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三章 シュエット・ミリーレデルの非日常
27 いつも通りとはいかない朝②
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見れば、左手首に二連のブレスレットがはめられていた。
「なにこれ。こんなの、知らない」
パールとゴールドの二連のブレスレットは、シュエットの手首にフィットしていた。
窓から注ぐ朝日に照らされて、キラキラ輝いている。
買った覚えもなければ、もらった覚えもない。
じゃあ一体どうしてくっついているのか。
「うーん……さっぱりわからない」
昨日のことを思い返してみると、そもそも寝た記憶がなかった。
「というか、パジャマを着た記憶さえないんですけど……」
(ハッ! これはもしや、コルネーユから借りた恋愛小説にあった、朝チュンというやつでは)
ふと目覚めたら、隣には見知らぬ男。二日酔いの頭を抱えながら、これはどういうことだと呟くヒロイン。そして、男は言うのだ。昨夜はかわいかったよ、と──!
あいにく二日酔いによる頭痛などはないが、もしかしてということもある。
シュエットは胸をドキドキさせながら、ベッドへ戻った。
バサァと勢い良くふとんをめくる。
しかし、寝乱れたシーツの波間に、男はいない。
「まぁ、そうですよね」
だって、シュエットである。
情熱的な一夜の恋、もとい過ちなんて犯すはずがない。
地道に真面目にコツコツと。冒険なんていたしません。だって、三姉妹の長女なんだもの。
そんなシュエットに、ラパスとモリフクロウが呆れたように「ホゥ」と鳴いた。
(そう、ラパスとモリフクロウがホゥって──)
「って、ええ⁉︎ なんでラパスの隣にゆうべのモリフクロウがいるの?」
ラパスの止まり木に、ラパスとモリフクロウがとまっている。
と同時に、シュエットは走馬灯のように昨夜のことを思い出した。
飛来したモリフクロウ。
階下に現れたローブの男。
そして、モリフクロウが発動させた魔法陣──。
剥がしたふとんを抱えたまま、シュエットは固まった。
そして、まさかとブレスレットを睨む。
(魔法陣から現れた光は、私の左手首に絡みついていた。あの魔術が行使された結果がこれなのだとしたら……?)
試しに、シュエットはブレスレットを外そうとした。
──バチン!
シュエットの手を阻むように、ブレスレットが拒否する。強い静電気のような衝撃を感じて、彼女は慌てて手を引っ込めた。
「どういうことなの……?」
──ビィィィィィ!
けたたましいチャイムが鳴り響く。
「こんな時に、来客? 誰かしら、もう」
考えたいことが山ほどある。
目を離したらモリフクロウが逃げてしまいそうで、シュエットは気が気ではない。
──ビィィィィィ!
──ビィィィィィ!
しかし、チャイムはシュエットを急かすように鳴り続ける。
無視し続けることも出来るが、近所迷惑になりかねない。
シュエットはしぶしぶ、パジャマの上からカーディガンを羽織ると、玄関へと向かった。
「今開けますから! チャイムを連打しないでください」
モリフクロウが逃げないかチラチラと確認しながら、シュエットはドアノブに手をかけた。
いつもだったら覗き窓から相手を確認してから開けるのに、モリフクロウに気を取られた彼女はそれを怠る。
「はい、どちら様ですか?」
開けた扉の先に居たのは、昨夜見たローブの男。のはずだ。たぶん。
今は顔を隠すつもりもないのか、その素顔をシュエットの前に晒している。
「なにこれ。こんなの、知らない」
パールとゴールドの二連のブレスレットは、シュエットの手首にフィットしていた。
窓から注ぐ朝日に照らされて、キラキラ輝いている。
買った覚えもなければ、もらった覚えもない。
じゃあ一体どうしてくっついているのか。
「うーん……さっぱりわからない」
昨日のことを思い返してみると、そもそも寝た記憶がなかった。
「というか、パジャマを着た記憶さえないんですけど……」
(ハッ! これはもしや、コルネーユから借りた恋愛小説にあった、朝チュンというやつでは)
ふと目覚めたら、隣には見知らぬ男。二日酔いの頭を抱えながら、これはどういうことだと呟くヒロイン。そして、男は言うのだ。昨夜はかわいかったよ、と──!
あいにく二日酔いによる頭痛などはないが、もしかしてということもある。
シュエットは胸をドキドキさせながら、ベッドへ戻った。
バサァと勢い良くふとんをめくる。
しかし、寝乱れたシーツの波間に、男はいない。
「まぁ、そうですよね」
だって、シュエットである。
情熱的な一夜の恋、もとい過ちなんて犯すはずがない。
地道に真面目にコツコツと。冒険なんていたしません。だって、三姉妹の長女なんだもの。
そんなシュエットに、ラパスとモリフクロウが呆れたように「ホゥ」と鳴いた。
(そう、ラパスとモリフクロウがホゥって──)
「って、ええ⁉︎ なんでラパスの隣にゆうべのモリフクロウがいるの?」
ラパスの止まり木に、ラパスとモリフクロウがとまっている。
と同時に、シュエットは走馬灯のように昨夜のことを思い出した。
飛来したモリフクロウ。
階下に現れたローブの男。
そして、モリフクロウが発動させた魔法陣──。
剥がしたふとんを抱えたまま、シュエットは固まった。
そして、まさかとブレスレットを睨む。
(魔法陣から現れた光は、私の左手首に絡みついていた。あの魔術が行使された結果がこれなのだとしたら……?)
試しに、シュエットはブレスレットを外そうとした。
──バチン!
シュエットの手を阻むように、ブレスレットが拒否する。強い静電気のような衝撃を感じて、彼女は慌てて手を引っ込めた。
「どういうことなの……?」
──ビィィィィィ!
けたたましいチャイムが鳴り響く。
「こんな時に、来客? 誰かしら、もう」
考えたいことが山ほどある。
目を離したらモリフクロウが逃げてしまいそうで、シュエットは気が気ではない。
──ビィィィィィ!
──ビィィィィィ!
しかし、チャイムはシュエットを急かすように鳴り続ける。
無視し続けることも出来るが、近所迷惑になりかねない。
シュエットはしぶしぶ、パジャマの上からカーディガンを羽織ると、玄関へと向かった。
「今開けますから! チャイムを連打しないでください」
モリフクロウが逃げないかチラチラと確認しながら、シュエットはドアノブに手をかけた。
いつもだったら覗き窓から相手を確認してから開けるのに、モリフクロウに気を取られた彼女はそれを怠る。
「はい、どちら様ですか?」
開けた扉の先に居たのは、昨夜見たローブの男。のはずだ。たぶん。
今は顔を隠すつもりもないのか、その素顔をシュエットの前に晒している。
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