マイ

べいかー

文字の大きさ
上 下
7 / 14

Side―B 第一章 怪盗ジョルジュ

しおりを挟む
「舞、昨日渡した、『怪盗ジョルジュ』の新作、読んでくれた?」
「もちろん、読ませて頂きました!
 それで、点数は…100点満点中、50点です!」
「げっ、辛口…。」
野村舞のむらまいと早野翔太はやのしょうたは、舞の入院先の病室で、話をしていた。そして話題は、他愛もない物から、翔太が書いている小説、「怪盗ジョルジュ」シリーズの最新作へと、移った。
「それで…具体的にどういった所が良くて、どういった所がダメだったのかな?」
「そうだな…。
 キャラクターの設定は、いつもながらうまいと思うよ。私も、『怪盗ジョルジュ』っていう人物のファンになっちゃいそう…ってかなってるしね。
 でも、トリックの設定が、いまひとつかな、って思ったんだ。私、ミステリーはそんなに、ってかほとんど読まないんだけど、そんな私でも、ちょっとトリックの作りが甘いかな、って思った。
 特に、怪盗ジョルジュが宝石を盗った後、部屋から脱出するシーンがあるよね?あそこのトリック、もう少し工夫できたら、もっと良くなると思うんだけどな…!」
「はい、アドバイス、いつもながらありがとうございます、野村舞先生!」
「いやいや、早野翔太くん。ベストセラー作家になるまで、もう少しだ。がんばってくれたまえ!」
こう2人は冗談を言って、笑った。
 「でも私、確かに翔太の書く、『怪盗ジョルジュ』シリーズは好きだけど、本当は、ラブストーリーの方が好きなんだ…。」
「前にも言ってたね。
 そっか、ラブストーリーか…。
 でも僕は、やっぱり、『怪盗ルパン』が好きだから、どうしてもミステリー、特に怪盗ものを、書きたくなるんだよな…。」
「でも翔太、翔太の書くジョルジュ、さっきも言ったけど、魅力的だと思うよ。
 もうちょっと頑張れば、本当に、ベストセラー作家も夢じゃない…、かもね。」
「またまた~。
 でも僕、ベストセラー作家になるのが、本当に夢なんだ!」
「そっか。じゃあ私、翔太の夢、応援するよ!」
「ありがとう、舞!」
こう言って2人は、笑った。

 同じ大学に通う大学生、早野翔太、野村舞。この2人の出会いは、高校時代に遡る。
 晴れて2人が高校生となった年の4月、2人は、同じ高校ではあるが、別々のクラスにそれぞれいた。そんな、縁遠いはずだった2人を結びつけたもの、それは…、
 「お互いに読書が好き。」
ということであった。
 舞、翔太の2人は本が好きであったため、高校最初の委員会は、2人とも「図書委員会」を選んだ。そして、高校の図書室で行われた、図書委員会の最初の会合で、初めて、2人は出会うこととなったのである。

 「はい、みなさん、新入生ということもありますし、まず、自己紹介を、しましょうか。」
図書委員会の担当の教師は、翔太や舞たちより少し若いだけの、新任に近い女性の教師であった。そして、舞や翔太たちは、順番に、自己紹介した。
 「1年2組、早野翔太です。僕はミステリー小説、特に、『怪盗ルパン』が好きです。よろしくお願いします!」
また、
 「1年5組、野村舞です。私は、胸がキュンキュンするような、ラブストーリーが好きです。よろしくお願いします!」
 この時のお互いのお互いに対する第一印象は、
 『何かあの眼鏡をかけた男の子、ちょっと暗そう…。まあ、私のタイプじゃないな。』(舞)
『あの女の子、確かに本は好きそうだけど、ちょっとメルヘンチックっていうか、何ていうか…、正直、僕のタイプでは、ないな。』(翔太)
というものであった。
 実際、この時、翔太は黒縁の眼鏡をかけており、頭は良さそうに見えるものの、決して、異性にモテるような風貌ではなかった。また、翔太は背も170cmとそんなに高くなく、(決して低くはないものの)どこにでもいるような、普通の高校生であった。
 また、舞の方は、背が低く、可愛らしい見た目であったが、積極的に男子と話をするタイプではなく、そのせいか、今まで特に男子たちから「モテる」という経験は、して来なかった。また、舞の見た目は、「お姫様」という言葉が似合いそうな物で、少しロリータ系であり、その雰囲気も含めて、舞の異性からの人気には、ブレーキがかかっていた。

