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六章 シュエット・ミリーレデルの秘密
79 どうして私は長女なの③
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「そうか、残念じゃ……これ以外となると、一晩一緒のベッドで眠るとか、公衆の面前で‘’あーん”をするとか、そういうヤツになるのじゃが……どれが良いかの?」
「ねっ……! あっ……⁉︎」
鈍チンのシュエットも、ピピの提案には驚きを隠せない。
禁書の効果でエリオットと離れられなくなってから三週目。
試練の内容がいよいよ恋人らしくなってきたことは、喜ぶべきなのか、嘆くべきなのか。
おそらく最終試練が迫ってきているのだろうと察せられるが、その最終試練とやらの内容がキからはじまってスで終わる──もはや言っているも同義なのだが、ボカすのは彼女の精神安定のためである──な気がしてならない。
(額や頰じゃなくて、唇でする、あのキス)
実のところ、齢二十歳にしてファーストキスも済ませたことがないシュエットは、まさかの可能性に思い至ってクラクラしそうになった。
もちろん、知識としてはある。甘くないことも、失敗するとガチンと歯が当たって痛いことも、知っている。
(それも、恋人でもないエリオットとする、キス)
初めてのキスは恋人と。
そう思っていたシュエットにとって、それはとてもいけないことのように思えた。
しかし同時に、エリオットなら良いかもという気持ちにもなってくる。
(私より動揺しているのだもの。もしも私が失敗したらどうしようと考えるより、エリオットの方が心配になってしまうわ)
「わ、かった。今日中に、どちらかすれば良いんだな⁈」
「へっ?」
ぼんやりと考え事をしていたシュエットの隣で、エリオットが怒鳴るようにそう言った。
反射的に、シュエットの口から呆けたような声が漏れる。
『今日中にキスしてあげるから。覚悟してなよ、マイレディ』
エリオットはシュエットの顎にそっと指を添えて、挑発するように深紅の目で見下ろしてきた。
「今日、中……?」
「ああ、今日中だ。だって、僕たちには時間がないからね」
「時間が、ない……」
「うん。だって、そうだろう? ヴォラティル魔導書院の引っ越しまでに、フクロウカフェをオープンさせる。そう、決めたのだから」
エリオットに言われて、そこでようやくシュエットは現実に戻った。
考え事をしていたところに不意打ちにエリオットの声が聞こえてきて、混乱したシュエットは白昼夢をみていたようだ。
(一体、どこから妄想だったのか……)
とりあえず、エリオットの指はシュエットの顎に添えられていないので、そこは妄想である。
(マイレディ、なんて彼が言うわけないから、それも妄想ね)
困ったものである。
ついつい『エリオットが恋人だったら』という妄想が捗って。
(額でも頰でも、どちらにキスをされたとしても、私はきっとドキドキしちゃうわ)
困る。本当に、困る。
なんで自分は長女なのかと、恨みたくなるではないか。
「ねっ……! あっ……⁉︎」
鈍チンのシュエットも、ピピの提案には驚きを隠せない。
禁書の効果でエリオットと離れられなくなってから三週目。
試練の内容がいよいよ恋人らしくなってきたことは、喜ぶべきなのか、嘆くべきなのか。
おそらく最終試練が迫ってきているのだろうと察せられるが、その最終試練とやらの内容がキからはじまってスで終わる──もはや言っているも同義なのだが、ボカすのは彼女の精神安定のためである──な気がしてならない。
(額や頰じゃなくて、唇でする、あのキス)
実のところ、齢二十歳にしてファーストキスも済ませたことがないシュエットは、まさかの可能性に思い至ってクラクラしそうになった。
もちろん、知識としてはある。甘くないことも、失敗するとガチンと歯が当たって痛いことも、知っている。
(それも、恋人でもないエリオットとする、キス)
初めてのキスは恋人と。
そう思っていたシュエットにとって、それはとてもいけないことのように思えた。
しかし同時に、エリオットなら良いかもという気持ちにもなってくる。
(私より動揺しているのだもの。もしも私が失敗したらどうしようと考えるより、エリオットの方が心配になってしまうわ)
「わ、かった。今日中に、どちらかすれば良いんだな⁈」
「へっ?」
ぼんやりと考え事をしていたシュエットの隣で、エリオットが怒鳴るようにそう言った。
反射的に、シュエットの口から呆けたような声が漏れる。
『今日中にキスしてあげるから。覚悟してなよ、マイレディ』
エリオットはシュエットの顎にそっと指を添えて、挑発するように深紅の目で見下ろしてきた。
「今日、中……?」
「ああ、今日中だ。だって、僕たちには時間がないからね」
「時間が、ない……」
「うん。だって、そうだろう? ヴォラティル魔導書院の引っ越しまでに、フクロウカフェをオープンさせる。そう、決めたのだから」
エリオットに言われて、そこでようやくシュエットは現実に戻った。
考え事をしていたところに不意打ちにエリオットの声が聞こえてきて、混乱したシュエットは白昼夢をみていたようだ。
(一体、どこから妄想だったのか……)
とりあえず、エリオットの指はシュエットの顎に添えられていないので、そこは妄想である。
(マイレディ、なんて彼が言うわけないから、それも妄想ね)
困ったものである。
ついつい『エリオットが恋人だったら』という妄想が捗って。
(額でも頰でも、どちらにキスをされたとしても、私はきっとドキドキしちゃうわ)
困る。本当に、困る。
なんで自分は長女なのかと、恨みたくなるではないか。
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