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第3話 天邪鬼
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色々なセミの鳴き声が聞こえる。周りを山々に囲まれ、自然の多いこの場所は、都会よりもずいぶんと涼しい気がして、僕は綺麗な空気をいっぱい吸いたくなった。
「ここは俺と亜蘭が育った場所なんだ。もう何百年も前の話だがな」
「先生、いくつですか?」
「さあ? もう忘れた」
弟さんについて詳しくは教えてくれなかったけれど、今朝、そんな会話を先生とした。
僕と先生と透キヨさんは今、夏休みを利用して朝霧荘という古い旅館の手伝いをしに来ている。先生は毎年、この時期になると休みを取ってこの旅館を手伝うことにしているらしい。「自分と弟の育った場所を大事にしたい」と言っていた。
これは僕の予想だけれど、先生はあのとき弟さんである亜蘭さんに久しぶりに再会したみたいだった、だから、先生は亜蘭さんに会うためにずっとここに来ていたんじゃないかと思う。ここに来れば亜蘭さんが来てくれるんじゃないかって……、きっと今も思ってるんだ。
「ここが俺たちの部屋だ」
先生は静かにスッと襖を開けた。一気に綺麗な和室が視界に映り込んでくる。
「うわぁ」
外観は古いと思っていたけれど部屋の中はとても明るくて綺麗で僕は開いた口が塞がらなくなった。つやっと光っている畳からは良い香りがして、大きな窓の外には綺麗な山々が見える。
朝霧荘に来てからさっそく大浴場を洗ったりとか、仕事を頼まれて、自分たちの部屋に辿りつくのが昼過ぎになってしまったけれど、そんなことが気にならなくなる。学校の行事以外でどこかに泊まるなんて初めてのことだ。楽しみ過ぎる。
「三人部屋……」
そう呟いたのは透キヨさんだ。目つきは相変わらず悪いけれど、透キヨさんの瞳はキラキラと光っている。三人一緒の部屋がとても嬉しいようだ。
「良いか? 遊びに来たんじゃないんだからな? 明日もここで仕事するんだからな?」
旅行気分の僕たちに先生が言い聞かせようとしたときだった。
「失礼します」
廊下の方から女の人の声がして、部屋の出入り口にある木の引き戸がすぅっと横に開いた。そこに現れたのは落ち着いた紫色の作務衣を着た五十代くらいの女性だった。
「ここは俺と亜蘭が育った場所なんだ。もう何百年も前の話だがな」
「先生、いくつですか?」
「さあ? もう忘れた」
弟さんについて詳しくは教えてくれなかったけれど、今朝、そんな会話を先生とした。
僕と先生と透キヨさんは今、夏休みを利用して朝霧荘という古い旅館の手伝いをしに来ている。先生は毎年、この時期になると休みを取ってこの旅館を手伝うことにしているらしい。「自分と弟の育った場所を大事にしたい」と言っていた。
これは僕の予想だけれど、先生はあのとき弟さんである亜蘭さんに久しぶりに再会したみたいだった、だから、先生は亜蘭さんに会うためにずっとここに来ていたんじゃないかと思う。ここに来れば亜蘭さんが来てくれるんじゃないかって……、きっと今も思ってるんだ。
「ここが俺たちの部屋だ」
先生は静かにスッと襖を開けた。一気に綺麗な和室が視界に映り込んでくる。
「うわぁ」
外観は古いと思っていたけれど部屋の中はとても明るくて綺麗で僕は開いた口が塞がらなくなった。つやっと光っている畳からは良い香りがして、大きな窓の外には綺麗な山々が見える。
朝霧荘に来てからさっそく大浴場を洗ったりとか、仕事を頼まれて、自分たちの部屋に辿りつくのが昼過ぎになってしまったけれど、そんなことが気にならなくなる。学校の行事以外でどこかに泊まるなんて初めてのことだ。楽しみ過ぎる。
「三人部屋……」
そう呟いたのは透キヨさんだ。目つきは相変わらず悪いけれど、透キヨさんの瞳はキラキラと光っている。三人一緒の部屋がとても嬉しいようだ。
「良いか? 遊びに来たんじゃないんだからな? 明日もここで仕事するんだからな?」
旅行気分の僕たちに先生が言い聞かせようとしたときだった。
「失礼します」
廊下の方から女の人の声がして、部屋の出入り口にある木の引き戸がすぅっと横に開いた。そこに現れたのは落ち着いた紫色の作務衣を着た五十代くらいの女性だった。
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