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第11話 逢魔の森とクローディアの真実(1)
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「ああ、そうじゃよ。まあ、その話は瘴気満ちるこの場所ではなく、森に入ってからにしようか。おいで」
老婆は優しくシエラの手を取り、壁の外へといざなった。
シエラの元に届いた手紙の内容はこうだった。
『あなたを殺さない、私を信じよ。追伸、メエルの実の種を何らかの手段を使って持ってきてほしい。実はいらないので食べてもいいからね』
魔女はうんうんとうなづくとおもむろに背筋を伸ばした。
「森に入ったし、もう元の姿に戻ってもいいわね」
そういうと老婆は大人の女性へと姿を変えた。
その黒髪の女性は二十代は過ぎているようだがまだ若々しく、重ねた年齢が彼女をよりつやっぽく見せていた。
「よかったわ信じてくれて。あなた以外の人には読めないように魔力を込めて書いた。魔力を込めた字はそんなにたくさん綴れないから、手短に書くしかなかったの」
女性はシエラににこやかな表情を見せた。
「メエルという果実の話に字数を割かなければ、もうちょっと丁寧に説明できたんじゃないですか?」
木の陰から若い男が出てきて二人に近づいて言った。
その男はシエラがいた国の騎士たちが、魔物退治のときに使う防具に似たものを身に着けていた。
「しかたないでしょう。メエルの種を手に入れるのは国にとっても重要なことなんだから」
「あなたの好物ってだけでしょう」
「あなただって食べたでしょう! 美味しい、美味しいって言っていたくせに」
「でもたかが、果実の種で……」
「この実はね、特産品として国外に流出しないように、植物全体に国が特殊な魔法をかけているの。他国の者が種を持ち出そうとすると、発芽能力が抑制されるのね。輸出の際にも同様の魔法がかけられる。だからこの国の人間に持ち出してもらうことが重要だったのよ」
なるほど、と、男が納得する。
「あの……」
おずおずと二人にシエラが声をかけた。
「よろしかったらこれをどうぞ。書かれていたのでメエルをたくさん買って馬車の中でも食べていたけど、多すぎてまだ残ってますから」
二人にシエラはメエルの実を差し出した。
「えっ、いいの? ありがとう! う~ん、これこれ!」
シエラから実を受け取ると、黒髪の女はそれにかじりついた。
「まあ、確かに美味しいですけどね。それよりも彼女に説明を」
男の方も食べながら言った。
「ええ、そうね。まず自己紹介をするわね。私の名はクローディア。二十年前にあの国から逢魔の森に追放された女よ」
「えっ! 魔物に殺されたんじゃ……?」
「疑問に思うのは当然よね。でも生きているわ。確かにこの森は魔物が徘徊するけど、人間の味方がいないわけじゃない。その者たちに助けられ私はこの森の反対側にある国に連れていかれたの。そこに住むことを許され、今じゃこれでも三人の子の母よ」
クローディアの言葉にシエラは目を白黒させた。
「本当ですよ。彼女は何を隠そう、わが国の英雄の一人、ヴァイスハーフェン公爵の奥方様ですから」
男がシエラに説明した。
「僕はアルベルト・ブリステル。王国駐屯騎士団の一員です」
そして自己紹介した。
「王国って、あの、どこの……?」
シエラは不思議に思った。
「とりあえず戻りましょう。森は瘴気の原と違って空気は清浄だけど、魔物が現れないとも限りませんから。駐屯地についたら、ゆっくり説明しますよ」
男は馬を二頭連れていた。
一頭にクローディアがまたがり、もう一頭に男はシエラを乗せ自分も乗った。
「しっかりつかまってくださいね」
馬は走り出し、シエラは彼らとともに森の奥へと向かうのだった。
老婆は優しくシエラの手を取り、壁の外へといざなった。
シエラの元に届いた手紙の内容はこうだった。
『あなたを殺さない、私を信じよ。追伸、メエルの実の種を何らかの手段を使って持ってきてほしい。実はいらないので食べてもいいからね』
魔女はうんうんとうなづくとおもむろに背筋を伸ばした。
「森に入ったし、もう元の姿に戻ってもいいわね」
そういうと老婆は大人の女性へと姿を変えた。
その黒髪の女性は二十代は過ぎているようだがまだ若々しく、重ねた年齢が彼女をよりつやっぽく見せていた。
「よかったわ信じてくれて。あなた以外の人には読めないように魔力を込めて書いた。魔力を込めた字はそんなにたくさん綴れないから、手短に書くしかなかったの」
女性はシエラににこやかな表情を見せた。
「メエルという果実の話に字数を割かなければ、もうちょっと丁寧に説明できたんじゃないですか?」
木の陰から若い男が出てきて二人に近づいて言った。
その男はシエラがいた国の騎士たちが、魔物退治のときに使う防具に似たものを身に着けていた。
「しかたないでしょう。メエルの種を手に入れるのは国にとっても重要なことなんだから」
「あなたの好物ってだけでしょう」
「あなただって食べたでしょう! 美味しい、美味しいって言っていたくせに」
「でもたかが、果実の種で……」
「この実はね、特産品として国外に流出しないように、植物全体に国が特殊な魔法をかけているの。他国の者が種を持ち出そうとすると、発芽能力が抑制されるのね。輸出の際にも同様の魔法がかけられる。だからこの国の人間に持ち出してもらうことが重要だったのよ」
なるほど、と、男が納得する。
「あの……」
おずおずと二人にシエラが声をかけた。
「よろしかったらこれをどうぞ。書かれていたのでメエルをたくさん買って馬車の中でも食べていたけど、多すぎてまだ残ってますから」
二人にシエラはメエルの実を差し出した。
「えっ、いいの? ありがとう! う~ん、これこれ!」
シエラから実を受け取ると、黒髪の女はそれにかじりついた。
「まあ、確かに美味しいですけどね。それよりも彼女に説明を」
男の方も食べながら言った。
「ええ、そうね。まず自己紹介をするわね。私の名はクローディア。二十年前にあの国から逢魔の森に追放された女よ」
「えっ! 魔物に殺されたんじゃ……?」
「疑問に思うのは当然よね。でも生きているわ。確かにこの森は魔物が徘徊するけど、人間の味方がいないわけじゃない。その者たちに助けられ私はこの森の反対側にある国に連れていかれたの。そこに住むことを許され、今じゃこれでも三人の子の母よ」
クローディアの言葉にシエラは目を白黒させた。
「本当ですよ。彼女は何を隠そう、わが国の英雄の一人、ヴァイスハーフェン公爵の奥方様ですから」
男がシエラに説明した。
「僕はアルベルト・ブリステル。王国駐屯騎士団の一員です」
そして自己紹介した。
「王国って、あの、どこの……?」
シエラは不思議に思った。
「とりあえず戻りましょう。森は瘴気の原と違って空気は清浄だけど、魔物が現れないとも限りませんから。駐屯地についたら、ゆっくり説明しますよ」
男は馬を二頭連れていた。
一頭にクローディアがまたがり、もう一頭に男はシエラを乗せ自分も乗った。
「しっかりつかまってくださいね」
馬は走り出し、シエラは彼らとともに森の奥へと向かうのだった。
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