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第10章 王宮の異変
第124話 王宮内の狂気【従者トロイア視点】
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王宮は異様な空気に包まれている。
何とか正気を保っていられるのはエルフの血ゆえか、それとも常日頃から王太子殿下のそば近くに仕えているからか?
王妃のもとに秘密裏に高位貴族の出の者がはせ参じたとの情報が入った。
一番の大物は騎士団長ヴィンクラー殿。先だって子息の一人がブリステル公爵令嬢への無礼で中央駐屯地に追い出されていた。
次に有能な魔法研究者を数多く輩出している家門、クルーグ家のレナウド殿。学園で教鞭をとっていたこともあるが、生徒に対する執拗なあらさがしと暴力でクビに、いや、ご本人の経歴を守るため自主的にやめられた形をとったという話だ。十代の少年を後ろに引き連れている。
他にも何名かやってきた者たち。
周囲の者の話によると、国王夫妻のご学友だった方々だという。
「皆様、よくぞおこしくださいました」
謁見室の奥に座す王妃が立ち上がって感謝の意を述べる。
「「「もちろんです、われらがエシャール様のためなら」」」
何名かが同時に声を上げた。
「ああ、昔と変わらぬうれしい言葉。かつてイレーネ様に与えられた恐怖が和らぐようです」
王妃の言葉に集まった面々は歓声を上げる。
何なのだ、この異様な空気は?
「今回はブリステルを抱き込んでおる」
国王が短く告げた。
「おのれ、ブリステル! 我が息子をはめ駐屯地に追放したのはこの時のためだったのだな!」
騎士団長が忌々しげに声を上げる。
正直、逆恨みも甚だしいと思う。
原因となった公爵令嬢フェリシアに対する蛮行は、彼の息子の暴走以外の何物でもないのだから。
「クルーグ家にもあの小娘にしてやられた者がいるのです。幸いにして、彼の再教育は私に任せてもらえたので、良き戦力となってくれるでしょう」
どういう失態を犯したかしれぬが、元暴力モラハラ教師に教えられるとは気の毒に。少年は魂の抜けたような目でレナウド・クルーグの隣に立っている。
それにしても、いくら実力者が集っているとはいえ、これだけの戦力で軍事のかなめブリステル家と本気で戦争をしようというのか?
ヴィンクラー氏率いる王国騎士団は王家直属だが、ほかの戦力、駐屯騎士団や国防軍はみなブリステル公爵が束ねているのだぞ。昔の人間に聞いた話では、イレーネという女性の生家ヴェルダートルを滅ぼしたのはあっという間のことであったらしいが、ブリステルはそれで済むほど甘くないぞ。
王太子殿下にお知らせせねば!
私は謁見室の外で様子をうかがっていた使用人たちの集団から離れ、王太子殿下の元へと急いだ。
何とか正気を保っていられるのはエルフの血ゆえか、それとも常日頃から王太子殿下のそば近くに仕えているからか?
王妃のもとに秘密裏に高位貴族の出の者がはせ参じたとの情報が入った。
一番の大物は騎士団長ヴィンクラー殿。先だって子息の一人がブリステル公爵令嬢への無礼で中央駐屯地に追い出されていた。
次に有能な魔法研究者を数多く輩出している家門、クルーグ家のレナウド殿。学園で教鞭をとっていたこともあるが、生徒に対する執拗なあらさがしと暴力でクビに、いや、ご本人の経歴を守るため自主的にやめられた形をとったという話だ。十代の少年を後ろに引き連れている。
他にも何名かやってきた者たち。
周囲の者の話によると、国王夫妻のご学友だった方々だという。
「皆様、よくぞおこしくださいました」
謁見室の奥に座す王妃が立ち上がって感謝の意を述べる。
「「「もちろんです、われらがエシャール様のためなら」」」
何名かが同時に声を上げた。
「ああ、昔と変わらぬうれしい言葉。かつてイレーネ様に与えられた恐怖が和らぐようです」
王妃の言葉に集まった面々は歓声を上げる。
何なのだ、この異様な空気は?
「今回はブリステルを抱き込んでおる」
国王が短く告げた。
「おのれ、ブリステル! 我が息子をはめ駐屯地に追放したのはこの時のためだったのだな!」
騎士団長が忌々しげに声を上げる。
正直、逆恨みも甚だしいと思う。
原因となった公爵令嬢フェリシアに対する蛮行は、彼の息子の暴走以外の何物でもないのだから。
「クルーグ家にもあの小娘にしてやられた者がいるのです。幸いにして、彼の再教育は私に任せてもらえたので、良き戦力となってくれるでしょう」
どういう失態を犯したかしれぬが、元暴力モラハラ教師に教えられるとは気の毒に。少年は魂の抜けたような目でレナウド・クルーグの隣に立っている。
それにしても、いくら実力者が集っているとはいえ、これだけの戦力で軍事のかなめブリステル家と本気で戦争をしようというのか?
ヴィンクラー氏率いる王国騎士団は王家直属だが、ほかの戦力、駐屯騎士団や国防軍はみなブリステル公爵が束ねているのだぞ。昔の人間に聞いた話では、イレーネという女性の生家ヴェルダートルを滅ぼしたのはあっという間のことであったらしいが、ブリステルはそれで済むほど甘くないぞ。
王太子殿下にお知らせせねば!
私は謁見室の外で様子をうかがっていた使用人たちの集団から離れ、王太子殿下の元へと急いだ。
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