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プロローグ
02 ヴォラティル魔導書院の禁書②
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エリオットは開け放たれた窓の外を見上げて、覇気のない声で「あーあ」と呟いた。
彼の視線の先には、一羽のフクロウがパタパタと翼を羽ばたかせて飛んでいく姿がある。
実に自由で羨ましい。いや、そうではなく。
「どうしようね」
とても困っているようには思えない、のんびりとした声。
だが、事態はそんなのんきな状況ではなかった。
「逃げないでぇ! お願いだから、戻ってきてくださぁぁぁい!」
窓枠から身を乗り出して遠い空へ手を伸ばすのは、エリオットの部下であり、この魔導書院の副院長である。
遥かかなたに消えていくフクロウは、何を隠そう、このヴォラティル魔導書院が所蔵する魔導書であった。
ここが世にも珍しいのは、所蔵する魔導書が全て、鳥の姿をしているからだ。
ゆえに、魔導書院の中は本棚の代わりにたくさんの止まり木が設置されていて、鳥たちは自由気ままに好きな所で止まって休むようになっている。
魔導書院の建物を囲むアイアン製の柵には美しい細工が施されていて、それも相まってか、ヴォラティル魔導書院は鳥籠のようだと表されていた。
魔導書は、大型の鳥から小型の鳥まで、実にさまざまな姿をしている。
貸し出しする際には特殊な魔法陣で貸し出し審査を行い、魔導書のかたちにしてから渡され、戻ってきた魔導書は、再び魔法陣にて鳥の姿に戻されるシステムだ。
フクロウの姿をしている魔導書は、禁書と呼ばれる類のもので、絶対に外へ出してはいけないものだ。主に、王族の婚姻に関わる古の魔術が記載されているためである。
普段、フクロウたちは院長室にある止まり木で休むことが多い。
王族関連の魔導書だからなのか、王弟であるエリオットのそばを好んでいるようだった。
禁書は、三羽。
まんまるもふもふな【嫁選びの書、お面を被ったような顔をしている【婚約の書、雪のように白い翼を持つ【婚姻の書である。
モリフクロウは、エリオットがいい歳して恋人の一人もいないのを気にかけているようで、嫁選びの魔導書らしく、いつも物言いたげにジトリと彼を見つめていることが多い。
その日、エリオットは押し付けられた雑務に嫌気がさしていた。
ひと月後に控えた魔導書院の引っ越しのため、いつもにはない仕事が日々増えながら舞い込み、そうでなくともやる気のないエリオットのやる気を削いでくる。
その上、兄である王は未だ独身を貫く弟に要らぬお節介を焼いて、縁談をしこたま持ってくるのだ。
山と積まれた釣書に、エリオットのやる気はますます目減りする。
彼の視線の先には、一羽のフクロウがパタパタと翼を羽ばたかせて飛んでいく姿がある。
実に自由で羨ましい。いや、そうではなく。
「どうしようね」
とても困っているようには思えない、のんびりとした声。
だが、事態はそんなのんきな状況ではなかった。
「逃げないでぇ! お願いだから、戻ってきてくださぁぁぁい!」
窓枠から身を乗り出して遠い空へ手を伸ばすのは、エリオットの部下であり、この魔導書院の副院長である。
遥かかなたに消えていくフクロウは、何を隠そう、このヴォラティル魔導書院が所蔵する魔導書であった。
ここが世にも珍しいのは、所蔵する魔導書が全て、鳥の姿をしているからだ。
ゆえに、魔導書院の中は本棚の代わりにたくさんの止まり木が設置されていて、鳥たちは自由気ままに好きな所で止まって休むようになっている。
魔導書院の建物を囲むアイアン製の柵には美しい細工が施されていて、それも相まってか、ヴォラティル魔導書院は鳥籠のようだと表されていた。
魔導書は、大型の鳥から小型の鳥まで、実にさまざまな姿をしている。
貸し出しする際には特殊な魔法陣で貸し出し審査を行い、魔導書のかたちにしてから渡され、戻ってきた魔導書は、再び魔法陣にて鳥の姿に戻されるシステムだ。
フクロウの姿をしている魔導書は、禁書と呼ばれる類のもので、絶対に外へ出してはいけないものだ。主に、王族の婚姻に関わる古の魔術が記載されているためである。
普段、フクロウたちは院長室にある止まり木で休むことが多い。
王族関連の魔導書だからなのか、王弟であるエリオットのそばを好んでいるようだった。
禁書は、三羽。
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その上、兄である王は未だ独身を貫く弟に要らぬお節介を焼いて、縁談をしこたま持ってくるのだ。
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