3 / 87
第1話 悪商人
3
しおりを挟む
「おい、新海、今夜も夜遊びしに行こうぜ。お前んちの母親、今日も居ないんだろ?」
これだ。いじめっ子の第一人者、諸江正樹《もろえまさき》。僕の前に立ったこの身体の大きな男子こそ、遠藤や冬木先生をこの学校から追い出した張本人なのだ。そのいじめっ子が次に標的にした人物、それが僕。
どうしてそうなったのか分からなくて、普通に戻りたくて僕は必死に彼の機嫌を取ろうとしている。だから、学校にも来るし、彼の言うことも聞く。
「う、うん、行くよ。今日はどこに行くの?」
彼の顔を見上げながら僕は返事をした。
僕の母親は旅館に泊まり込みで働いている。だから、休みの日以外は家に帰って来ない。一生懸命働いているのは僕のためだって分かってるから、僕は文句なんて言ったりしない。わがままも言ったりしない。
僕の父親は交通事故で死んでしまったと聞いた。僕が生まれる前のことで僕は詳しく知らないんだ。父親の顔も知らない。
「三丁目の——」
諸江が口を開いたとき、ガラガラと前の方のドアを開けて、誰かが教室の中に入ってきた。
——来た。あの人だ。
金髪に碧い瞳、間違いなくさっき見た人物だった。チッと舌打ちをして、諸江が窓際の男子が数人集まっているところに去っていく。僕をいじめているということが大人にバレないようにするためだろう。
見慣れない外国人の大人のことを気にしながらも、ほとんどの生徒が「誰が入ってきても何も関係ない」というふうに席に座ろうとしない。
騒がしい教室の中で教壇に立ったあの人が黒板に白いチョークで文字を書いていく。
『天乃ジャック』
さっき見たとおりの綺麗な字だ。
「今日からお前たちの担任になった天乃ジャックだ。よろしく」
外国人とは思えないペラペラな日本語……、きっと、この人はあれを言うはずだ。
僕はジッと天乃先生の顔を見ていた。
「最初に言っておくが……、俺にはお前たちの心が見える」
——言った!
これだ。いじめっ子の第一人者、諸江正樹《もろえまさき》。僕の前に立ったこの身体の大きな男子こそ、遠藤や冬木先生をこの学校から追い出した張本人なのだ。そのいじめっ子が次に標的にした人物、それが僕。
どうしてそうなったのか分からなくて、普通に戻りたくて僕は必死に彼の機嫌を取ろうとしている。だから、学校にも来るし、彼の言うことも聞く。
「う、うん、行くよ。今日はどこに行くの?」
彼の顔を見上げながら僕は返事をした。
僕の母親は旅館に泊まり込みで働いている。だから、休みの日以外は家に帰って来ない。一生懸命働いているのは僕のためだって分かってるから、僕は文句なんて言ったりしない。わがままも言ったりしない。
僕の父親は交通事故で死んでしまったと聞いた。僕が生まれる前のことで僕は詳しく知らないんだ。父親の顔も知らない。
「三丁目の——」
諸江が口を開いたとき、ガラガラと前の方のドアを開けて、誰かが教室の中に入ってきた。
——来た。あの人だ。
金髪に碧い瞳、間違いなくさっき見た人物だった。チッと舌打ちをして、諸江が窓際の男子が数人集まっているところに去っていく。僕をいじめているということが大人にバレないようにするためだろう。
見慣れない外国人の大人のことを気にしながらも、ほとんどの生徒が「誰が入ってきても何も関係ない」というふうに席に座ろうとしない。
騒がしい教室の中で教壇に立ったあの人が黒板に白いチョークで文字を書いていく。
『天乃ジャック』
さっき見たとおりの綺麗な字だ。
「今日からお前たちの担任になった天乃ジャックだ。よろしく」
外国人とは思えないペラペラな日本語……、きっと、この人はあれを言うはずだ。
僕はジッと天乃先生の顔を見ていた。
「最初に言っておくが……、俺にはお前たちの心が見える」
——言った!
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
初恋の幼馴染の女の子の恰好をさせられメス調教もされて「彼女」の代わりをさせられる男の娘シンガー
湊戸アサギリ
BL
またメス調教ものです。今回はエロ無しです。女装で押し倒されいますがエロはありません
女装させられ、女の代わりをさせられる屈辱路線です。メス調教ものは他にも書いていますのでよろしくお願いいたします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる