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一章 シュエット・ミリーレデルの日常
04 ペルッシュ横丁のフクロウ百貨店①
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魔導師や魔導書が当たり前に存在するこの国で、三人きょうだいの一番上に生まれるなんて、なんてついていないのだろう。
もしもきょうだいが運試しに出れば、昔話にある通りに、長女や長男が真っ先に、それも手酷く失敗することぐらい、この国の人ならば誰だって知っている。
シュエット・ミリーレデルは、三人姉妹の長女だ。
せめて貧しい家の子であったなら、少しは出世の望みもあっただろう。
だが残念ながら、彼女はあいにくそうではなかった。
ミリーレデル家は、代々王都で魔導師御用達のペットショップを経営している。
魔導師が好むような、フクロウやネコといった魔法動物や関連商品を販売しているのだ。
魔導通信機が普及してからフクロウの人気は落ち込みがちだが、それでも経営状況は上々。両親は裕福だった。
真面目でしっかりしたシュエット、ちょっとおバカだけれど可愛らしいアルエット、誰もが口をそろえて美人だと褒めそやすエグレット。
彼女たちの父、ミリーレデル氏は、三人の娘が自慢である。
そのため、王都でも指折りの学校へ三人を通わせた。
長女のシュエットは、三人の中でもとりわけ努力家だった。
二人の妹の模範となるように、いつもキリキリと根を詰めて頑張っていた。
その結果分かったのは、長女の自分では成功の見込みがない、ということである。
リシュエル王国は、魔導師の国だ。
偉大な魔導師を数多く輩出し、生活にも魔術が欠かせない。魔導式ランプや魔導式通信機など、魔力がなければ使えない便利な道具は多い。使えなかったとしても、代替え品がないわけではないのだけれど。
残念なことに、シュエットは魔力保有量がゼロという珍しい体質だった。
体内で作った魔力を体内に留めておくことができず、放出してしまうのである。
これは、致命的だった。
魔力保有量が多ければ多いほど成功しやすい傾向にあるこの国で、シュエットの体質は足枷でしかない。どんなに勉強が出来ても、魔力がなければ実行出来ないのだから。
シュエットはがっかりした。
けれど幸いなことに、家業に魔力は全く関係がない。
可愛らしいもふもふに囲まれた生活も悪くないじゃないと、シュエットは家業を引き継ぐことにしたのである。
学校を卒業したシュエットに任されたのは、縮小して随分と小さくなったフクロウ専門店だった。
王都の東、ペルッシュ横丁にある、ミリーレデルのフクロウ百貨店。それが、シュエットの仕事場である。
ペルッシュ横丁には、色鉛筆のような愛らしい建物が立ち並んでいる。
赤、青、黄色、緑にオレンジ。一軒だって、同じ色は存在しない。
なんでも昔、この横丁は薄暗く、どれがどの店なのか見分けがつかなかったのだとか。
目的の店にすんなり行くことが出来ない人が多く、見分けるために塗ったらしい。
まるで絵本の世界のような風景に、観光客も訪れるほどだ。
あいにく、ミリーレデルのフクロウ百貨店には入って来やしないのだけれど。
ミリーレデルのフクロウ百貨店は、花紺青色の建物だ。
花を彷彿とさせる淡い紺色のこの店を、シュエットはとても気に入っている。
建物は三階建てで、一階が店舗、二階が倉庫で、三階はシュエットが住んでいた。
もしもきょうだいが運試しに出れば、昔話にある通りに、長女や長男が真っ先に、それも手酷く失敗することぐらい、この国の人ならば誰だって知っている。
シュエット・ミリーレデルは、三人姉妹の長女だ。
せめて貧しい家の子であったなら、少しは出世の望みもあっただろう。
だが残念ながら、彼女はあいにくそうではなかった。
ミリーレデル家は、代々王都で魔導師御用達のペットショップを経営している。
魔導師が好むような、フクロウやネコといった魔法動物や関連商品を販売しているのだ。
魔導通信機が普及してからフクロウの人気は落ち込みがちだが、それでも経営状況は上々。両親は裕福だった。
真面目でしっかりしたシュエット、ちょっとおバカだけれど可愛らしいアルエット、誰もが口をそろえて美人だと褒めそやすエグレット。
彼女たちの父、ミリーレデル氏は、三人の娘が自慢である。
そのため、王都でも指折りの学校へ三人を通わせた。
長女のシュエットは、三人の中でもとりわけ努力家だった。
二人の妹の模範となるように、いつもキリキリと根を詰めて頑張っていた。
その結果分かったのは、長女の自分では成功の見込みがない、ということである。
リシュエル王国は、魔導師の国だ。
偉大な魔導師を数多く輩出し、生活にも魔術が欠かせない。魔導式ランプや魔導式通信機など、魔力がなければ使えない便利な道具は多い。使えなかったとしても、代替え品がないわけではないのだけれど。
残念なことに、シュエットは魔力保有量がゼロという珍しい体質だった。
体内で作った魔力を体内に留めておくことができず、放出してしまうのである。
これは、致命的だった。
魔力保有量が多ければ多いほど成功しやすい傾向にあるこの国で、シュエットの体質は足枷でしかない。どんなに勉強が出来ても、魔力がなければ実行出来ないのだから。
シュエットはがっかりした。
けれど幸いなことに、家業に魔力は全く関係がない。
可愛らしいもふもふに囲まれた生活も悪くないじゃないと、シュエットは家業を引き継ぐことにしたのである。
学校を卒業したシュエットに任されたのは、縮小して随分と小さくなったフクロウ専門店だった。
王都の東、ペルッシュ横丁にある、ミリーレデルのフクロウ百貨店。それが、シュエットの仕事場である。
ペルッシュ横丁には、色鉛筆のような愛らしい建物が立ち並んでいる。
赤、青、黄色、緑にオレンジ。一軒だって、同じ色は存在しない。
なんでも昔、この横丁は薄暗く、どれがどの店なのか見分けがつかなかったのだとか。
目的の店にすんなり行くことが出来ない人が多く、見分けるために塗ったらしい。
まるで絵本の世界のような風景に、観光客も訪れるほどだ。
あいにく、ミリーレデルのフクロウ百貨店には入って来やしないのだけれど。
ミリーレデルのフクロウ百貨店は、花紺青色の建物だ。
花を彷彿とさせる淡い紺色のこの店を、シュエットはとても気に入っている。
建物は三階建てで、一階が店舗、二階が倉庫で、三階はシュエットが住んでいた。
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