彼女のdiary

べいかー

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追憶 十

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 「今度さ、2人で、曲作らない?」
そう話を持ちかけてきたのは、史香の方であった。
「私、今風の曲って、作ったことないから、ちょっと憧れてるんだ~。一応、ピアノのレッスンの先生の宿題で、クラシック風の曲は作ったことあるんだけどね。もちろん、クラシックとポピュラーミュージックって、同じ音楽でも全然違うから、うまくできるかどうか分からないけど、挑戦してみたい!
 それに、付き合っている人との共同作業って、何か憧れない?私だけかな?」
「そんなことないよ。いいじゃんそれ!やろうよ!俺もずっとこのサークルで音楽やってきて、いつかは自分の曲、作ってみたいって思ってたから、挑戦してみたいな。もちろん、俺一人の力では無理だけど、史香となら、やれそうな気がする。一緒に、頑張ろう!
 ただ、俺、音楽経験が浅いから、作曲はまだ無理かな…。でも、作詞ならいけるかも!
 そうだ、俺が作詞をして、それに史香が、メロディーをつける、ってのはどうかな?」
「いいね、それ!その方法で行きましょうか、作詞家の大野優先生!」
「何、急に改まって。」
「ううん。言ってみたかっただけ。」
「そうですか、分かりました。作曲家の新川史香大先生!」
「ちょっと、真似しないでよ!それに、『大』は余計だよ~。」
「そうかな。お似合いだと思うけど。」
「やめて~。」
そう言いながら史香は、優の元に近づき、2人は少しの間、抱き合った。史香にとって優の胸元は、1番落ち着ける場所になっており、また、そんな史香を、優は可愛らしく、そして愛しく思うのであった。
 かくして、2人の共同作業が、始まったのである。
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