赤獅子皇帝の花嫁

桃源郷

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本編

どこに行こうか?

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やはり明朝まで待ってはもらえず、仕方なく今晩帝都ないの宿泊施設に泊まり、明け方出ることにした。




早朝、未だ空が白んでいる時間に私は母が眠っている小高い丘の教会にいた。


「お母様、今日私はこの国を出ます。きっと戻って来れないでしょう。でも、お母様が私に教えてくれたことはこの胸にしかと刻みますわ。」


風が揺らぐ、暖かい春の風が頬を優しく撫でるようで少し寂しくなる。カミツレの花の花束を母の墓標に立てる。母が好きだった花だ。


「どうか、私達の行く末を見守って下さい。・・・・・・・・・行きましょう、ステラ。」


祈るように手を組み母に願う。ひとしきり祈りが終わると後ろで控えていたステラにつげる。


(さようなら。お母様。)


ーーーーー


元々、教会が王都郊外にあったからか、少しし歩くとすぐに王都から出る事となった。結局、見送りは誰も来なかった。


(私が作った商会の設立メンバーはお別れを言いに来ると思ったけれど・・・悲しいわね。)


やはり、昨晩急に送った手紙では都合がつかなかったらしいそれも当たり前かと思うと同時に昔から見知った顔が見れないのを少し残念に思う。


「・・さて、どこに行こうかしら。それにしても、ステラは私についてきて良かったの?慣れた生活を離れるのは辛いでしょ?」

あの時は、少し軽い気持ちで言った彼女の気持ちを知るために。もちろん、断られたら折れるまで頼むつもりだったけれど。

「大丈夫です。私の主人はお嬢様ですから。」

「そう。・・・その、ありがとう。」


(もう、この子はさらっと気恥ずかし事を言うわ。)


「了承してくれて良かったわ。貴方を一人あの国に残しておくのは嫌だったもの。ねぇ、そろそろ、良いのではない?元の姿に戻っても。」


少し、そわそわしたようにお願いしてみる。


「・・・分かりました。」


ステラは頷き、常に自身にかけている魔法を解く。
それを解くと、髪と同じ色をした黒く艶やかな獣耳としなやかな尻尾が現れる。


「うん。いつもの姿も良いけれどやっぱりその姿の方が何倍も可愛いわ!」


そっちの趣味は無いけれど、お仕着せの服とその容姿に相待って本当に可愛い。いつもは、冷たいクールビューティーで人を寄せ付けない雰囲気それもまた良いのだが獣耳が現れることによってその雰囲気が少し、和らいで可愛らしくなり、親しみやすくなる。
ステラは猫の獣人なのだが、私が街の路地で行き倒れていたステラを拾って今にいたる。
この国は、獣人を差別する傾向が強い。少数だが差別しない人もいるけれど、前者の考え方がほとんどの人に染み込んでしまっている。
だから、この国にいる獣人達は変化の魔法を使って獣人の象徴である耳や尻尾を隠す。ステラもその一人だった。


(他国では、獣人たちは姿を偽らず暮らしているというのにいつまでも古い考えを持って差別するなんて馬鹿馬鹿しい。)


実際、獣人達を多く雇用する国は作物が育ちやすく、また身体能力の高い者が獣人には多く国が国防のかなめとしている。民族の専門書によると獣人は自然の機微に聡く、獣の身体能力を合わせ持っているらしいて気候にあった作物を瞬時に見極められるそうだ。
「そうだわ!」と思いついて、ステラに提案してみる。


「ステラ!隣国のドラニア帝国に行きましょう!そこで新しい商会を立てましょう!」


ドラニア帝国はサベージ王国(あぁ、私が元いた国ですわ。)比較できないほどの大国だ。獣人の国と言われるほど獣人達の比率が多く。また、現皇帝も獅子族の方だそうだ。
海の近くに位置しているため、多くの貿易が盛んに行われて様々な人種がいる。商人達の聖地だと言われるほどだ。ただ、サベージ国は、獣人を差別していたから隣国といえどあまり交易を交えることができなかった。
だから、あの帝国はルナリアの憧れの地だった。


「ドラニアですか。別に構いませんが、どうしてまた。」

「だって、あの帝国は獣人の国と言われるのよ。貴方も混じりやすいと思うの。それに、なんと言っても帝都は貿易都市としてとても有名な場所!!一度見てみたかったのよ!やっと、あの馬鹿殿下のお守りとあの浪費家族の尻拭いをしなくて済むのよ自由にやりたいこと、行きたい場所に行けるのよ!」


そう。そうなのだ、やっと自由になったのだ。サベージでは、学園で自尊心の塊のような馬鹿な殿下のフォローをして、家に帰れば浪費癖が酷い公爵家夫婦と異母妹の使うお金を色ボケ男の代わりに私が建てた商会の売り上げで切り盛りしていた。あの男は私が積み上げた業績を自分のお陰だと思っているようだが、今はもう商会の権限も色ボケ男に取り上げられてしまったお陰でなんの口だしもできないけれど。


「よかったですね、お嬢様。ですが、口が悪いですよ。」
「あら、良いじゃない。今は貴方しか聞いてないわ。」


向かうところができたら話は早い。
王都から離れた町で馬車を乗り継いでガルーナ帝国に向かう。隣国とは言っても、間に谷や森があるため迂回していかねばならないので時間はかかるが。
だが、これからどうなるかと思うと、ルナリアとても楽しみでしょうがない。
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