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第2話 駄菓子化し
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「透キヨさん、起きてください」
意識がなく、動かない透キヨさんに呼びかけながら、僕は彼の腕に繋がっている管を抜いて、身体を拘束しているものもすべて外した。
「透キヨさん!」
ちょっとひどいかなとも思ったけれど、今はそんなことを考えてる場合ではなくて、僕は透キヨさんの頬を思いっきり平手で叩いた。パチンっという良い音がして、透キヨさんが「うっ」と呻いた。
「起きて、ほんとうに起きてください。あいつが来ちゃいますよ……!」
もう一度、必死になって叩こうとしたときだった。パシンッと叩こうとした手を掴まれた。
「もう起きてる……」
機嫌の悪そうな怖い顔がそう呟いた。透キヨさんのお目覚めだった。
「俺としたことが……、不意を狙われた。――新海くん、よく俺を見つけたね」
「たまたま"見た"ので」
透キヨさんが苦笑いを浮かべるから僕も自然と同じような顔になる。
ガシャンッ
突然、扉の開く音が聞こえた。男が戻ってきたのだ。
「俺の手握って」
「……は、はいっ」
僕は怖くて仕方がなくて、透キヨさんに言われた通りにした。握った透キヨさんの手は氷みたいに冷たくて、心配になる。
「……っ」
透キヨさんは「静かに」と言うように自由なほうの手で僕の口を塞いだ。そのままゆっくりと移動していく。
男がバサリとカーテンを勢いよく開けた。でも、不思議なことにキョロキョロと周りを見渡して、何か考えごとをするかのように動きを止めた。
――透キヨさんの能力で僕も見えなくなってるんだ。
そう気が付いたとき、透キヨさんが動き出した。男の横をゆっくりと通って、カーテンの隙間を抜け、金属の扉に近付いていく。
そして、急に僕の鼻と口を押さえ、透キヨさん自身も息を止めた。ぐいっと身体が扉に押しつけられる感覚がする。
意識がなく、動かない透キヨさんに呼びかけながら、僕は彼の腕に繋がっている管を抜いて、身体を拘束しているものもすべて外した。
「透キヨさん!」
ちょっとひどいかなとも思ったけれど、今はそんなことを考えてる場合ではなくて、僕は透キヨさんの頬を思いっきり平手で叩いた。パチンっという良い音がして、透キヨさんが「うっ」と呻いた。
「起きて、ほんとうに起きてください。あいつが来ちゃいますよ……!」
もう一度、必死になって叩こうとしたときだった。パシンッと叩こうとした手を掴まれた。
「もう起きてる……」
機嫌の悪そうな怖い顔がそう呟いた。透キヨさんのお目覚めだった。
「俺としたことが……、不意を狙われた。――新海くん、よく俺を見つけたね」
「たまたま"見た"ので」
透キヨさんが苦笑いを浮かべるから僕も自然と同じような顔になる。
ガシャンッ
突然、扉の開く音が聞こえた。男が戻ってきたのだ。
「俺の手握って」
「……は、はいっ」
僕は怖くて仕方がなくて、透キヨさんに言われた通りにした。握った透キヨさんの手は氷みたいに冷たくて、心配になる。
「……っ」
透キヨさんは「静かに」と言うように自由なほうの手で僕の口を塞いだ。そのままゆっくりと移動していく。
男がバサリとカーテンを勢いよく開けた。でも、不思議なことにキョロキョロと周りを見渡して、何か考えごとをするかのように動きを止めた。
――透キヨさんの能力で僕も見えなくなってるんだ。
そう気が付いたとき、透キヨさんが動き出した。男の横をゆっくりと通って、カーテンの隙間を抜け、金属の扉に近付いていく。
そして、急に僕の鼻と口を押さえ、透キヨさん自身も息を止めた。ぐいっと身体が扉に押しつけられる感覚がする。
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