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おっさん、激励される
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「久しぶりだな、ガリウス。
また会えて嬉しいよ」
好意的な笑顔と握手で出迎えてくれたのは開拓村の代表者であるスコットだ。
40前後の逞しい壮年で、俺と大して変わらない歳で見事に村をまとめあげてる。
開拓状況に応じて税率が変わる王国との交渉役を一身に担っているだけあって頭も切れるし、村の相談役も兼ねるくらい情にも厚い。
村人たちも明るく大らかな人が多く、滞在中は気持ちよく過ごすことが出来た。
差し出された手に俺も笑顔で応じながら、さて何と答えるべきかを悩んでいると、事情を察したかのようにスコットが声を掛けてくれる。
「変わりなさそうで何よりだが……
今日はあの素敵なお嬢さんたちはいないのか?」
「実は……」
スコットの気遣いに感謝しつつ俺はあいつらと別れた事を告げる。
そして可能なら、しばらくここに滞在し開拓を手伝いたい旨を付け加える。
驚くスコットだったが、心配で目線を合わせられない俺の不安を吹き飛ばすくらい力強く俺の背中を叩いてくる。
「何をしょげた顔をしている。
お前なら大歓迎だ!
さあ、ついてこい。
お前の事を忘れた奴はいないだろうが、あれから新しく仲間に入った奴もいる。
改めて皆に紹介したい」
豪快でありながら心の籠った激励。
俺は二重の意味で涙を堪えながらスコットの後に続く。
「あれ、おっちゃんだ」
「わ~い、おっちゃん!
みんな、おっちゃんがきたぞ~」
広場で昼休憩をしている村人達の方へ向かうと、スコットと一緒に歩く俺を子供達が目ざとく発見する。
どこにでもいる生意気盛りの奴等だが……
親が忙しく一緒に過ごせない時間が多いので寂しいのだろう。
以前来た時、暇を見つけては遊んでやったのをまだ覚えてたらしい。
鬼ごっこや探検。
一番人気のあったのは勿論冒険者ごっこだ。
パーティメンバー扮する魔王一味を成敗するお子様勇者隊。
害はないけど派手に光る照明魔道具を貸してやったら大喜びをしていた。
ただ唯一の誤算だったのは……
楽しい時の子供は体力無限循環機関を積んでいる事を失念してた事だ。
子供たちが満足するまで付き合う頃には俺達がへばっていた。
下手な冒険より過酷だったな、あれは。
群れを為して襲い掛かってくる子供たちを適度にあしらいながら俺は思い返す。
しかしこいつらときたら背中に乗ったり頭に搭乗したりとやりたい放題だ。
感傷に浸る暇さえありゃしない。
まあこのくらいの子はこれくらい元気があった方が良い。
板金鎧の重さに比べれば子供達を身体に乗せるくらい負担でも何でもないしな。
俺という巨大な乗り物に乗ってカッコよく登場したいのだろう。
どこか誇らしげに進め~と命じる子供達に苦笑しながら俺は足を進める。
動き出した未来に向かって。
また会えて嬉しいよ」
好意的な笑顔と握手で出迎えてくれたのは開拓村の代表者であるスコットだ。
40前後の逞しい壮年で、俺と大して変わらない歳で見事に村をまとめあげてる。
開拓状況に応じて税率が変わる王国との交渉役を一身に担っているだけあって頭も切れるし、村の相談役も兼ねるくらい情にも厚い。
村人たちも明るく大らかな人が多く、滞在中は気持ちよく過ごすことが出来た。
差し出された手に俺も笑顔で応じながら、さて何と答えるべきかを悩んでいると、事情を察したかのようにスコットが声を掛けてくれる。
「変わりなさそうで何よりだが……
今日はあの素敵なお嬢さんたちはいないのか?」
「実は……」
スコットの気遣いに感謝しつつ俺はあいつらと別れた事を告げる。
そして可能なら、しばらくここに滞在し開拓を手伝いたい旨を付け加える。
驚くスコットだったが、心配で目線を合わせられない俺の不安を吹き飛ばすくらい力強く俺の背中を叩いてくる。
「何をしょげた顔をしている。
お前なら大歓迎だ!
さあ、ついてこい。
お前の事を忘れた奴はいないだろうが、あれから新しく仲間に入った奴もいる。
改めて皆に紹介したい」
豪快でありながら心の籠った激励。
俺は二重の意味で涙を堪えながらスコットの後に続く。
「あれ、おっちゃんだ」
「わ~い、おっちゃん!
みんな、おっちゃんがきたぞ~」
広場で昼休憩をしている村人達の方へ向かうと、スコットと一緒に歩く俺を子供達が目ざとく発見する。
どこにでもいる生意気盛りの奴等だが……
親が忙しく一緒に過ごせない時間が多いので寂しいのだろう。
以前来た時、暇を見つけては遊んでやったのをまだ覚えてたらしい。
鬼ごっこや探検。
一番人気のあったのは勿論冒険者ごっこだ。
パーティメンバー扮する魔王一味を成敗するお子様勇者隊。
害はないけど派手に光る照明魔道具を貸してやったら大喜びをしていた。
ただ唯一の誤算だったのは……
楽しい時の子供は体力無限循環機関を積んでいる事を失念してた事だ。
子供たちが満足するまで付き合う頃には俺達がへばっていた。
下手な冒険より過酷だったな、あれは。
群れを為して襲い掛かってくる子供たちを適度にあしらいながら俺は思い返す。
しかしこいつらときたら背中に乗ったり頭に搭乗したりとやりたい放題だ。
感傷に浸る暇さえありゃしない。
まあこのくらいの子はこれくらい元気があった方が良い。
板金鎧の重さに比べれば子供達を身体に乗せるくらい負担でも何でもないしな。
俺という巨大な乗り物に乗ってカッコよく登場したいのだろう。
どこか誇らしげに進め~と命じる子供達に苦笑しながら俺は足を進める。
動き出した未来に向かって。
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