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二章
51 セントジョンズワートの軟膏②
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もしや、知らないうちに何かを対価にしていたのだろうか。
そう思っていろいろ考えてみても、思い当たる節はない。
あえて挙げるとするならば、ペリーウィンクルが中央の国へ来てから、彼の態度にささやかな変化があったことくらいだろうか。
(最近のヴィアベルは、やけに大人っぽいというか……身内とは思えない空気を出してくるのよね)
彼のテリトリーである中央の国だから、素を出しているだけなのかも。
最初はそう思っていたのだが、違うような気がしてならない。
(まさか、ヴィアベルのことを怖いと思うなんて……)
まるでペリーウィンクルを試すかのように折に触れて出してくる、思わずごまかし笑いをしてしまいたくなるような、甘ったるい空気。
その空気に触れると、ペリーウィンクルの心臓は走ったあとのようにはやく脈打って、その場にヴィアベルと自分しかいないような錯覚を感じて、なんだか知らないけれど泣きたくなる。
この空気の名前を、ペリーウィンクルは知らない。
知らないから怖いのだと、彼女は結論づける。
だから、名前をつけようと思った。
『怖いのは知らないからだ。名前をつけてしまえば、とりあえず知っているものになる』
この方法を教えてくれたのは誰だったか。
もう思い出せないけれど、両親を喪い、何事にも怯えるようになってしまったペリーウィンクルに、誰かが教えてくれた。
(どういう名前が良いかしら……?)
考えているうちに、目的地である鍛錬場へ着いてしまったらしい。
この鍛錬場は今、サントリナとニゲラが借りている時間だ。
終了時間まで残りわずか。着替えの時間などを鑑みたら、ちょうど良い時間のはず。
ペリーウィンクルは気持ちを切り替えるように深呼吸してから、物陰に隠れた。
二人はちょうど、鍛錬を終えたところのようだ。
それぞれベンチへ腰掛けて、汗を拭っている。
サントリナを見れば、相変わらず勇気が出せないらしく、カバンを抱えて迷子のような顔でニゲラを見つめていた。
(ああ、もう)
焦れったくて仕方がない。
見た目は王子様なのに、中身はとんでもなく内気な女性らしい。
(いや。好きだからこそ、かな)
好きな人には嫌われたくないものだ。
ましてや、既に失恋しているなら尚のこと。
そう思っていろいろ考えてみても、思い当たる節はない。
あえて挙げるとするならば、ペリーウィンクルが中央の国へ来てから、彼の態度にささやかな変化があったことくらいだろうか。
(最近のヴィアベルは、やけに大人っぽいというか……身内とは思えない空気を出してくるのよね)
彼のテリトリーである中央の国だから、素を出しているだけなのかも。
最初はそう思っていたのだが、違うような気がしてならない。
(まさか、ヴィアベルのことを怖いと思うなんて……)
まるでペリーウィンクルを試すかのように折に触れて出してくる、思わずごまかし笑いをしてしまいたくなるような、甘ったるい空気。
その空気に触れると、ペリーウィンクルの心臓は走ったあとのようにはやく脈打って、その場にヴィアベルと自分しかいないような錯覚を感じて、なんだか知らないけれど泣きたくなる。
この空気の名前を、ペリーウィンクルは知らない。
知らないから怖いのだと、彼女は結論づける。
だから、名前をつけようと思った。
『怖いのは知らないからだ。名前をつけてしまえば、とりあえず知っているものになる』
この方法を教えてくれたのは誰だったか。
もう思い出せないけれど、両親を喪い、何事にも怯えるようになってしまったペリーウィンクルに、誰かが教えてくれた。
(どういう名前が良いかしら……?)
考えているうちに、目的地である鍛錬場へ着いてしまったらしい。
この鍛錬場は今、サントリナとニゲラが借りている時間だ。
終了時間まで残りわずか。着替えの時間などを鑑みたら、ちょうど良い時間のはず。
ペリーウィンクルは気持ちを切り替えるように深呼吸してから、物陰に隠れた。
二人はちょうど、鍛錬を終えたところのようだ。
それぞれベンチへ腰掛けて、汗を拭っている。
サントリナを見れば、相変わらず勇気が出せないらしく、カバンを抱えて迷子のような顔でニゲラを見つめていた。
(ああ、もう)
焦れったくて仕方がない。
見た目は王子様なのに、中身はとんでもなく内気な女性らしい。
(いや。好きだからこそ、かな)
好きな人には嫌われたくないものだ。
ましてや、既に失恋しているなら尚のこと。
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