まって欲しく無かった。私の立場が分かれば畏るだろう?」
それは、そうだろう。憧れの、商人の聖地を作った人で現皇帝だ。
「いえ、いいんです。どこの誰かもわからない人間においそれと立場を明かさないのは分かっていますから。」
少し、苦笑していう。レオンは眉間にしわを寄せ黙っていた。
「皇帝陛下にお会い出来たら、聞こうと思っていたのですけれどよろしいですか?」
「なんだ。」
「私で良いのですか?共にいてはいけないのではありませんか?不釣合いでは?」
皇帝がレオンでは無いにしても聞くつもりだった。突然、現れた人間が夜会で共に出席するなど皇女であるヴィオラに頼まれたとはいえ憚られる。
「そ、そんな事は無い!ルナリア嬢、貴方ほど美しい人はいない。貴方は綺麗で凛々しくて美しい。どうか、私と共にいてくれ、側に。」
レオンは、ルナリアの頬に手を当て言い募る。
焦った様に出てくる言葉はどれも熱がこもっている様な気がして照れてしまう。きっと、ルナリアの頬は赤くなっているのだろう。
(なんだか、告白の様で照れるわね。夜会の参加許可を直々にもらおうと思ったのだけれど)
「ありがとうございます。陛下、これで気兼ねなく夜会に参加できますわ。少し、夜会に出ていいか不安でしたの。」
「・・・・・・・・」
そう言えば、ルナリアの頬に触れたままレオンは再び固まっていた。
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