20kHz

べいかー

文字の大きさ
上 下
12 / 33

恋心 三

しおりを挟む
 そして、そんな他愛もない話や、真面目な話をしていくうちに、亜美子の気持ちに、変化が訪れるのを、亜美子自身が感じていた。
 「最初、トシさんと通話した時、第一印象は、最悪だった。この人は、もしかしたらストーカーかもしれないなんて、思ったりもした。
 でも、トシさんのことを知って、トシさんはそんな人じゃない、トシさんには、謝らないといけない、私はそう思った。
 でも、今、私の気持ちはそんなんじゃない。私は、トシさんのことをもっと知りたい。もっとトシさんと話をして、トシさんと繋がっていたい。そして、私は…、
 トシさんと一緒になりたいんだ。」
 これが、亜美子の心の声であった。
 今まで亜美子は、母子家庭で育ち、余裕がなかったためか、恋愛らしい恋愛を、したことがなかった。もちろん、亜美子に好意を寄せる男子は昔からいたが、亜美子の方から男子を好きになることはなく、
「中途半端なお付き合いは、したくない。」
という亜美子の気持ちから、これまで亜美子は誰とも付き合ってこなかった。
 しかし、今回は違った。自分でも、今までの男性と、どこが違うのか分からない。ましてや、トシさんとは会ったこともなく、声を聴いているだけなのに…。それだけであるにも関わらず、亜美子は、確実にトシに惹かれていた。これは、遅ればせながらの、亜美子の「初恋」かもしれない、亜美子は、そう思った。
 そして、亜美子は、こうも思った。
「人間、恋をする時は、理由なんて、ないのかもしれない。よく、
『あの人の、ここが好き。こんな所が好き。』
とか、テレビなどで言っているが、そんなもの、当てにならない。私は、今になって初めて、それが分かった。
 人を好きになるっていうのは、理屈じゃない。その証拠に私は、こんなにもトシさんに、惹かれている。
 …私は、トシさんのことが好きだ。」
亜美子は、自分の中に芽生えた初めての気持ちに、少し戸惑いながらも、その気持ちを大切にしよう、そう思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

帰らなければ良かった

jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。 傷付いたシシリーと傷付けたブライアン… 何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。 *性被害、レイプなどの言葉が出てきます。 気になる方はお避け下さい。 ・8/1 長編に変更しました。 ・8/16 本編完結しました。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。

天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」 目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。 「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」 そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――? そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た! っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!! っていうか、ここどこ?! ※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました ※他サイトにも掲載中

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

処理中です...