17 / 51
第17話 先代の呪われた王子レナート
しおりを挟む
王宮の庭園まで入り込んで敬語もなしにこの国の王太子に話しかける男。
明るい夜だったので黒髪の三十代くらいの男性の姿がメルにも見て取れた。
「伯父上!」
ベネットの言葉にメルは面食らった。
「よいしょっと!」
手持ちのカギフックの付いたロープを使って黒髪の男は二人のいるバルコニーにのぼってきた。
「お邪魔をして悪いけど、おそらく頼まれものはもしかして……」
男は懐から小さな箱を取り出しベネットに差し出した。
「ありがとうございます」
ベネットが決まり悪そうにそれを受け取る。
「そういや結婚したって話だったな。もしかしてその娘が……」
「ああ……、妻のメルです……」
「なるほどその贈り物というわけか」
二人のやり取りをわけも分からずメルは見守っていた。
先ほどベネットは彼のことを『伯父上』と言ったが、だとしたら王家の血を引く者ではないのか?
しかし目の前にいる黒髪の男は、少し裕福な庶民が身に着けるマントを身に着け、どう見ても平民の富裕層くらいの人物にしか見えない。
「それにしても勝手に庭園に入ってくるとは……」
ベネットがあきれたように黒髪の男に言う。
「はは、勝手知ったる王太子宮さ。他の王家の人間たちのいるところとは離れているし、警備の人間の目をすり抜ける経路など熟知しているさ」
そして、きょとんとした表情にメルに向き直ると男は自己紹介をした。
「初めまして、メル殿。現国王の異母兄のレナートと申します。今は隣国で細々と商売をやっています」
「王族の方が商売?」
「ああ、呪いがベネットの代に移った後、私は国を出て隣国でギルドなどとも連携しながら、希少なものを扱う商売をしているのさ」
呪いが移る?
少し浅黒い肌をした黒髪の男の顔には呪いの跡は見えない。
「呪いって一生モノではなかったのですか?」
メルが驚いて黒髪の男に聞き返した。
「ああ、呪いの条件はその国の跡継ぎの第一王子。ベネットも今の国王が王太子の時に生まれ、その瞬間に私の呪いはきれいさっぱり消えてしまった。呪いにかかるのは常に一人だけのようなんだ。でも、王族の奴らはね、一度でも呪われた者は忌み嫌って、新しい呪われた王子が生まれると以前の呪われた王子のことなんか関心も向けやしない。だから私が隠棲先の離宮から姿を消しても探そうともしなかったのさ」
「伯父上それ以上は……」
メルに説明をする伯父のレナートをベネットはたしなめた。
「どうしてだい? 君の奥さんなんだろ、ちゃんと説明してなかったのかい?」
レナートは首を傾げベネットに聞き返す。
「伯父上には、新しい呪われた王子が誕生し、僕が解放されこの国を出た後の身の振り方などを相談しておりますが、メルはあくまで王家が体裁を整えるために来てもらった形式上の妻ですので、王家や呪いの事情に関わらせるのは……」
「おいおい、形式上の妻って、だったら、希少な宝石を使ったこの贈り物はどういう意味なんだ、訳が分からん」
明るい夜だったので黒髪の三十代くらいの男性の姿がメルにも見て取れた。
「伯父上!」
ベネットの言葉にメルは面食らった。
「よいしょっと!」
手持ちのカギフックの付いたロープを使って黒髪の男は二人のいるバルコニーにのぼってきた。
「お邪魔をして悪いけど、おそらく頼まれものはもしかして……」
男は懐から小さな箱を取り出しベネットに差し出した。
「ありがとうございます」
ベネットが決まり悪そうにそれを受け取る。
「そういや結婚したって話だったな。もしかしてその娘が……」
「ああ……、妻のメルです……」
「なるほどその贈り物というわけか」
二人のやり取りをわけも分からずメルは見守っていた。
先ほどベネットは彼のことを『伯父上』と言ったが、だとしたら王家の血を引く者ではないのか?
しかし目の前にいる黒髪の男は、少し裕福な庶民が身に着けるマントを身に着け、どう見ても平民の富裕層くらいの人物にしか見えない。
「それにしても勝手に庭園に入ってくるとは……」
ベネットがあきれたように黒髪の男に言う。
「はは、勝手知ったる王太子宮さ。他の王家の人間たちのいるところとは離れているし、警備の人間の目をすり抜ける経路など熟知しているさ」
そして、きょとんとした表情にメルに向き直ると男は自己紹介をした。
「初めまして、メル殿。現国王の異母兄のレナートと申します。今は隣国で細々と商売をやっています」
「王族の方が商売?」
「ああ、呪いがベネットの代に移った後、私は国を出て隣国でギルドなどとも連携しながら、希少なものを扱う商売をしているのさ」
呪いが移る?
少し浅黒い肌をした黒髪の男の顔には呪いの跡は見えない。
「呪いって一生モノではなかったのですか?」
メルが驚いて黒髪の男に聞き返した。
「ああ、呪いの条件はその国の跡継ぎの第一王子。ベネットも今の国王が王太子の時に生まれ、その瞬間に私の呪いはきれいさっぱり消えてしまった。呪いにかかるのは常に一人だけのようなんだ。でも、王族の奴らはね、一度でも呪われた者は忌み嫌って、新しい呪われた王子が生まれると以前の呪われた王子のことなんか関心も向けやしない。だから私が隠棲先の離宮から姿を消しても探そうともしなかったのさ」
「伯父上それ以上は……」
メルに説明をする伯父のレナートをベネットはたしなめた。
「どうしてだい? 君の奥さんなんだろ、ちゃんと説明してなかったのかい?」
レナートは首を傾げベネットに聞き返す。
「伯父上には、新しい呪われた王子が誕生し、僕が解放されこの国を出た後の身の振り方などを相談しておりますが、メルはあくまで王家が体裁を整えるために来てもらった形式上の妻ですので、王家や呪いの事情に関わらせるのは……」
「おいおい、形式上の妻って、だったら、希少な宝石を使ったこの贈り物はどういう意味なんだ、訳が分からん」
13
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
へぇ。美的感覚が違うんですか。なら私は結婚しなくてすみそうですね。え?求婚ですか?ご遠慮します
如月花恋
ファンタジー
この世界では女性はつり目などのキツい印象の方がいいらしい
全くもって分からない
転生した私にはその美的感覚が分からないよ
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
死に戻り公爵令嬢が嫁ぎ先の辺境で思い残したこと
Yapa
ファンタジー
ルーネ・ゼファニヤは公爵家の三女だが体が弱く、貧乏くじを押し付けられるように元戦奴で英雄の新米辺境伯ムソン・ペリシテに嫁ぐことに。 寒い地域であることが弱い体にたたり早逝してしまうが、ルーネは初夜に死に戻る。 もしもやり直せるなら、ルーネはしたいことがあったのだった。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~
銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。
少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。
ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。
陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。
その結果――?
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる