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第28話 さらに続く王妃の暴言
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自分は妊娠したことがないので、王妃の言う『恐怖』とか『おぞましさ』とかいうのを本当の意味では理解できないかもしれない。
しかしそこにベネットの罪はない。
王太子妃、さらにそののち王妃となったのはご自分の意志ではないのか?
そして、その恩恵を誰よりも受けながらまだ不満を言い、自分だけが被害を受けているような顔をして他者を貶め傷つけている。
不遜だがメルは王妃のことをそう考えた。
考えたが、それをどう伝えればいいのかわからないメルをしり目に王妃はさらに言葉を続ける。
「ベネットは随分あなたの機嫌を取っているようだけど真に受けないことね。妹の踏み台にしかなれないあなたでは、化け物の親切でもありがたく思えるのでしょうが、つまりそれは、あなたが実家にとっての余計者である証拠にしかならないわ!」
「王妃様、それはあまりの言いよう!」
言葉の出てこないメルの代わりにばあやのサモワが王妃に抗議した。
「何が? 本当のことでしょう。化け物の機嫌を取ることでようやく実家の役に立っているようだけど、他の王族の迷惑になっているようじゃ本末転倒、だからちゃんと教えてあげているのよ」
人間関係には言ってはいけない言葉のラインというのもある。
それを平気で踏み越えていく者の言葉というのは、ただただその者に対する気持ちを凍り付かせていくだけである。
「まあ、いいわ。知りたいことは知ることができたから。もうちょっと己の立場をわきまえることね」
メルたちのそんな思いに頓着せず王妃は踵を返し部屋を出て言った。
「メル様、王妃様の言うことはあまりお気になさらず。ただの八つ当たりでございますよ」
ばあやはメルを慰めようと思ったが適切な言葉は見つからない。
一人にしてほしいというメルの懇願を受け入れ、ばあやは他の侍女とともに部屋を出る。
そして夕刻、ベネットが部屋に戻るために廊下を歩いているのを捕まえ、ばあやは仔細をベネットに報告した。
それを聞いたベネットは顔色を変え部屋に戻った。
部屋はまだ灯りもついておらずうす暗いまま、ベネットはメルがベットにいるのを確認し話しかけた。
「メル殿、母上がまた何かひどいことを言ったそうですね。明日にでも抗議に行きます、あなたは何も気にしないで……」
「やめてください、言ったところで泥仕合になるだけです」
メルは初めてベネットがメルにしてくれる行為に拒絶の意志を示した。
「しかし、ばあやや侍女たちにも聞きましたが、あれはあまりにもひどい」
メルは静かに首を振りひとしきり鼻をすすった後で口を開いた。
「私のためを思うのなら、もうこれ以上王家の方々と争うのは辞めてください。時間の無駄です」
「しかし……」
「ベネット様だってあのような暴言を平気で吐く方々と対峙して平気なわけないでしょうに……」
「……」
「私のことを思うのなら、国を出てレナート様のことろへ行くときに私も一緒にお連れください。私は王宮になど残りたくないし、実家にだって帰りたくないのです」
しかしそこにベネットの罪はない。
王太子妃、さらにそののち王妃となったのはご自分の意志ではないのか?
そして、その恩恵を誰よりも受けながらまだ不満を言い、自分だけが被害を受けているような顔をして他者を貶め傷つけている。
不遜だがメルは王妃のことをそう考えた。
考えたが、それをどう伝えればいいのかわからないメルをしり目に王妃はさらに言葉を続ける。
「ベネットは随分あなたの機嫌を取っているようだけど真に受けないことね。妹の踏み台にしかなれないあなたでは、化け物の親切でもありがたく思えるのでしょうが、つまりそれは、あなたが実家にとっての余計者である証拠にしかならないわ!」
「王妃様、それはあまりの言いよう!」
言葉の出てこないメルの代わりにばあやのサモワが王妃に抗議した。
「何が? 本当のことでしょう。化け物の機嫌を取ることでようやく実家の役に立っているようだけど、他の王族の迷惑になっているようじゃ本末転倒、だからちゃんと教えてあげているのよ」
人間関係には言ってはいけない言葉のラインというのもある。
それを平気で踏み越えていく者の言葉というのは、ただただその者に対する気持ちを凍り付かせていくだけである。
「まあ、いいわ。知りたいことは知ることができたから。もうちょっと己の立場をわきまえることね」
メルたちのそんな思いに頓着せず王妃は踵を返し部屋を出て言った。
「メル様、王妃様の言うことはあまりお気になさらず。ただの八つ当たりでございますよ」
ばあやはメルを慰めようと思ったが適切な言葉は見つからない。
一人にしてほしいというメルの懇願を受け入れ、ばあやは他の侍女とともに部屋を出る。
そして夕刻、ベネットが部屋に戻るために廊下を歩いているのを捕まえ、ばあやは仔細をベネットに報告した。
それを聞いたベネットは顔色を変え部屋に戻った。
部屋はまだ灯りもついておらずうす暗いまま、ベネットはメルがベットにいるのを確認し話しかけた。
「メル殿、母上がまた何かひどいことを言ったそうですね。明日にでも抗議に行きます、あなたは何も気にしないで……」
「やめてください、言ったところで泥仕合になるだけです」
メルは初めてベネットがメルにしてくれる行為に拒絶の意志を示した。
「しかし、ばあやや侍女たちにも聞きましたが、あれはあまりにもひどい」
メルは静かに首を振りひとしきり鼻をすすった後で口を開いた。
「私のためを思うのなら、もうこれ以上王家の方々と争うのは辞めてください。時間の無駄です」
「しかし……」
「ベネット様だってあのような暴言を平気で吐く方々と対峙して平気なわけないでしょうに……」
「……」
「私のことを思うのなら、国を出てレナート様のことろへ行くときに私も一緒にお連れください。私は王宮になど残りたくないし、実家にだって帰りたくないのです」
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