 「はい、じゃあ今から、各クラスの、ペアを作りたいと思います。今からあみだくじをするので、それで、ペアを作ります。そのペアで、この図書室の受付や、掃除など、図書委員会の仕事を、行ってもらいます。
 じゃあ、まずはくじですね。」
そう言って図書委員会担当の教師は、あみだくじをした。その結果…、
 「はい、最初のペアは、2組、早野翔太さん、そして、5組、野村舞さんです。」
『げっ、あのメルヘンチックな子とペアか…。大丈夫かな?』(翔太)
『あの男の子、しゃべらなさそう…。うまくやっていけるかな?』(舞)
 2人はペアが決まった時、お互いにそう思った。

 そして次の日の放課後より、ペアでの図書委員会の仕事が、始まった。すると、お互いに、お互いの第一印象とは違う、いわゆる「ギャップ」があることが、分かってきた。
 「早野翔太くん…だよね?私、野村舞です。よろしくお願いします!」
「うん、野村さん。こちらこそよろしくね!」
そのあいさつから、2人の仕事は始まった。その日は、図書室の受付の仕事であった。2人は手分けして、初めてのこの仕事を、こなそうとした。
 そして、空き時間には、好きな本などの、話をした。
「確か、早野くんって、『怪盗ルパン』が好きだったっけ?」
「そうそう、覚えててくれたんだね。」
「まあね。それで早野くんは、ルパンのどういう所がいいの?」
「そうだな…。
 単純に、話の展開がかっこいい、ってのもあるけど、やっぱりルパンのキャラクターが、魅力的かな。
 知ってる?ルパンって、変装の達人なんだ。あんな風に僕も変装できたらかっこいいかなって、ルパンの小説を読んでたら、思うよ。」
「えっ、どこで変装するつもりなの?」
「それは…、時と場合によるかな…なんてね。」
「何それ…!早野くんって、案外面白いね!」
「面白い…かな?それに、案外は余計じゃない?」
「確かにそうかもね!」
「何だよそれ~。」
こうして2人で話をしてみると、
『早野くんって、意外と話ができる人なんだな。それに、ちょっと天然で、面白いかも!』(舞)
『野村さんって、見た目はメルヘンチックな女の子、って感じだけど、しゃべってみると、案外サバサバしてるんだな。これなら、うまくやっていけるかもしれない。』(翔太)
という風に、どちらかといえばマイナスだった2人の印象が、プラスに変わっていた。

 そして、2人は図書委員会の仕事をしていくうちに、もっと話をするようになり、どんどん仲良くなっていった。また、舞は英語が得意で数学が苦手、また翔太はその逆で、数学が得意で英語が苦手、ということが分かり、定期テスト前等になると、図書室で、お互いがお互いの勉強を見るようになった。(そして、その頃には、お互いに、「舞ちゃん」、「翔太くん」と、下の名前で呼ぶように、なっていた。)
 「舞ちゃん、ここの英文、どうやって訳すの?」
「ああ、これは…、関係代名詞だね。」
「関係代名詞か…。言われたら思い出すんだけど、どうしても、英文を前にすると、パニックになっちゃうんだよな…。」
「翔太くん!そんなことでは、フランスに行けないですよ!」
舞が冗談を言うと、
「いやいや、フランスはフランス語だから、大丈夫だよ…。」
と、翔太が真顔で答えた。
「いやいや、ムキにならないで。冗談だから!
 でも、英語ができないと、フランス語もできないんじゃない?」
翔太の返答に、舞はさらに、冗談とも本気ともつかない返答をした。
「いや、大丈夫…だと思うよ…。英語とフランス語って、似てるようで全然違うし…。それに僕、好きなことには没頭できるタイプだから…。フランス語は本気で勉強すれば、何とかなるよ…。」
翔太は少ししどろもどろになりながら、そう答えた。
「そっか。翔太くんが可哀想だから、この辺で追及は止めておくね!」
舞はそう言って、いたずらっぽく笑った。舞は、よく冗談で他人をからかう癖があったが、その後の天真爛漫な笑顔も魅力的で、憎めないキャラクターであった。
 「でも、英語とフランス語って、例えばどんな所が違うの?本当に全然違うの?」
「そうだな…。まあ、どっちもヨーロッパ系の言語だから、似てる部分もあるけど、アルファベットの読み方が、違ったりするんだ。
 例えば、フランス語では、『h』は基本的に、読まないんだ。
 だから、『ha』は『あ』って読むんだ。
 英語では、もちろんハ行の『は』だけどね。」
「えっ、そうなんだ!何か驚きだな。
 でも、英語とフランス語が違うなら、翔太くんも大丈夫だね!」
「フォローありがとう、舞ちゃん。」
こうして2人は、笑った。
 「さて、次は私が攻められる番かな…?」
「いやいや、攻める気なんてありませんから。」
「ホントに…?」
「本当だよ!」
「分かった分かった。でも、これ、二次関数の応用…だよね?」
「そうだね。なんだ舞ちゃん、分かってるじゃん!」
「いや、知ってるのは言葉だけだよ…。
 私、二次関数の計算、どうも苦手で…。そもそも、計算自体が苦手だし…。」
「分かった。えっとね、この計算方法はね…。」
翔太は丁寧に、舞に数学を教えた。
「ありがとう翔太くん!これで何とか、次の中間テスト、乗り切れそう!」
「僕もだよ舞ちゃん!僕も、英語頑張って、ルパンのライバルの、シャーロック・ホームズの母国、イギリスにも行けるようにしないとね!」
「何それ~。それは、翔太くんの英語力じゃ無理じゃない?」
「ちょっと、今『ありがとう』って言ってもらったばっかりなのに…。」
「冗談だよ冗談!
 …まあとにかく、次のテスト、頑張ろうね!」
「そうだね!」
舞と翔太は、中間テストが始まる前の頃にはすっかり打ち解け、冗談も軽快にとばせる間柄になっていた。

