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四章 一年目はるの月
45 はるの月22日、女神と兄神①
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シルキーに謝ったら、スッキリした気持ちで穏やかに暮らせると思っていた。
なのに、謝ってもイーヴィンのモヤモヤは晴れない。
正しくは、晴れたと思ったのも束の間、あっという間に再び曇天になってしまった、といった感じだ。
「うーん……」
ヤマダサンのタマゴが孵化して、ヒヨコが一羽増えたので、ミヤタサンと名付けた。
ミヤタサンの誕生はとても嬉しかったのに、その気持ちも気付くと萎んでしまっている。
このところ、イーヴィンは気分の浮き沈みが激しい。
原因は、分かっていた。
どう考えても、シルキーである。
彼が悪いわけじゃない。どちらかといえば、イーヴィンが悪い。またしても。
彼がイーヴィンに優しい理由が、もしかしたら女神の恩恵によるチートさからくるものじゃないかと疑ってから、胸が度々重苦しくなるようになったのだ。
フワフワの黄色い小さな体を、イーヴィンの掌の上で休めるミヤタサンは、控えめに言っても愛くるしい。
頰に優しく押し当てれば、ピィピィと甘えるように鳴く。
「はぁぁ……」
綿毛のような柔らかな体は、癒される。
だけど、イーヴィンの気持ちを晴れやかにするには至らない。
「あぁもう!モヤモヤして気持ち悪すぎ!私らしくない!……ん?私らしく?そうだよ、私らしくないじゃない。こんなところでグジグジしてないで、女神様に確認しに行こう」
チートなせいでシルキーが義務的に優しくしてくれているなら、悲しいけれど解除してもらうしかない。
出来ればそんなところに女神が配慮していませんようにと願うが、果たしてどうだろうか。
ミヤタサンをヤマダサンのそばに下ろして、イーヴィンは立ち上がる。
自宅に戻って女神から貰ったベルを持ち、彼女は泉へと向かった。
女神の泉は相変わらず綺麗だ。
水面に映る、自分の顔の情けなさに苦笑いが浮かぶ。
「こんな顔してたの?失恋した女の子みたいな顔じゃない」
この期に及んで、未だ聞かない方が良いかもしれないなんて思う弱気な気持ちを押し込めて、イーヴィンは貢ぎ物を泉へ投げ入れる代わりにベルを鳴らした。
なのに、謝ってもイーヴィンのモヤモヤは晴れない。
正しくは、晴れたと思ったのも束の間、あっという間に再び曇天になってしまった、といった感じだ。
「うーん……」
ヤマダサンのタマゴが孵化して、ヒヨコが一羽増えたので、ミヤタサンと名付けた。
ミヤタサンの誕生はとても嬉しかったのに、その気持ちも気付くと萎んでしまっている。
このところ、イーヴィンは気分の浮き沈みが激しい。
原因は、分かっていた。
どう考えても、シルキーである。
彼が悪いわけじゃない。どちらかといえば、イーヴィンが悪い。またしても。
彼がイーヴィンに優しい理由が、もしかしたら女神の恩恵によるチートさからくるものじゃないかと疑ってから、胸が度々重苦しくなるようになったのだ。
フワフワの黄色い小さな体を、イーヴィンの掌の上で休めるミヤタサンは、控えめに言っても愛くるしい。
頰に優しく押し当てれば、ピィピィと甘えるように鳴く。
「はぁぁ……」
綿毛のような柔らかな体は、癒される。
だけど、イーヴィンの気持ちを晴れやかにするには至らない。
「あぁもう!モヤモヤして気持ち悪すぎ!私らしくない!……ん?私らしく?そうだよ、私らしくないじゃない。こんなところでグジグジしてないで、女神様に確認しに行こう」
チートなせいでシルキーが義務的に優しくしてくれているなら、悲しいけれど解除してもらうしかない。
出来ればそんなところに女神が配慮していませんようにと願うが、果たしてどうだろうか。
ミヤタサンをヤマダサンのそばに下ろして、イーヴィンは立ち上がる。
自宅に戻って女神から貰ったベルを持ち、彼女は泉へと向かった。
女神の泉は相変わらず綺麗だ。
水面に映る、自分の顔の情けなさに苦笑いが浮かぶ。
「こんな顔してたの?失恋した女の子みたいな顔じゃない」
この期に及んで、未だ聞かない方が良いかもしれないなんて思う弱気な気持ちを押し込めて、イーヴィンは貢ぎ物を泉へ投げ入れる代わりにベルを鳴らした。
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