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第3話 天邪鬼

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 ◆ ◆ ◆

 自分たちの布団を片した後、僕たちは他の宿泊客と一緒に食事処で朝食を取った。昨夜、徘徊していた女の子は普通に元気そうに白いお米をたくさん食べていた。そして、昼前にはチェックアウトして家族と元気に去っていった。何もおかしいところはない。

 僕らが旅館の手伝いを終えて夕方になった頃、新たなお客さんとして子供を含む数組の家族が旅館に来た。それから夜になって、また先生たちは黒い警察官の制服を着て山に入って行った。

 でも、子供たちは先生たちのパトロールをかいくぐって、いつの間にか山に入り、植物のつるを持って帰ってきていた。

 そして、朝目覚めると、僕はまた寝相の悪い透キヨさんに腕を掴まれていた。しかも、窓に近い端の布団を選んでいた先生の方に二人でぎゅっと詰め寄って、だ。

 そんなことが一週間くらい繰り返された。

 山に入って行く子供たちを先生たちが見つけられないこととか、僕の寝相が悪くなったこととか、透キヨさんが毎朝僕の腕を掴んでいることとか、ぜんぶ理由を見つけられないままだ。

「先輩、もしかして、子供しか通れない隠し通路があるんじゃないですか?」

 ある夜、いつものようにパトロールに行こうとした透キヨさんが思いついたように言った。

「いや、まさか……」
「新海くんを連れていきましょう」

 透キヨさんの説を疑う先生と、もう決めたかのように僕を見る透キヨさん。もしかして、僕も夜の山に行かないといけないのだろうか?

「ダメだ。子供たちを徘徊させているのがあやかしの仕業だというのは濃厚だが、どんなあやかしなのか分からない」
「子供たちの心を見てもあやかしの姿は分からないんですか?」
「彼らは眠りながら無意識に動いているから心を見てもあやかしの正体は見えないんだ、危険過ぎる」
「じゃあ、どうするんですか? 多分、今日も空振りますよ?」

 二人で言い合っているけど、埒があきそうにない。ここは、やっぱり僕が行くしかないのだろうか? 僕が勇気を出すしか……。

「行きます、僕」

 頭で深く考えるより先に口が動いていた。

「新海……、危ないかもしれないんだぞ?」

 先生が真剣な表情で僕のことを見つめてくる。圧力を掛けて「やっぱり行きません」と僕に言わせたいのだろう。でも、僕は言わない。
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