 そして、翔太、舞の2人が、お互いに恋心を持ち出したのは、その年、高校1年生の秋の頃であった。
 お互いに、恋に落ちるきっかけは、なかった―。気づけば自然と、恋が始まっていた、という表現が適切かもしれない。2人は、気づけば、図書委員会の仕事以外でも、2人で顔を合わせるようになっていた。また、気づけば、2人で過ごす時間が、長くなっていた。そして、気づけば―、お互いがお互いを、想い合うようになっていた。
 そしてその年の12月、翔太は意を決して、舞をデートに、誘うことにした。
「ねえねえ、舞ちゃんって、12月24日は、空いてる?」
「…うん、その日は空いてるよ。」
この時点で、舞は翔太の言いたいことが分かったが、
「どうしたの?」
と、舞はわざと、翔太にそう尋ねた。
「…いや、その日、一緒に映画、見に行けたらな、と思って。」
「…うん、いいよ。」
舞の返事は、デートに誘った翔太に負けないくらい、ぎこちないものであった。
「それで、何の映画?」
「ほら、最近流行りの、『Geekに恋した2人』、見に行きたいな、って思って…。」
「分かった。私もそれ、見たかったんだ。じゃあ、クリスマスイブの日に、見に行こっか。」
「うん、ありがとう、舞ちゃん。」
「こちらこそ。」
この日2人は、終始ぎこちなかった。

 「映画、良かったね!」
その年のクリスマスイブの日、舞が、翔太にそう話しかけた。
「そうだね。本当に良かった!」
翔太も、そう答えた。
「それで、舞ちゃん、今日は、舞ちゃんに大事な話があるんだ…。」
「何、急に改まって。」
「舞ちゃん、実は…、
 僕、舞ちゃんのことが好きなんだ。だから、僕と付き合って欲しい。
 …もちろん、急に言われても困るだろうから、返事は後でもいいよ。それに、舞ちゃんに他に好きな人がいたら、それはそれで、仕方ないのかな、いやでも…、」
「ちょっと、黙って!」
緊張で早口になり、余計なことまでしゃべりだした翔太を、舞は一旦制した。
「私も翔太くんに、大事な話があります。
 私も、翔太くんのことが、好きです。だから、翔太くんの告白、本当に嬉しい!
 こんな私でよければ、これから、付き合ってください。」
「…えっ、本当?」
「本当だよ。」
「ありがとう!」
こうして、聖なるクリスマスイブの日に、2人は付き合うことになった。
 「じゃあこれからは、『舞』って呼んでもいいかな?」
「もちろん!
じゃあ私も、『翔太』って呼ぶね!
 あと、みんなの前では、呼び捨ては止めてね。」
「分かったよ、舞。」
「早速だね、翔太。」
こう言って2人は、笑った。

