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四章 一年目はるの月
39 はるの月14日、感謝祭③
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次に向かったのは、大工のファーガルのところだ。
大工の家らしく、丸太を組んだログハウスが、彼の職場兼住居である。
ドアに近づいたところで、イーヴィンは紙が貼られていることに気が付いた。
「あれ?前はこんなのなかったけどな……?」
只今、外出中。夕方には戻ります。
南の牧場にいるので、急ぎの場合はそちらへ。
残念なことに、今日は南のリアンの牧場へ出かけているらしい。
イベントの日は大抵家にいるものだと思っていたので、イーヴィンはこんなこともあるんだなぁと思った。
ゲームの世界に転生すると、見えていなかったことも見えるようになるから面白い。
どうせこれから行くところだったし、とイーヴィンはリアンの牧場へ向かうことにした。
リアンの牧場は、イーヴィンの牧場と同じくらいの広さだった。
条件が揃えば、牧場の敷地を拡張することも出来るのだが、一年や二年で出来るものではない。若干の優遇があるイーヴィンでさえまだまだなのだから、リアンはもっと無理だろう。
初めて見る彼の牧場に、彼女は興味津々である。
どことなく近い雰囲気はあるものの、やはり主が違えば全く同じにはならないらしい。
田舎の少女趣味なおばあちゃん家といった雰囲気のイーヴィンの牧場に対し、リアンの牧場は秘密基地のような雰囲気があった。
木の上にあるツリーハウスは、いかにも男子が好みそうである。
ツリーハウスから降りるには、滑り台と滑り棒を使うらしい。太い枝には、ブランコが吊り下がっていた。
どうやらリアンは、随分と牧場生活を楽しんでいるようだ。しかし、その方向性はイーヴィンとは違う。
牧場として発展させたいイーヴィンと、趣味全開で牧場を改造するリアン。この世界において、どちらの楽しみ方も正しい牧場ライフである。
ツリーハウスを過ぎて少し進むと、飛び石が現れた。
ピョンピョンと跳ねるようにそれらを踏みながら、イーヴィンは牧場の奥へと足を進める。
牧場の奥まったところに住居があるのは、イーヴィンの牧場と同じようだ。
「え……これが家なの?」
思わず、イーヴィンはそう呟いた。
彼女の戸惑いも無理はない。目の前にあったのは、住居というより倉庫のような建物だったからだ。
赤レンガの小さな工場を改造したような建物、と言うのが妥当だろうか。やはりこちらも男の子らしい感じで、無骨な雰囲気がある。良く言えば味があり、悪く言えばボロい。
「こういうの、なんだっけ?えっと……男の隠れ家?」
窓にブラインドでも付いていたら、はねの隙間に指を差し入れて外を見ていそうだ。
かっこつけながら渋い顔で黄昏時の空を眺める、ダンディーな男性の姿が脳裏を掠める。
(童顔のリアンは似合わないけど、厳つい顔つきのファーガルなら似合いそう。葉巻をくわえて、ウイスキーを持って……椅子にどっしり座って三つ揃いのスーツ着て……やだ、似合う。似合うよ、ファーガル!ドン?ボス?カポ?うーん……カポはないかな)
大工の家らしく、丸太を組んだログハウスが、彼の職場兼住居である。
ドアに近づいたところで、イーヴィンは紙が貼られていることに気が付いた。
「あれ?前はこんなのなかったけどな……?」
只今、外出中。夕方には戻ります。
南の牧場にいるので、急ぎの場合はそちらへ。
残念なことに、今日は南のリアンの牧場へ出かけているらしい。
イベントの日は大抵家にいるものだと思っていたので、イーヴィンはこんなこともあるんだなぁと思った。
ゲームの世界に転生すると、見えていなかったことも見えるようになるから面白い。
どうせこれから行くところだったし、とイーヴィンはリアンの牧場へ向かうことにした。
リアンの牧場は、イーヴィンの牧場と同じくらいの広さだった。
条件が揃えば、牧場の敷地を拡張することも出来るのだが、一年や二年で出来るものではない。若干の優遇があるイーヴィンでさえまだまだなのだから、リアンはもっと無理だろう。
初めて見る彼の牧場に、彼女は興味津々である。
どことなく近い雰囲気はあるものの、やはり主が違えば全く同じにはならないらしい。
田舎の少女趣味なおばあちゃん家といった雰囲気のイーヴィンの牧場に対し、リアンの牧場は秘密基地のような雰囲気があった。
木の上にあるツリーハウスは、いかにも男子が好みそうである。
ツリーハウスから降りるには、滑り台と滑り棒を使うらしい。太い枝には、ブランコが吊り下がっていた。
どうやらリアンは、随分と牧場生活を楽しんでいるようだ。しかし、その方向性はイーヴィンとは違う。
牧場として発展させたいイーヴィンと、趣味全開で牧場を改造するリアン。この世界において、どちらの楽しみ方も正しい牧場ライフである。
ツリーハウスを過ぎて少し進むと、飛び石が現れた。
ピョンピョンと跳ねるようにそれらを踏みながら、イーヴィンは牧場の奥へと足を進める。
牧場の奥まったところに住居があるのは、イーヴィンの牧場と同じようだ。
「え……これが家なの?」
思わず、イーヴィンはそう呟いた。
彼女の戸惑いも無理はない。目の前にあったのは、住居というより倉庫のような建物だったからだ。
赤レンガの小さな工場を改造したような建物、と言うのが妥当だろうか。やはりこちらも男の子らしい感じで、無骨な雰囲気がある。良く言えば味があり、悪く言えばボロい。
「こういうの、なんだっけ?えっと……男の隠れ家?」
窓にブラインドでも付いていたら、はねの隙間に指を差し入れて外を見ていそうだ。
かっこつけながら渋い顔で黄昏時の空を眺める、ダンディーな男性の姿が脳裏を掠める。
(童顔のリアンは似合わないけど、厳つい顔つきのファーガルなら似合いそう。葉巻をくわえて、ウイスキーを持って……椅子にどっしり座って三つ揃いのスーツ着て……やだ、似合う。似合うよ、ファーガル!ドン?ボス?カポ?うーん……カポはないかな)
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