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五章 シュエット・ミリーレデルの悩み
70 エリオットの提案②
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カフェオレに、バターたっぷりのレーズンパン。それから目玉焼きとカリカリに焼いたベーコン。一人では到底作ることがない豪華な朝食に、シュエットのおなかがグゥと鳴る。
二人揃って「いただきます」と手を合わせて食べ始めた。
だが、エリオットが何か言いたげにソワソワしているものだから、シュエットは食べづらくって仕方がない。
困ったように「ふぅ」とため息を吐いてレーズンパンを手放すと、エリオットを見た。
「エリオット? そう見つめられると、食べづらいわ。言いたいことがあるなら聞くから、話してちょうだい」
「そ、そうか。その、あの、だな。昨日、シュエットが店のフクロウたちに家族を見つけたいと言っていたから、僕にも何かできることはないかと考えてみたんだ」
「え、そうなの?」
ただの愚痴だったのに。
まさか解決策を考えてくれるとは思ってもみなくて、シュエットはたじろいだ。
ただ、聞いてもらいたかっただけなのだ。解決策を考えたかったわけじゃない。
だけど、せっかく考えてくれたエリオットにはそんなことを言えなくて、シュエットは困ったように唇を引き結んだ。
「ああ、そうなんだ!」
まさかシュエットが戸惑っているなんて思いもしないエリオットは、柘榴石のような目をキラキラさせて、身を乗り出さんばかりに語った。
要約するとこうだ。
『ミリーレデルのフクロウ百貨店を、フクロウカフェにしよう』と。
カフェと聞いて、シュエットは思わず「え」と言った。
だがエリオットもそれは想定内だったようで、「大丈夫だ」とすぐに答える。
エリオットが考えるもふカフェは、シュエットが知っている一般的なカフェとはちょっと違う。
料理はなし。ドリンクだけ。
ワンドリンク制で、一時間につき千五百ゴールド。
来店客は、店内のフクロウたちと自由な時間を過ごす。もちろん、フクロウが嫌がらない程度に、だ。
「触れ合ってみたら、フクロウのかわいさがわかると思う。そうしたら、家族に迎えたいという気持ちになる人も出てくるかもしれないだろう? どうだろうか」
「どうって……」
エリオットの提案に、シュエットは驚くばかりだ。
ほんのちょっぴり、余計なお世話だと思った自分が恥ずかしい。
「すごいよ、エリオット! 私では思いつきもしなかったわ。そうね、ここはペルッシュ横丁だもの。新しいもの好きな人がたくさんいる。準備は大変そうだけど、試してみる価値があると思う。それになにより……すごく、楽しそう!」
テーブルの上にあったエリオットの手をギュッと握り、シュエットはもう一度「すごいよ、エリオット」と彼を見つめた。
二人揃って「いただきます」と手を合わせて食べ始めた。
だが、エリオットが何か言いたげにソワソワしているものだから、シュエットは食べづらくって仕方がない。
困ったように「ふぅ」とため息を吐いてレーズンパンを手放すと、エリオットを見た。
「エリオット? そう見つめられると、食べづらいわ。言いたいことがあるなら聞くから、話してちょうだい」
「そ、そうか。その、あの、だな。昨日、シュエットが店のフクロウたちに家族を見つけたいと言っていたから、僕にも何かできることはないかと考えてみたんだ」
「え、そうなの?」
ただの愚痴だったのに。
まさか解決策を考えてくれるとは思ってもみなくて、シュエットはたじろいだ。
ただ、聞いてもらいたかっただけなのだ。解決策を考えたかったわけじゃない。
だけど、せっかく考えてくれたエリオットにはそんなことを言えなくて、シュエットは困ったように唇を引き結んだ。
「ああ、そうなんだ!」
まさかシュエットが戸惑っているなんて思いもしないエリオットは、柘榴石のような目をキラキラさせて、身を乗り出さんばかりに語った。
要約するとこうだ。
『ミリーレデルのフクロウ百貨店を、フクロウカフェにしよう』と。
カフェと聞いて、シュエットは思わず「え」と言った。
だがエリオットもそれは想定内だったようで、「大丈夫だ」とすぐに答える。
エリオットが考えるもふカフェは、シュエットが知っている一般的なカフェとはちょっと違う。
料理はなし。ドリンクだけ。
ワンドリンク制で、一時間につき千五百ゴールド。
来店客は、店内のフクロウたちと自由な時間を過ごす。もちろん、フクロウが嫌がらない程度に、だ。
「触れ合ってみたら、フクロウのかわいさがわかると思う。そうしたら、家族に迎えたいという気持ちになる人も出てくるかもしれないだろう? どうだろうか」
「どうって……」
エリオットの提案に、シュエットは驚くばかりだ。
ほんのちょっぴり、余計なお世話だと思った自分が恥ずかしい。
「すごいよ、エリオット! 私では思いつきもしなかったわ。そうね、ここはペルッシュ横丁だもの。新しいもの好きな人がたくさんいる。準備は大変そうだけど、試してみる価値があると思う。それになにより……すごく、楽しそう!」
テーブルの上にあったエリオットの手をギュッと握り、シュエットはもう一度「すごいよ、エリオット」と彼を見つめた。
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