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おっさん、提案する

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「おっさん……どうだったの?」
「ガリウス――気になるから早く」
「ガリウス様、いかがでしたの?」

 簡単な更新手続きの後、礼を述べて退室した俺を待ち受けていたのは――
 シア、リア、フィー達三人だ。
 我慢出来ない様で、出てきた俺を囲みエサをねだる猫みたいに詰め寄ってくる。
 備え付けのソファーに座らず、どうやら立って待っていたらしい。
 まあ――その気持ちは分からないでもない。
 冒険者ギルド個室前にある待合所。
 ここは仲間の昇級審査結果を聞くまでパーティメンバーが待機する場所である。
 結果如何によって天国と地獄を味わう胃の痛い場所だ。
 俺はいつも昇級の確信を以てこいつらを送り出してきたが、こいつら自身が俺の昇級に立ち会うのは初めてだ。
 心配するのも仕方ない。
 期待に満ちた視線に応じるように不敵に微笑み掛けると、更新したばかりの冒険者ライセンスを取り出し三人に見せる。
 魔導処理の為されたライセンス――それは今やA級を示す金色に輝いていた。

「金色のライセンス!
 ってことは――やったね、おっさん!」
「ん。異例の三階級特進」
「おめでとうございます、ガリウス様!
 今までの功績が評価されたとはいえ――さすがですわ!」

 抱き着きキスしかねんばかりの勢いで俺に密着し喜ぶ三人。
 そのはしゃぎぶりに俺まで嬉しくなる。
 等級にこだわるつもりはないが、こいつらと共に生きると決めた以上、金銭は幾らあっても困る事は無い。
 D級とA級ともなると獲得できる報酬は文字通り天と地ほども違う。
 少しは甲斐性があるところを見せれただろうか?
 三人の方が等級が上では何とも締まらないからな。
 別にマウントを取りたい訳じゃないが……
 生涯を共にする以上、年齢に関係なく対等でいられるように努力すべきだ。
 自分を磨き相応しいパートナーになる。
 気持ちもそうだが最低限そこは大事にしていかなければならない。
 感極まったのか涙を流すシアや、無表情のまま口元をピクピクさせるリア、興奮のあまり法衣をはだけ始めるフィー達の頭を順番に撫でながら俺は告げる。

「心配かけたな。
 だがこれで俺もA級――お前達の仲間入りだ。
 これからもよろしく頼む」
「うん!」
「任せてほしい」
「末永くお願い致しますわ。
 昼の冒険も夜の冒険も」
「ごほん。
 最後のフィーの言葉は聞かなかった事にする。
 さて、俺が昇級した事によりパーティの評価点も上昇――
 これにより俺達【気紛れ明星】はついにSランクに叙せられた」
「「「おお~~~」」」
「なので打ち合わせ通り、精霊都市のもう一つの異名――
 ダンジョンに挑戦しようと思う。
 せっかく迷宮都市とも呼ばれる場所に来たのに、ダンジョンにアタックしないのは勿体ないしな。
 幸いS級だと迷宮転移陣を使用し最深度の600階層から探索できるらしい。
 今の俺達が後れを取る事は無いと思うが、場所が場所だ。
 慎重には慎重を重ねたい。
 この都市に来て携わった事件に関するこれまでの功績に対し特別報酬金も出たことだし、今日は装備品などをゆっくり見直そう。
 武器・防具の新調、探索用魔導具の購入も含め足を運ぶぞ。いいか?」
「「「はい!」」」
「いい返事だ。
 ただまあ――まずは前祝いといこう。
 丁度昼時だし……
 俺も今日ばかりは祝杯を上げたい」
「「「ヽ(・ω・)/ズコー」」」

 出鼻を挫く俺の提案に――
 三人は期待通りのズッコケリアクションを返すのだった。
 うむ。古典的で良い。

 
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