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四章
86 恐怖のミントテロ①
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卒業まで残り三カ月。
ローズマリーたちには、卒業試験が言い渡された。
『誕生花に蕾をつけること』
これが、彼女たちに課せられた試験である。
与えられた誕生花の種は、妖精と契約者の手によって三カ月間大事に育てられる。
蕾をつけられたら卒業。つけられなければ、契約解除。
授業をきちんと受けていれば、よほどのことがない限り卒業できる内容となっている。
誕生花というと生まれた日に因んだ花と思いがちだが、そうではない。
誕生花はその名の通り、誕生するために必要な花である。
ぷっくりとした大きな蕾は、妖精の子を育むベッド──人に置き換えるなら母の胎のような役割を持っている。
妖精とその契約者によって育てられた誕生花は、然るべき手段によって世界のどこかへ妖精魔法で転送され、転送された先で何かしらを起因にして妖精を生むのだ。
雪深い森の奥にある湖に送られた誕生花が、奇跡的に注がれた月明かりによってヴィアベルを生んだように。
街中の片隅に送られた誕生花が、イチゴのショートケーキを転んで台無しにしてしまった女の子の涙によって妖精を生んだように。
スルスで育てられた誕生花から、妖精たちは生まれゆく。
スルスができるまでは、妖精に認められたとある一族が担っていたというその役目を、今は卒業試験として受け継いでいるらしい。
この花を育てるにあたって、大事な注意点がある。
それは、与えて良いのは水だけで、栄養剤や肥料は決して与えてはいけない、ということだ。
「栄養剤や肥料を与えられた誕生花から、妖精は生まれない。そこから生まれるのは、誰からも望まれない、忌まわしい存在……らしいですわ」
クルリと巻いた尻尾に小さな種を絡ませて、ローズマリーと契約したイチゴのショートケーキの妖精が、彼女の言葉を後押しするように「ピギ!」と鳴いた。
「課金できなかった理由は、そういうわけなんですねぇ」
ゲームでは知り得なかった情報に、ペリーウィンクルは「なるほど、それで……」と頷いた。
肥料はログインボーナス、栄養剤は課金アイテムだった。
どちらも、箱庭で使用することによって世話を忘れた花が元気になったり、花の生育を早めたりすることができる。
栄養剤は肥料の上位互換、といった感じだ。
だが、卒業間近に出される誕生花の育成だけはどうやっても課金できないようになっていて、早く育ててエンディングに漕ぎ着けたいという、数多の乙女たちを悩ませた。
もっとも、前世のペリーウィンクルは箱庭パートの方に夢中だったから、悩むこともなかったのだが。
ローズマリーたちには、卒業試験が言い渡された。
『誕生花に蕾をつけること』
これが、彼女たちに課せられた試験である。
与えられた誕生花の種は、妖精と契約者の手によって三カ月間大事に育てられる。
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授業をきちんと受けていれば、よほどのことがない限り卒業できる内容となっている。
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誕生花はその名の通り、誕生するために必要な花である。
ぷっくりとした大きな蕾は、妖精の子を育むベッド──人に置き換えるなら母の胎のような役割を持っている。
妖精とその契約者によって育てられた誕生花は、然るべき手段によって世界のどこかへ妖精魔法で転送され、転送された先で何かしらを起因にして妖精を生むのだ。
雪深い森の奥にある湖に送られた誕生花が、奇跡的に注がれた月明かりによってヴィアベルを生んだように。
街中の片隅に送られた誕生花が、イチゴのショートケーキを転んで台無しにしてしまった女の子の涙によって妖精を生んだように。
スルスで育てられた誕生花から、妖精たちは生まれゆく。
スルスができるまでは、妖精に認められたとある一族が担っていたというその役目を、今は卒業試験として受け継いでいるらしい。
この花を育てるにあたって、大事な注意点がある。
それは、与えて良いのは水だけで、栄養剤や肥料は決して与えてはいけない、ということだ。
「栄養剤や肥料を与えられた誕生花から、妖精は生まれない。そこから生まれるのは、誰からも望まれない、忌まわしい存在……らしいですわ」
クルリと巻いた尻尾に小さな種を絡ませて、ローズマリーと契約したイチゴのショートケーキの妖精が、彼女の言葉を後押しするように「ピギ!」と鳴いた。
「課金できなかった理由は、そういうわけなんですねぇ」
ゲームでは知り得なかった情報に、ペリーウィンクルは「なるほど、それで……」と頷いた。
肥料はログインボーナス、栄養剤は課金アイテムだった。
どちらも、箱庭で使用することによって世話を忘れた花が元気になったり、花の生育を早めたりすることができる。
栄養剤は肥料の上位互換、といった感じだ。
だが、卒業間近に出される誕生花の育成だけはどうやっても課金できないようになっていて、早く育ててエンディングに漕ぎ着けたいという、数多の乙女たちを悩ませた。
もっとも、前世のペリーウィンクルは箱庭パートの方に夢中だったから、悩むこともなかったのだが。
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