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一章

20 悪役令嬢の悪だくみ①

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「──というわけで、わたくしたちはお友達になりましたの!」

 なにが、“というわけ”だ。
 ペリーウィンクルはその言葉を飲み込んだ。
 かわいさ余って憎さ百倍とはこのことを言うのではないだろうか。

(まぁ、そこまで憎く思っているわけじゃないけど)

 ペリーウィンクルの目の前で、ローズマリーがセリと頰をくっつけて無邪気に「ねぇ~」と笑っている。
 ローズマリーに引っ付かれて戸惑いつつも、同じように「ね、ね~?」と返すセリは、奥ゆかしくてかわいい。
 例えるなら、ビスクドールと日本人形のコラボだろうか。

(綺麗が過ぎる! もはや暴力!)

 かわいいものが大好きなペリーウィンクルは、うっかりほだされそうになった。
 しかし、しかし、だ。

(なにが、“ね~”だ。かわいこぶったって、今は……だ、騙されませんからね!)

 どう考えたって、いや、考えなくたって、嫌な予感しかしない。
 嫌な予感というものは、得てして当たりやすいものだ。
 ゲンナリとした気持ちを隠すことなく向けてくるペリーウィンクルに、ローズマリーは構うことなく言ってのける。

「さぁペリー、出番よ。セリ様を泣かせた不届き者を、こらしめてやりなさい!」

 ペリーウィンクルの脳裏に、二人のイケメン護衛を連れた高貴な身分の老人の姿が蘇る。
 決め台詞は「──さん、──さん、こらしめてやりなさい」だったか。
 どうせだったらイケメン護衛じゃなくてうっかり何ちゃらの役が良かったと、ペリーウィンクルは思った。

「出番って……あのねぇ、お嬢様。私はお嬢様の婚約破棄には協力しますけど、セリ様のことまでやってやる義理なんてないんですよ? そこのところ、わかってます?」

 ローズマリーのことは、前世社畜仲間で放っておけなかっただけだ。
 セリには悪いが、協力するメリットを感じられない。
 ローズマリーだけでも手詰まりな気がしているのに、さらになんて──、

(無理だよ)

「今、メリットがないって思っているでしょう?」

「ええ、そうですけど」

「メリット、ありますのよ? セリ様は大商人の娘。そんな彼女がお友達だったら、ソレル様に婚約破棄され、国外追放された時に協力してもらえるじゃないの」

「はぁ……」

 確かに、セリは大商人の娘だ。
 国を跨いで商いをする家だから、協力を得られたら心強い。

 だが、ルジャは男尊女卑の国。
 セリがローズマリーを助けてと願ったところで、確実に助けてもらえる保証はないだろう。

(お嬢様が言うメリットは、確かなものではない)

 そんなことは大したメリットじゃない。
 そう言いたげな顔をしているペリーウィンクルに、ローズマリーは「それにね」と言った。
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