天乃ジャック先生は放課後あやかしポリス

第１話 悪商人

１５

「……っ、人間じゃないって言ったって痛いんだぞ？」

　ここに居るはずのない人の声がして、僕はハッとなって目を開けた。見ると諸江と骸骨との間に黒い警察官の制服を着た男性が立っていた。

「先生……？」

　間に入っていたのは天乃先生だった。しかもよく見てみると、先生は骸骨に鋭い爪でお腹を刺されていた。

「透すけキヨ！　俺がこいつの腕を押さえてるから手錠掛けろ！」

　一体誰に指示を出しているのか、先生は自分のお腹に刺さっている骸骨の右腕を自分の両手でがっしりと掴んで叫んだ。

「はいはい、了解でーす」

　誰も居ないはずなのにそんな声がどこからか聞こえてきて、気が付くと骸骨の右手には黒く光る手錠がはまっていた。

「そっちの手も寄越せ！」

　今度は勢いよく先生が骸骨をうつ伏せになるよう床に叩きつける。そして、目にも止まらぬ速さでやつのもう片方の手にも手錠をはめていた。

「悪商人、現行犯逮捕！」
「やりましたね、先輩」

　先生が高らかに宣言すると、シューッとスプレーで描いたみたいに知らない男の人がその場に現れた。さっきの声の人だ。見えなくなる能力を持っているらしい。ちなみに先生と同じ黒い制服を着ている。

「こら、動くな」

　暫くの間、先生の膝の下で骸骨は身体をくねらせていたけれど、「葬送」と先生が呟くと地面に沈んでいくように消えてしまった。最初から最後まで一言も発さなかったから、骸骨はしゃべることが不可能だったのかもしれない。

「先生！」

　僕はようやく動くことが出来て、先生に駆け寄った。

「そいつを頼む」

　もう一人の男の人に諸江をお願いして、先生は自分の脇腹を手で押さえながら僕の前に立った。