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第4章 魔法の記憶
①
しおりを挟む真夜中、激しい雷雨の中を移動する。月は雲に隠れ、明かりは雷の光だけだった。
誰も居ない城の中庭を通って、ある一点で立ち止まり、天を仰ぐようにして城の窓を確認する。どの窓にも灯りは見えない。
雷鳴が、雷光が俺の心を騒がせる。壁に手を伸ばし、少しずつ登っていく様を見る者は誰も居ない。俺が部屋に忍び込む姿を見る者など誰一人として存在しない。
窓に鍵は掛かっていなかった。慣れた手付きで音も無く窓を開き、音も無く忍び込む。
己の身体からポタポタと雫が滴り落ちるが、その音は高級な絨毯が吸収する。足音も消し、俺は大きなベッドに近付いた。
黙ったまま、そこで眠る狼人の王に俺はゆっくりと右手を伸ばした。
────この王の首を取れば、俺は国に戻れるだろうか……。
そう心の中で問いながら、ジッと己の右手を見つめる。短剣を握りしめた、己の右手を……。
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