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七章 二年目ふゆの月
87 ふゆの月24日、聖夜祭③
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全面的にシルキーが悪いが、拒否しなかったイーヴィンにだって問題がないとは言い切れない。
おかげでシルキーはついつい調子に乗って、どこまでなら許してくれるのか試したくなってしまった。妖精の悪戯好きは本能だ、仕方がない。
結局、残すところが唇だけになったところで、怖気付いてやめてしまった。
片付けを終えて、イーヴィンの隣へ行った時、彼女の唇の端に、フォンダンショコラがちょこりと付いていた。
これは、もしかして遠回しにキスを強請られているのだろうか。
ゴクリとシルキーの喉が鳴る。
隣で立ったままでいるシルキーに、イーヴィンは小首を傾げて見上げた。
「シルキー?」
小さな唇が、シルキーを呼ぶ。
誘われるように、シルキーは彼女の唇に近づいていってーー
「ねぇ、シルキー。飲み物が飲みたいんだけど、ビーフシチューに使った赤ワインはまだ残っている?」
シルキーはガクリと膝をついた。
残念なような、安心したような。
意表を突かれた彼はパチパチと瞬きをして、それから彼女の問いに答えるようにコクリと頷く。
「レモンとシナモンとクローブは?」
もちろん、ある。
シルキーの城にはあらゆるスパイスが揃っているのだ。
なんといっても、彼の趣味はハーブ栽培とスパイス収集なのである。
「そっか。じゃあ、フォンダンショコラのお礼にホットワインを作ってあげる。いつもシルキーばっかりにさせているのも申し訳ないしね。たまには、私もお料理しないと」
果たしてホットワインは料理に入るのか。
そんなツッコミをすることが出来る人は、今この場にはいない。
いそいそとキッチンへ向かうイーヴィンの背をぼんやりと見送りながら、シルキーは胸をドキドキさせていた。
だって、イーヴィンの手作りである。
感謝祭のプリンに続いて、今度はホットワイン。
嬉しくて嬉しくて、泣きそうだ。
思わずハンカチを取り出すシルキーに気付くことなく、イーヴィンはキッチンに立った。
「赤ワインに、お砂糖。それからレモンのスライスに、シナモンスティックとクローブを入れてっと」
小鍋に入れたワインにポチャンポチャンと香辛料を投入し、火にかける。
沸騰直前で火からおろして、茶こしで漉したらホットワインの出来上がりだ。
香辛料を探している途中で見つけたラム酒を数滴、シルキーのホットワインにだけ入れる。
こうすると、少しだけリッチな味になるのだと母が言っていたのを思い出したからだ。
イーヴィンはまだお子様舌なので、そのリッチさはわからない。
「はい、どうぞ」
ホットワインのカップを持っていくと、シルキーが正座して待っていた。
畏まった様子でおずおずとカップを受け取る彼に、どうしてそんな態度なんだと可笑しくなって、イーヴィンはクスクスと笑う。
「もう。どうして、そんなに畏まっているの?ホットワインくらい、ちゃんと作れるよ」
ふざけて怒ったふりをすれば、そうじゃないと慌てるシルキーがおかしくてたまらない。
おかげでイーヴィンは笑いが止まらず、ホットワインが温くなるまで笑い続けた。
味見で飲んだ一口で、ちょっと酔っていたのかもしれない。
こうして、聖夜祭の夜は賑やかに更けていくのだった。
おかげでシルキーはついつい調子に乗って、どこまでなら許してくれるのか試したくなってしまった。妖精の悪戯好きは本能だ、仕方がない。
結局、残すところが唇だけになったところで、怖気付いてやめてしまった。
片付けを終えて、イーヴィンの隣へ行った時、彼女の唇の端に、フォンダンショコラがちょこりと付いていた。
これは、もしかして遠回しにキスを強請られているのだろうか。
ゴクリとシルキーの喉が鳴る。
隣で立ったままでいるシルキーに、イーヴィンは小首を傾げて見上げた。
「シルキー?」
小さな唇が、シルキーを呼ぶ。
誘われるように、シルキーは彼女の唇に近づいていってーー
「ねぇ、シルキー。飲み物が飲みたいんだけど、ビーフシチューに使った赤ワインはまだ残っている?」
シルキーはガクリと膝をついた。
残念なような、安心したような。
意表を突かれた彼はパチパチと瞬きをして、それから彼女の問いに答えるようにコクリと頷く。
「レモンとシナモンとクローブは?」
もちろん、ある。
シルキーの城にはあらゆるスパイスが揃っているのだ。
なんといっても、彼の趣味はハーブ栽培とスパイス収集なのである。
「そっか。じゃあ、フォンダンショコラのお礼にホットワインを作ってあげる。いつもシルキーばっかりにさせているのも申し訳ないしね。たまには、私もお料理しないと」
果たしてホットワインは料理に入るのか。
そんなツッコミをすることが出来る人は、今この場にはいない。
いそいそとキッチンへ向かうイーヴィンの背をぼんやりと見送りながら、シルキーは胸をドキドキさせていた。
だって、イーヴィンの手作りである。
感謝祭のプリンに続いて、今度はホットワイン。
嬉しくて嬉しくて、泣きそうだ。
思わずハンカチを取り出すシルキーに気付くことなく、イーヴィンはキッチンに立った。
「赤ワインに、お砂糖。それからレモンのスライスに、シナモンスティックとクローブを入れてっと」
小鍋に入れたワインにポチャンポチャンと香辛料を投入し、火にかける。
沸騰直前で火からおろして、茶こしで漉したらホットワインの出来上がりだ。
香辛料を探している途中で見つけたラム酒を数滴、シルキーのホットワインにだけ入れる。
こうすると、少しだけリッチな味になるのだと母が言っていたのを思い出したからだ。
イーヴィンはまだお子様舌なので、そのリッチさはわからない。
「はい、どうぞ」
ホットワインのカップを持っていくと、シルキーが正座して待っていた。
畏まった様子でおずおずとカップを受け取る彼に、どうしてそんな態度なんだと可笑しくなって、イーヴィンはクスクスと笑う。
「もう。どうして、そんなに畏まっているの?ホットワインくらい、ちゃんと作れるよ」
ふざけて怒ったふりをすれば、そうじゃないと慌てるシルキーがおかしくてたまらない。
おかげでイーヴィンは笑いが止まらず、ホットワインが温くなるまで笑い続けた。
味見で飲んだ一口で、ちょっと酔っていたのかもしれない。
こうして、聖夜祭の夜は賑やかに更けていくのだった。
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