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三章
79 目覚めのハーブ②
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心配そうに見つめてくる神秘的な目は、煮詰めた蜜のようにトロリとしている。
(ヴィアベルの目って、こんなだった? 前はもっと……新しいオモチャを見るようなウキウキした目だった気がするんだけど……?)
舐めてみたら甘いのかな、なんて馬鹿な考えが過ぎる。
鼻と鼻がくっつきそうなくらいの──実際にはもう少しあったが──距離で二人は見つめ合った。
漂う空気に、緊張感が滲む。
綱渡りをしているみたいだ。
ゆらゆら、ゆらゆら。
一度バランスを崩せば、もう元には戻らない。
(そんなの、嫌よ)
ペリーウィンクルは小さな鼻にシワを寄せた。
なんだかよくわからないが、湧き上がる感情の捌け口をヴィアベルへ求めたくなる。
(なんでこんなに距離近いの? これじゃあまるで……)
「んっ?」
(まるで……)
「んんんっ?」
(……唇も甘いのかしら)
「どうした?」
こつん、と額が当たる。
どうやらヴィアベルは、ペリーウィンクルに熱がないか知りたかったらしい。
あり得ないことを考えた、とペリーウィンクルは恥ずかしくなった。
「う……ううん、なんでもない。頑張ってブレンドするから、期待していて」
言いたいことを心の奥へ厳重にしまい込み、ペリーウィンクルは鍵をかけた。
だって、言えるわけがない。
(唇も甘いのかな、なんて。なんてこと考えているのよ、私! ばか、スケベ、破廉恥、私の痴女!)
親か兄のように思っているはずの相手に対して、唇の味を確かめてみたいと思うだなんて。
未経験で興味があるとはいえ、見境がなさすぎる。
女としてこれはありなのか、とペリーウィンクルは不安さえ覚えた。
(いや、キスしたいわけじゃないのよ⁈ そう、味! 味が気になるだけなの! それに、誰でも良いってわけでもないわ。ヴィアベルなら良いかなって。だってほら、甘そうに見えるじゃない?……ああ、そうじゃない、そうじゃないのよ、もぉぉ!)
もう、大混乱である。
そんな中、帰ろうとヴィアベルに手を引かれ、ペリーウィンクルは叫びそうになった。
恥ずかしさと気まずさでいたたまれない気持ち、とでも言おうか。
まるで処刑場へ向かう罪人のような重い足取りで、ペリーウィンクルは手を引かれるままに歩き続けるしかなかった。
(ヴィアベルの目って、こんなだった? 前はもっと……新しいオモチャを見るようなウキウキした目だった気がするんだけど……?)
舐めてみたら甘いのかな、なんて馬鹿な考えが過ぎる。
鼻と鼻がくっつきそうなくらいの──実際にはもう少しあったが──距離で二人は見つめ合った。
漂う空気に、緊張感が滲む。
綱渡りをしているみたいだ。
ゆらゆら、ゆらゆら。
一度バランスを崩せば、もう元には戻らない。
(そんなの、嫌よ)
ペリーウィンクルは小さな鼻にシワを寄せた。
なんだかよくわからないが、湧き上がる感情の捌け口をヴィアベルへ求めたくなる。
(なんでこんなに距離近いの? これじゃあまるで……)
「んっ?」
(まるで……)
「んんんっ?」
(……唇も甘いのかしら)
「どうした?」
こつん、と額が当たる。
どうやらヴィアベルは、ペリーウィンクルに熱がないか知りたかったらしい。
あり得ないことを考えた、とペリーウィンクルは恥ずかしくなった。
「う……ううん、なんでもない。頑張ってブレンドするから、期待していて」
言いたいことを心の奥へ厳重にしまい込み、ペリーウィンクルは鍵をかけた。
だって、言えるわけがない。
(唇も甘いのかな、なんて。なんてこと考えているのよ、私! ばか、スケベ、破廉恥、私の痴女!)
親か兄のように思っているはずの相手に対して、唇の味を確かめてみたいと思うだなんて。
未経験で興味があるとはいえ、見境がなさすぎる。
女としてこれはありなのか、とペリーウィンクルは不安さえ覚えた。
(いや、キスしたいわけじゃないのよ⁈ そう、味! 味が気になるだけなの! それに、誰でも良いってわけでもないわ。ヴィアベルなら良いかなって。だってほら、甘そうに見えるじゃない?……ああ、そうじゃない、そうじゃないのよ、もぉぉ!)
もう、大混乱である。
そんな中、帰ろうとヴィアベルに手を引かれ、ペリーウィンクルは叫びそうになった。
恥ずかしさと気まずさでいたたまれない気持ち、とでも言おうか。
まるで処刑場へ向かう罪人のような重い足取りで、ペリーウィンクルは手を引かれるままに歩き続けるしかなかった。
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