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本編
市場調査 2
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レオンは外套をかぶり直し、ルナリアをエスコートし再び大通りへと向かう。やけに、エスコートに慣れていると思ったが言動や服の質から貴族かと思い納得した。
「あの、レオン様?」
目線で握られた手を指す。
自然に手を取ってしまったが、なんだかこのまま大通りに出てしまうのが恥ずかしい。サベージでは結婚前の家族以外の男女は婚約者同士でも社交の時以外触れ合わない。だからこそ、いたたまれない。
「あぁ、今は人が多いからな。また、土地勘のない貴方を一人にしかねない。」
先程の慌てようから、一転してしれっとそういい返される。恥ずかしがっているのが自分だけのようでなんとも言えない気持ちになった。
「そ、そうですね。では、私達は市場へ向かっていましたの。そこへ連れて行って下さいませんか?」
「あぁ、分かった。」
(ステラの事だから市場で待てば合流できるはず。・・それより、手、手が。こ、これは、きっとドラニアの文化よ。そう、そうよ、文化・・)
沸騰しそうな頭の中を無理やり別の考えでごまかすが、果たしてできているのだろうか?
こんなにも内心は、羞恥に苛まれているのに顔を崩さないのは偏に貴族だった頃の習性だろう。
「そ、それにしても、人が多いですね。」
「そうだな、年に一度、皇族が来るとともに城から馬車が通るからな。と言っても形だけだが。」
「形だけですか?」
道に沿うようにして人が集まって流のを見ながら疑問を投げかければレオンは答えてくれる。
「あぁ。ただ、皇帝がこちらに来たという目印がわりのようなものだな。城の装飾は見事だからな、皆みたがるのだろう。」
(そうか。たしかドラニアの皇族は市民に人気があったはず、だから皇族が来たという事で人が街に出て商店が軒並み開かれるのだわ。サベージでは雲泥の差ね。)
「だからこんなに・・・。それは活気付きますね。」
「あぁ、新顧客を獲得するチャンスだからな。店を持つものは皆、気合いを入れて店を開く。そうして、さらに街が活気ずく。」
そんな、話をしていればいつのまにか恥ずかしいさはどこかに消えていってしまっていた。そこにあったのは、ただただ暖かな楽しみだけだった。
その後も、レオンと共にルナリアは市場までの道すがら出ていた露店をどんなものが売られているのかを見て回ることにした。
3軒目に差し掛かって気づいた。先の2軒とも食べものの露店だったのだが、そのどれもが肉ばかり軽く食べて回れるようなものがない。味もどこも似通っていて塩味ばかりだった。
「レオン様、露天の商品ですがどれも肉が多いですね。」
「あぁ、獣人は身体資本だからな。基本肉がが好きだ。だから、露天もそういったものが多いだろう。女性はそうでもなさそうだが。」
「そうですか。」
(これは、使えるかしら?最初は女性に客層絞って、それから・・)
「・・ア嬢?ルナリア嬢?どうかしたか?」
「いえ。なんでもありませんわ。少し、構想が浮かんできましたの。」
どうやら、考えすぎて心配させてしまったようだ。
「構想か。何の構想を思いついたんだ?」
「わたくし、商会を立てようと思いまして。その商会で売ろうと思っている商品の構想ですわ。」
レオンは興味深かそうにして、ルナリアの話を聞いていた。
「どんな、商品にするんだ?」
「企業秘密ですわ。レオン様。」
繋いでいない手で口元に人差し指を当ててにこやかに秘密だと答える。
すると、レオンは固まってしまった。
(どうしたのかしら?)
