上 下
78 / 122
三章

78 目覚めのハーブ①

しおりを挟む
「大人だと言うわりに……」

 ペリーウィンクルは、ヴィアベルが思っている以上に難敵である。
 わりとわかりやすくアピールしたつもりだったが、この程度ではまだまだということか。
 とりあえず今夜はこれまでにしようと区切りをつけて、ヴィアベルは切り替えるために話題を媚薬の件へと戻した。

「媚薬の効果を打ち消すには、少なからず意識をこちらへ向ける必要がある」

「意識を向ける……? それって、今のトゥルシー様は意識がぼんやりしているってこと?」

「そうだな。例えるなら寝起きのぼんやりした頭のような状態、といったところだろうか」

「へぇ、なるほど。じゃあ、起き抜けに飲むハーブティーなんてどう? ミント、レモングラス、ローズマリー。そのあたりが効果的だけど」

 スッキリと清涼感のある味と香りが特徴のミントは、頭をシャキッとさせて集中力・やる気を高めてくれる。
 ミントに含まれるメントールという成分はストレスや憂鬱ゆううつな気分を緩和させたり、胃腸の不調にも効果的だ。

 レモンのようなさわやかな香りが特徴のレモングラスは、お茶にすると頭がスッキリとして明るく爽やかな気持ちになる。
 レモングラスに含まれるリナロールという成分は、眠気を改善してくれる効果も持っているのだ。

 スパイシーな香りが特徴のローズマリーは、ロズマリン酸を含んでいる。
 ロズマリン酸は、脳内物質ノルアドレナリンとドーパミンを増加させ、やる気・集中力を高めてくれる作用がある。

 ヴィアベルのかわいい生徒は、彼の教えをよく覚えていたらしい。
 ちょうど良い位置にあった頭を撫でくりまわしながら、ヴィアベルは「よく覚えているじゃないか」と褒めた。

 ミント、レモングラス、ローズマリー。本来、それらは朝起きて目覚めを良くするために飲用するものだが、今回はそれにヴィアベルが付加魔法をかけることで、媚薬の効果を無効化、または薄めようということらしい。

「それならおまえには、妖精王の茶会で出す茶を用意してもらいたい」

「ブレンドは私任せで良いの?」

「構わん。おまえなら、大丈夫だろう」

「ヴィアベルに言われちゃあ、頑張らないわけにはいかないね」

 一人前なのだとアピールするチャンスである。
 ペリーウィンクルはむん! と拳を握りながら、やる気いっぱいだ。

「期待している」

 ククッと笑いながら、ヴィアベルの手がペリーウィンクルの頰を撫でる。
 こんなことはもう何度もされていることなのに、今夜はやけに意識してしまう。

 どうしてだろうとペリーウィンクルが首をかしげていたら、ヴィアベルがひょいと身を屈めて顔色をうかがってきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

【本編完結】セカンド彼女になりがちアラサー、悪役令嬢に転生する

にしのムラサキ
恋愛
【本編完結】 「嘘でしょ私、本命じゃなかったの!?」 気が付けば、いつもセカンド彼女。 そんな恋愛運超低めアラサーの「私」、なんと目が覚めたら(あんまり記憶にない)学園モノ乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまっていたのでした。 ゲームでは不仲だったはずの攻略対象くんやモブ男子くんと仲良く過ごしつつ、破滅エンド回避を何となーく念頭に、のんびり過ごしてます。 鎌倉を中心に、神戸、横浜を舞台としています。物語の都合上、現実と違う点も多々あるとは存じますがご了承ください。 また、危険な行為等(キスマーク含む・ご指摘いただきました)含まれますが、あくまでフィクションですので、何卒ご了承ください。 甘めの作品を目指していますが、シリアス成分も多めになります。 R15指定は保険でしたが途中から保険じゃなくなってきた感が……。 なお、途中からマルチエンディングのために分岐が発生しております。分岐前の本編に注意点に関するお知らせがございますので、分岐前にお目通しください。 分岐後はそれぞれ「独立したお話」となっております。 分岐【鹿王院樹ルート】本編完結しました(2019.12.09)番外編完結しました 分岐【相良仁ルート】本編完結しました。(2020.01.16)番外編完結しました 分岐【鍋島真ルート】本編完結しました(2020.02.26)番外編完結しました 分岐【山ノ内瑛ルート】本編完結しました(2020.02.29)番外編完結しました 分岐【黒田健ルート】本編完結しました(2020.04.01) 「小説家になろう」の方で改稿版(?)投稿しています。 ご興味あれば。 https://ncode.syosetu.com/n8682fs/ 冒頭だけこちらと同じですが途中から展開が変わったのに伴い、新規のお話が増えています。

【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。

BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。 しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。 その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

魔王の花嫁 ~夫な魔王が魔界に帰りたいそうなので助力します~

月親
恋愛
沙羅は『勇者の花嫁』として異世界召喚された。花嫁とは名ばかりの生け贄として。 勇者に伝説の剣らしきものまで登場。まるでRPGのよう。 勇者が敵なら魔王は味方。ゲーマーな沙羅はそんな自棄っぱちな考えで魔王に助けを求めた。 まったく期待していなかったはずが、本当に助けに来た魔王。 さらにどうしたことか、今度は魔王ギルガディスが『沙羅は俺の嫁』発言。しかもこちらはちゃんと妻として。 初っ端からスキンシップ過多気味なギルガディスを筆頭に、魔王城の住人は何だか皆フレンドリー。住人どころか、魔王城そのものまで沙羅が過ごしやすいようにと心を砕いてくれる始末。 そんな彼らの計画を聞けば、魔界に帰るつもりだとか。勇者と魔王のドンパチすらやるつもりのない、どこまでも平和な魔王軍。沙羅もこの世界に来て発現したゲームシステムなスキルを使って、その計画を手伝うことに。 ギルガディスが言うには、魔界経由で沙羅は元の世界に帰れるらしい。けれど今はもう、真っ直ぐな愛情をくれる彼の傍にいたい。 ギルガディスの悲願を叶え、魔界で彼と幸せに。そんな未来を描く沙羅だったけれど―― ※この作品は『小説家になろう』様に掲載している同名作品を加筆修正したものです。

追放聖女は呪われました

さおり(緑楊彰浩)
恋愛
ディオース王国第一王子である、ニール・ディオースの婚約者は聖女と呼ばれていた。彼女の名前はルージュ・ルナーレ。転生者だった。 『美しき紫の令嬢』という乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった彼女に待ち受けている未来は魔法王立学園の卒業パーティーでの断罪イベント。そこでニールに婚約破棄を告げられ、ヒロインであるリラ・フォンセに嫌がらせをしていたという理由から処刑を告げられる。 しかし、そんな未来を避けるために断罪イベント前に聖女の力を使い国に結界を張った。 その効果もあり、処刑は避けられたのだが追放されてしまう。 処刑されなかったのだからと、好きに生きることを決めたルージュは国境の近くにある森の中のログハウスで暮らすことに。 だが、そこで見知らぬ男性ノワールと出会う。ときどきログハウスを使っていると言う彼を警戒していたが、数時間一緒に過ごして信用できると確信する。 そんなとき、事件が起こった。 突然ルージュはうさぎになってしまった。うさぎになった原因が分からないルージュだったが、一つだけ思い当たることがあった。それは、卒業パーティーから帰宅したときに会った黒いローブの人物。 その人物に呪いをかけられたのかもしれないと言うノワールは、うさぎのルージュを連れて誰かも分からないその人を探すことにした。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

処理中です...