 その後、2人は付き合いを続け、あの日、翔太が告白したクリスマスイブから、2年の歳月が流れた。2人は高3になり、受験生として、最後の追い込みの冬を、迎えていた。翔太も舞も、受験勉強のため、(高2の頃に比べると)逢える時間は減っていたが、いつもの図書館で、2人一緒に勉強するなど、時間を上手く使い、2人の時間を作り出していた。
 「ああ、やっぱり私、数学は苦手。このままだと、志望校落ちそう、ってか落ちる…。」
「僕も、英語苦手だから、おんなじ気持ちだよ…。
 でも、僕も舞に、教えられる所は教えるから、舞も、英語の勉強、教えてね。」
「うん、一緒に頑張ろうね!」
2人は、学部はそれぞれ異なるが、同じ大学を志望していた。それは、2人の実家から少し遠い所にあり、2人はそれぞれ、大学の近くのアパートに下宿する予定であった。
「それで僕ね、大学に入学したら、やってみたいことがあるんだ。」
「えっ、なになに?」
「実は…、僕ね、
 小説を、書いてみたいんだ。」
「へえ~そうなんだ。どんな小説?」
「とりあえず、タイトルだけ決めてるんだけど…。
 タイトルは、『怪盗ジョルジュ』っていうんだ。
 僕、『怪盗ルパン』が好きじゃん?だから、フランスが舞台の、怪盗の話を、書いてみたいんだ。」
「なるほどね。私、怪盗ものはあんまり読んだことないけど、翔太の書いた小説、早く読んでみたいな。」
「一応、受験が終わったら書き始める予定だから、完成はもう少し先になると思うけどね。」
「分かった。」
この日、翔太は自分の「夢」のようなものを、初めて他の人に話した。
「それで、舞は、大学に入学したらやりたいことって、ないの?」
「私は…、身長をもっと伸ばしたい、かな。」
「…えっ!?」
「冗談冗談。でも、私には、理想の姿があるっていうか…。
 私、もっと背が高くて、『美人』って誰からも言われるような女性に、憧れてるんだ。でも、現実の私は、背が低いし、理想とは程遠いな、と思って…。」
「そうなんだね。
 でも、舞は可愛らしいし、いい所、いっぱいあると思うよ。
 それに、しゃべってみたら、意外とサバサバしてる、っていうのも、ギャップがあっていいと思うしね。
 舞には舞の、いい所があるから、舞はそのままで、いいんじゃないかな?」
「ありがとう。翔太は優しいね。
 私、今他の人に初めて、私の理想の女の子像について、話した!翔太に聞いてもらえて、ちょっとスッキリしたかな。」
「それは良かった。僕も『怪盗ジョルジュ』について話すの、舞が初めてなんだ。
 お互い、何かあったら、何でも話そうね!」
「そうだね!」
そして2人は、来る大学入試に向け、その後も勉強をし続けた。

 「やった、合格だ!」
「私も、合格!」
翌年の春、翔太と舞は、合格発表を見に、受験した大学まで、来ていた。
「お互い、どっちかが落ちて、どっちかが受かってても、恨みっこなしね。」
「うん、分かった。」
そう2人は、大学に来るまでに約束をしていた。
 「でも、2人とも受かって、良かったね!」
「ホントに!」
2人は、記念に、受験番号の掲示板をバックに、ツーショット写真を撮った。
「これで、『怪盗ジョルジュ』も解禁だね、翔太!」
「うん、まだ大学生にはなってないけど、今すぐにでも書きたい気分だよ。」
「そっか。頑張ってね!」
「うん!」
2人は、次の目標に向けての話をし、また未来の大学生活に、思いをはせた。
 そして、舞が病気で入院するのは、2人が大学に入学して、しばらく経った後のことであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生した平凡顔な捨て子が公爵家の姫君?平民のままがいいので逃げてもいいですか

青波明来
恋愛
覚えているのは乱立するビルと車の波そして沢山の人 これってなんだろう前世の記憶・・・・・? 気が付くと赤ん坊になっていたあたし いったいどうなったんだろ? っていうか・・・・・あたしを抱いて息も絶え絶えに走っているこの女性は誰? お母さんなのかな?でも今なんて言った? 「お嬢様、申し訳ありません!!もうすぐですよ」 誰かから逃れるかのように走ることを辞めない彼女は一軒の孤児院に赤ん坊を置いた ・・・・・えっ?!どうしたの?待って!! 雨も降ってるし寒いんだけど?! こんなところに置いてかれたら赤ん坊のあたしなんて下手すると死んじゃうし!! 奇跡的に孤児院のシスターに拾われたあたし 高熱が出て一時は大変だったみたいだけどなんとか持ち直した そんなあたしが公爵家の娘? なんかの間違いです!!あたしはみなしごの平凡な女の子なんです 自由気ままな平民がいいのに周りが許してくれません なので・・・・・・逃げます!!

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

夫の幼馴染が毎晩のように遊びにくる

ヘロディア
恋愛
数年前、主人公は結婚した。夫とは大学時代から知り合いで、五年ほど付き合った後に結婚を決めた。 正直結構ラブラブな方だと思っている。喧嘩の一つや二つはあるけれど、仲直りも早いし、お互いの嫌なところも受け入れられるくらいには愛しているつもりだ。 そう、あの女が私の前に立ちはだかるまでは…

愛する誰かがいるんなら私なんて捨てればいいじゃん

ヘロディア
恋愛
最近の恋人の様子がおかしいと思っている主人公。 ある日、和やかな食事の時間にいきなり切り込んでみることにする…

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

処理中です...