「あの、レオン様?」
「何でもない。」
何でもないという割には尻尾はゆらゆらと動いている。
(おかしな方ね。)
と内心苦笑してしまった。
そうして、露天をレオンと共にいくつか回る。レオンはルナリアが「これはなんですか?」と聞くたび丁寧に答えてくれた。
そうこうしているうちに、ルナリア達はいつのまにか市場まで来てしまっていた。
「ついてしまったな。」
レオンが何かボソッと言ったがルナリアには聞こえなかった。
「あの、レオン様?」
目線で握られた手を指す。
自然に手を取ってしまったが、なんだかこのまま大通りに出てしまうのが恥ずかしい。サベージでは結婚前の家族以外の男女は婚約者同士でも社交の時以外触れ合わない。だからこそ、いたたまれない。
「あぁ、今は人が多いからな。また、土地勘のない貴方を一人にしかねない。」
先程の慌てようから、一転してしれっとそういい返される。恥ずかしがっているのが自分だけのようでなんとも言えない気持ちになった。
「そ、そうですね。では、私達は市場へ向かっていましたの。そこへ連れて行って下さいませんか?」
「あぁ、分かった。」
(ステラの事だから市場で待てば合流できるはず。・・それより、手、手が。こ、これは、きっとドラニアの文化よ。そう、そうよ、文化・・)
沸騰しそうな頭の中を無理やり別の考えでごまかすが、果たしてできているのだろうか?
こんなにも内心は、羞恥に苛まれているのに顔を崩さないのは偏に貴族だった頃の習性だろう。
「そ、それにしても、人が多いですね。」
「そうだな、年に一度、皇族が来るとともに城から馬車が通るからな。と言っても形だけだが。」
「形だけですか?」
道に沿うようにして人が集まって流のを見ながら疑問を投げかければレオンは答えてくれる。
「あぁ。ただ、皇帝がこちらに来たという目印がわりのようなものだな。城の装飾は見事だからな、皆みたがるのだろう。」
(そうか。たしかドラニアの皇族は市民に人気があったはず、だから皇族が来たという事で人が街に出て商店が軒並み開かれるのだわ。サベージでは雲泥の差ね。)
「だからこんなに・・・。それは活気付きますね。」
「あぁ、新顧客を獲得するチャンスだからな。店を持つものは皆、気合いを入れて店を開く。そうして、さらに街が活気ずく。」
そんな、話をしていればいつのまにか恥ずかしいさはどこかに消えていってしまっていた。そこにあったのは、ただただ暖かな楽しみだけだった。
その後も、レオンと共にルナリアは市場までの道すがら出ていた露店をどんなものが売られているのかを見て回ることにした。
3軒目に差し掛かって気づいた。先の2軒とも食べものの露店だったのだが、そのどれもが肉ばかり軽く食べて回れるようなものがない。味もどこも似通っていて塩味ばかりだった。
「レオン様、露天の商品ですがどれも肉が多いですね。」
「あぁ、獣人は身体資本だからな。基本肉がが好きだ。だから、露天もそういったものが多いだろう。女性はそうでもなさそうだが。」
「そうですか。」
(これは、使えるかしら?最初は女性に客層絞って、それから・・)
「・・ア嬢?ルナリア嬢?どうかしたか?」
「いえ。なんでもありませんわ。少し、構想が浮かんできましたの。」
どうやら、考えすぎて心配させてしまったようだ。
「構想か。何の構想を思いついたんだ?」
「わたくし、商会を立てようと思いまして。その商会で売ろうと思っている商品の構想ですわ。」
レオンは興味深かそうにして、ルナリアの話を聞いていた。
「どんな、商品にするんだ?」
「企業秘密ですわ。レオン様。」
繋いでいない手で口元に人差し指を当ててにこやかに秘密だと答える。
すると、レオンは固まってしまった。
(どうしたのかしら?)
「あの、レオン様?」
「何でもない。」
何でもないという割には尻尾はゆらゆらと動いている。
(おかしな方ね。)
と内心苦笑してしまった。
そうして、露天をレオンと共にいくつか回る。レオンはルナリアが「これはなんですか?」と聞くたび丁寧に答えてくれた。
そうこうしているうちに、ルナリア達はいつのまにか市場まで来てしまっていた。
「ついてしまったな。」
レオンが何かボソッと言ったがルナリアには聞こえなかった。
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